連載:お寺の女性の今、そしてこれから [4] -スペシャル座談会
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連載:お寺の女性の今、そしてこれから [4] -スペシャル座談会

お寺で生活する女性のウェルビーイングを大切にするために、さまざまなお立場にあるお寺の女性のお声を共有する連載です。第4回目はインターネット上で、男性も交えたオンラインのディスカッションを開催しました。全国各地よりさまざまな宗派の皆さんが男女を問わず30名ほどがインターネット上に集まり、ジェンダーについてご一緒に考える機会となりました。

お話をうかがうホスト役は、一般社団法人未来の住職塾の松﨑香織がつとめます。(登場者の名前は仮称です。)

TOPイラスト;早坂宏香さん(曹洞宗寺院寺族)

◉ テーマ① 「わたし」について

― 皆さんは、日頃のセルフケアについてどう思われますか?


お寺の人は、とかく周りの皆さんのケアを優先して自分のことはおろそかになりがちなのではないかと思うのですが、自分のこともケアしてあげるのって、とても大切なことだと思っています。

紗香
お寺に住んでいると、「こう振る舞わなければならない」というプレッシャーを感じることがあります。特に女性は目立ってはいけないという空気があるから、私はいつも自分を押さえて暮らしているような気がします。セルフケアのことを考えたことのない女性もいらっしゃるのではないでしょうか。

麗華
そういう「あるべき姿」に縛られて苦しむ自分に気づくこと自体、なかなかできずにいたのですが、他の宗派やいろんな地域の人と話す機会を思い切ってもってみたら、「女性でも、そんなことをしている人がいるんだ。やってもいいんだ」と自分をゆるめてあげるきっかけになりました。
 お寺の留守番をしていて、自由な外出が難しい女性もいらっしゃると思いますが、ときどき外へ出て自分の状態を俯瞰して見ることは、自分が何に縛られて苦しんでいるのかを知る上でも大事なことだと思います。

― 長い年月で培われた「お寺の女性のあるべき姿像」は、多かれ少なかれ、宗派を問わずあるようですね。

紀子
前に進もうとするときには、親戚からも「女が前に出るものじゃないよ」と注意されたりします。現状をどうにかしたいと思って特にがんばろうとしているときに叱られるのはつらいけど、それでも開かなければならない扉は、お寺の女性に限らず、ありますよね。
 変化を起こそうというときには、そういうことも当然あるよな、と思うようにしています。

茉莉花
そういうとき、自分を労ってあげるようなセルフケアを意識することは、なおさら大切ですね。私は檀信徒さんに対するグリーフケアだけでなく、自分自身のケアについてもお寺の人同士で学び合う場をもつようにしています。

◉ テーマ② 自坊の中の女性

 ― お寺の中での役割分担について、皆さん、それぞれどう考えていますか?

明子
自分が居心地よく日々を過ごすために、お寺での自分の役割を明確化することが私にとってはとても重要でした。自分には何ができるのか、何をパートナーに任せると良いのか、自分が納得できるまで話し合えることは、すごく大事です。めに、お寺での自分の役割を明確化することが私にとってはとても重要でした。自分には何ができるのか、何をパートナーに任せると良いのか、自分が納得できるまで話し合えることは、すごく大事です。
 「あるべき女性の役割像」に従うのではなく、自分の意見もきちんと反映される形で「うちのお寺の役割分担」を決めていく、というか。そうでないと自分が何のためにお寺にいるのか分からなくなる時がありますし「あるべき姿」を押し付けられると、お寺での暮らしが苦しくなってしまいますから。

亜寿沙
わかります。多くの寺族女性には、いろんなことが周囲の人たちによって勝手に決められて、どんどん進んでしまって翻弄されてしまう、というような悩みが少なからずあるのではないかと思います。私は、それが本当にどうしようもなくきつくて、子育てに影響してしまったりしながらもなんとか乗り越えてきたのですが、そういうときに、もっと自分の思いを周りに伝えることができていたら、もう少し楽な気持ちでやってこられたのかな、と思いますね。

英子
お寺は、地域性も周りとの関係性も家庭内の事情も、あまりに多様で、モデリングが難しいですよね。他のお寺の内情を知る機会もないですし。それぞれに良い形を模索するしかない。そこで私が辿り着いたのは、考えていることをとにかく書き出す、ということ。繰り返し書いていると、考えが整理されたり、いろんなことが見えてきたりしてオススメですよ。

