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あの頃の話

留学時代の同級生ジェイに会いに、スウェーデンにいこうとマーサに言われた。どこまで本気かわからない。ジェイは北欧の大家族にふさわしく6人姉妹+末っ子の弟という稀有なタイプで、185cmの長身と金髪碧眼甘いマスクのせいで人気者だった。リーダー格で見た目も派手なかれは、70人もいない多国籍の専門学校のなかでもよけい目立ってた。アメリカのコネチカット州、山奥にあった専門学校は車をだせば鹿をはねるような世界で、あそこで暮らしたカオスな9ヶ月間は何にも代えがたい宝物だ。


2003/4/6 セメスターのバンケットイベントにて。
後列左から三番目がジェイ、最前中央が私、右端がMr.アントッシュ教授


同級生、といういいかたは語弊を生む。年齢が違っても、1セメスターを一緒に乗り越えたらもう仲間だ。クラスメイトの多くは年上で、大学卒業生か、何年か働いてから国を飛び出してきたかのどちらかで20代後半が多かった。私のように19で渡米して短大からトランスファー組の方がまれ。ジェイは20代前半でモデルのお姉さまと結婚、ひとり息子をもうけてすぐ離婚。理由は曰くかれの女遊び。アメリカで出会った時は27,8だった気がする。酒に強くて美人に弱くて、友人マーサとつるんでバカばっかやるくせに、誰よりも気をつかう、そんで傷つきやすいひとだなーというのが第一印象。卒業単位に必要なインターンシップはパーティ三昧なマイアミに行くかと思いきや、私とジョアンナを追っかけて、やってきたのがシカゴのホテル。同僚だったのはたった6ヶ月。2年以上シカゴに居座った私に比べてかれは単位に必要なインターン期間を終えるとさっさと国へ帰ってしまった。それともフロリダに足をのばしたのかな?専門学校の仲間の7割はフロリダで仕事してたから。

悪友だったマーサやケイ、セルゲイはキーウエストのホテルで日々面白おかしく暮らしており、都会でくそまじめに働いてた自分がバカみたいだなって思ったこともある。キーウエストはヘミングウェイのゆかりの地なのに、結局訪れることがないまま帰国してしまった。先日マーサと飲んでいたら、ジェイとバカバカしいラインをやりとりしてると聞いて、誘われたら断らないかれの精神は誰よりもジェントルマンだったなと思いだした。湖水でバーベキューしたときに無理やり撮らされた、ジェイの半ケツ写真。右も左も英語もわからないマーサと出会って3日で心の友になっていた。国に帰るとき、仕事中の私に挨拶にきて「出会えてよかった」と本気で涙ぐんでいた。そんなやつに会いに行く。もう40歳くらいだろうか。楽しみでしかたない。

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