見出し画像

原田ひ香(1970- )『図書館のお夜食』ポプラ社 2023年6月刊 320ページ

原田ひ香(1970- )
『図書館のお夜食』
ポプラ社 2023年6月刊
320ページ
https://www.amazon.co.jp/dp/4591178242

「「三千円の使いかた」「ランチ酒」の原田ひ香が描く、
本×ご飯×仕事を味わう、心に染みる長編小説。
東北の書店に勤めるもののうまく行かず、書店の仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、開館時間が夕方7時~12時までで、そして亡くなった作家の蔵書が集められた、いわば本の博物館のような図書館だった。乙葉は「夜の図書館」で予想外の事件に遭遇しながら、「働くこと」について考えていく。
すべてをさらけださなくてもいい。
ちょうどよい距離感で、
美味しいご飯を食べながら、
語り合いたい夜がある。」

https://www.webasta.jp/series/yorunotoshokan/
で、第四話まで読めます。

糸島市図書館蔵書(予約16人 複本2冊)
福岡市総合図書館予約117人(複本6冊)

WEB asta* 2022年3月~7月連載五篇
「夜の図書館 しろばんばのカレー」
「夜の図書館 「ままや」の人参ご飯」
「夜の図書館 赤毛のアンのパンとバタときゅうり」
「夜の図書館 田辺聖子の鰯のたいたんとおからのたいたん」
「夜の図書館 森瑤子の缶詰料理」

https://www.webasta.jp/yorunotosyokan1/



「本が読めない、と気がついたのは六十歳になった頃だった。
今から十年余り前だ。」
p.136「第三話 赤毛のアンのパンとバタときゅうり」

「正子がいたのは東京都内の公立図書館だった。
就職当時はまだコンピューターは導入されておらず、
紙のカードで本は整理され、分類されていた。」
p.139

「1980年代半ばからはポツポツと
コンピューター・システムが入り、
デジタルで情報を処理し始めたが、
正子が働き盛りの頃はその過渡期で、
図書カードとパソコンを両方操って
情報の海を泳いだ。

入館当時、先輩には
「一人五千冊は憶えられる、
ここの人間は一万冊憶えろ」
と言われた。
利用者に
「なんのなにがしの本はどこか?」
と聞かれたら、一瞬で
「あそこにあります」
と応えられるようにしろ、
ということだった。」
p.140

「「正子さん、スカイプ使えるんですか」
「私は前の図書館で、
インターネットに関わったの。
普通の人より、パソコンに触ったのは
わりに早いほうよ」」
p.147

1955年1月生まれの、
ほぼ同年齢な68歳の私は、
1978年春、
聖心女子大学図書館に就職してから、
1987年、
筑紫女学園大学附属図書館へ転職、
2004年11月、うつ病発症まで、
図書館員として働いてきた日々を、
色々と思い出してしまいました。

今でも、「なんのなにがしの本」が、
渋谷と大宰府の大学図書館書庫の
「あそこに」あったなぁ、と憶えています。
現職当時、
何千冊の配架位置を記憶していたのかは、
数えたこともなく、「憶え」ていません。

利用者(学生さんや教員)に
資料や情報を提供する大学図書館の仕事、
選書発注受入分類
目録作成
カウンターでの対人サービス、
が好きで生きがいを感じていましたが、
1990年代の半ばに、
インターネットの導入で
部局ネットワーク管理という
従来はなかった業務が発生し、
また年齢のせいで中間管理職にならざるを得ず、
職場に毎日13時間以上常駐するのが
十年近く続いているうちに、
2004年11月
うつ病発症・休職・復職・再発・休職・復職・再発・退職…
でした。

私がインターネットに初めて触れたのは、
たぶん1993年で、
私立文系女子大学図書館員として
部局ネットワーク管理者だったのは、
1998?~2002年でした。

安価なパソコンに
PC-UNIX(FreeBSD だったなぁ)を
インストールして、
ネームサーバ(DNS)や
メールサーバやウェブサーバを
構築・運用していたあの頃は、
職場に連日13時間以上居たけれど、
今思えば幸せな毎日でした。
その後、中間管理職にもなった私は、
数年後、うつ病を発症してしまいました。

閲覧サービスとネットワーク管理の両方に
専念できていれば、
私の能力不足によってその業務で
どれだけのことができたかは別として、
うつ病を発症することはなかったかもしれません。

年齢のせいで中間管理職(課長補佐)の職務を
果たさなければならなかったのが、
私にとっては致命的でした。
酒飲みなので、毎日の不快さや眠れないことは、
毎晩の飲酒で解決して、翌朝は出勤する、
を何年も続けているうちに、
朝、布団から立ち上がれなくなりました。
今でも大学図書館で働いている夢をよく見ます。
悪夢で目を覚ましてしまうことも。

大学図書館で働いていた頃、
一番好きな作業の一つが、
返却された本の書架への配架でした。
大学図書館には何万冊もの本があるのに、
使われている本、
利用者の手に取ってもらっている本は、
蔵書のごく僅かです。
図書館の本を利用してもらうために働いていて
給料をもらっている自分が、
利用者に役立っていると実感できるのが、
配架と貸出・利用相談カウンターでの業務でした。

配架作業は、本棚の前で、
しゃがみ込んだり立ち上がったりの繰り返しです。
今でもスクワットをすると、
昔の配架作業を思い出します。

返却された本の書架への配架と同様に、
本棚の本を背表紙の請求記号ラベルの順番に並べなおす
書架整理も大好きでした。

本の並び方が滅茶苦茶になってしまったのを
整列させるのは手間のかかる作業ですが、
こんなにこの本棚の本を使ってもらったんだなぁ、
と目に見えると、実際には言葉を交わしていないけれど、
図書館の利用者がたくさんいるんだ、
と確認できて嬉しかったです。
配架と書架整理と利用カウンタだけしていて
中間管理職にならなければ… とも思っています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/原田ひ香
http://www.hatirobei.com/ブックガイド/作家から/原田ひ香/雑誌掲載記事


読書メーター
原田ひ香の本棚(登録冊数13冊 刊行年月順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11249567

食べ物の本棚(登録冊数792冊 著者名順)
エッセイ、小説、マンガ、絵本、レシピなど
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091194

https://note.com/fe1955/n/nb68f7886f4d2
原田ひ香(1970- )
『ランチ酒』祥伝社 2017.11
『ランチ酒 おかわり日和』祥伝社 2019.7
『ランチ酒 今日もまんぷく』祥伝社 2021.6

https://note.com/fe1955/n/n06ec83a13605
原田ひ香(1970- )
「定食屋「雑」」
『小説推理』2021年1月号
『ほろよい読書(双葉文庫)』
双葉社 2021年8月刊

https://note.com/fe1955/n/n1998cbebf2ac
丸谷才一(1925.8.27-2012.10.13)
『挨拶はむづかしい』
朝日新聞社 1985.9
朝日文庫 1988.6
原田ひ香(1970- )
『古本食堂』
角川春樹事務所 2022.3

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?