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言ってるそばから不条理な事件

8月7日
初投稿日から寸時、小田急線の電車内で刃物を振り回して切りつける、無差別の殺人未遂事件が発生。
犯人は30代の職業不定で一人暮らし。
犯行理由は「俺がクソみたいな人生なのに、幸せそうな人を見ると悔しかった。いわゆる勝ち組と言われる女性を殺してやりたかった」と供述している。
この事件に依って、重軽傷者が数名出ている模様。
確か数年前にも電車内で切りつけ事件が起きていたが、あの時は犯人を制して乗客を守ろうとした男性が致命傷を負って死亡している。この時の犯人の供述内容も「どうでもよくなった。誰でもいいと思った」と言っている。
何れも事前に凶器など荷物を整え、人の多い時間帯と快速を狙って犯行に及んでいる。
意外にも犯人は冷静に思考を働かせて行動しているのだ。ではなぜ、凶悪犯罪に手を染めてしまうのか。
上記の2つの事件には類似点がある。
1.密室
2.単独
3.刺し殺そうとしている

という点である。
まず密室での犯行、加害する相手を逃さないために想定していることが分かる。
次に単独での犯行、一人で悩み続けた結果、フラストレーションが爆発する。その辛酸を解消するべく行動を移していく。
そして刺し殺そうとしている、これは対象に向けた強い私怨を感じ取ることができる。
小田原線事件の犯人は若い女性の背中を一突きしたそうだが、想像するに座席に居た無抵抗の対象者を背後から刺した。もしくは逃げ惑って転倒したところを馬乗りの形で刺したのだろう。犯人の発言から女性に対する強い執着を感じられる。おそらく過去に女性関係の縺れがあったと予想。「俺がクソみたいな人生」と自虐し、「幸せそうな人を見ると悔しかった」と理想の逆説に取れる。即ち、挫折経験を吐露して絶望していることが分かる。
とは言え、被害者からしたら支離滅裂で受け入れ難いものである。
女性関係の拗れ・理想と現実の乖離・欲望のエスカレートに伴い、世の女性が一方的に殺意の対象になるのだから不条理である。

この殺意は何処から湧き立つのか。
犯罪心理学では度々モラトリアムという言葉が出てくる。元は経済用語だが、心理学にも応用されている。人は青年期に自我の同一性(アイデンティティ)を確立していき社会に進出していく。この段階で躓くとモラトリアムの状態に陥り、自己への疑義が生まれ、悩み考えることとなる。分かりやすく言えばフリーターが「やりたいことを見つけているとこ」発言に当たる。
社会心理学専門界隈では第3次成長期(社会人になってからの心の成長)と呼ばれる概念が在るらしいが、犯人の男はこの成長期でモラトリアムに嵌り、ネガティビティバイアスに苛まれて事件を起こしたか。または、依存型か自己愛性型パーソナリティ障害を抱えていて、女性関係の失敗に依って同一性拡散(アイデンティティ崩壊)が誘発されたのかも知れない。
常識で考えれば、事件前に犯行準備を熟しているのに、事件後の想像を怠るとは考え難い。精神に疾患があったとしか思えない。孤独に懊悩して招いた悲劇だろう。誰かが彼に救済してあげられなかったのだろうか。一人を無視して複数人が犠牲になるよりも、一人を救って複数人が普通に生きていけるのであれば、それに越したことは無いだろう。被害者の方が回復されることを切に願います。


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