妙子
うちは割と役割分担について嫁の私も先代住職夫婦に対して意見を言いやすい環境です。ただ、実家方のお寺は、お嫁さんは言われたことをやらなければならなかったり、時間も自由に使えなかったりと、苦労が多いです。寺内で自由に意見を言いづらい立場にある人が一人の努力で状況を変えるのは難しいから、力の強い人が「思っていることを言ってもいいんだよ」と促したり、発言を補佐してあげたりする必要があるのではないかな。役割分担の範疇を超えた力関係も、そんなふうに少しずつフラットになると良いですよね。

― 檀信徒さんの婦人会の話もよく聞かれますが、その辺りはいかがでしょう。

玲子
うちのお寺の婦人会は、トップに会長を頂くようなピラミッド型組織なのですが、会長になりたいという方がいなくて......。最近、組織の作り方を変える必要があるのでは、と思い始めています。世の中には「フラットなコミュニティ」というあり方が広まってきているし、必ずしもトップに一人を立てなくてはいけないこともないのかな、って。誰もが居心地よくいられるような集いにしたい。△の組織から○のコミュニティへ!みたいな。 

亜由美
その表現、いいですね。実は、うちのお寺では思い切ってピラミッド型の組織をやめたんです。会長の方の負担が大きかったり、人間関係がギクシャクしたりして、誰も喜ばない会になってしまったので。今は役員のいない、縛りもない、集まりやすい自然な会になりましたよ。法事のお斎(とき)も、料理の好きな方だけが手伝ってくださる形にしています。

光雄
婦人会が「女性たちに作業をお願いする会」になってしまっている場合も、認識を変える必要がありそうですね。僕のお寺では、そんな事情もあって婦人会をやめてしまったのですが、婦人会をよりどころにしている方もあるでしょうから、「うちのお寺には何のためにあえて性別で分けられた会があるのか。」を立ち止まって見直すタイミングなのかもしれないと思いました。

◉ テーマ③ 宗派組織の中の女性

― 宗派内の組織に関わることも多々あるかと思いますが、どのような印象をお持ちでしょうか。

寛子
前に一度、地元の宗派組織内でリーダーに推されたことがありました。ところが、ほかの組織から「寺族の女性が代表職についていいものか」と懸念する声があがり、そうした意見を慮って話は流れてしまいました。なぜ女性がリーダーになってはいけなかったのか、はっきりとした理由はわかりません。

紀香
そういったことは、私の宗派にもしばしばある印象です。宗派の機関誌からお寺の活動紹介の依頼があって、私が原稿を書いて住職との連名で出したところ、誌面に私の名前は掲載されませんでした。住職がお寺の代表なのは確かなのですが、寺族女性の名前も一緒に載ることで「こんなふうに発信している女性がいるなら、私もやってみようかな。」と思う方もいるのではないかとの考えもあったので、残念に感じました。

恵照
私も、自分が立ち上げて開催した企画の取材を宗派から受けたことがありますが、上役にあたる男性僧侶の名前で紹介されました。私も一生懸命お寺のことをやっていますから、等しく扱ってほしかったとの思いがあります。

― 女性が目立つのはかわいそう、との気遣いもあるのかもしれませんが、今後もそれが正しい気遣いであり続けるのかは、考えていく必要がありそうですね。

沙織
宗派の会合などに参加すると、女性は私一人ということもよくあるんですが、そこで女性を差別するような発言が出ることもあります。そういうとき、私一人が意見を言うのには勇気がいるし、耳を傾けてもらえないかもしれない、という不安もあって、黙っています。でも本当は、気づいた男性に声を上げてもらいたい。

正典
女性の方々がそういう思いをしているのを僕は知りませんでした。これからは気づけるようになって、声をあげたいと思います。

純子
一つ一つのエピソードは小さくても、あちらこちらで積み重なって圧力が生まれてきたのでしょうね。
 社会が多様性を大事にし始めている中で、お寺も表向きには同様のことを言いますが、根本では女性の自由な言動を認めないような、なんとも言えない雰囲気を感じます。
 いわゆる「お寺の奥さん像」に自分を当てはめて生きていれば誰からも非難されずにすみますが、それを苦しく感じたときに、自分らしい生き方を選べたらいいなと思います。人を性別で分けることなく、一個人、一仏教者として互いに接していけたら。

― そうしたことは、お寺だけに限りませんが、とりわけ仏教界は意思決定層がほぼ男性で構成されていることもあり、現場の女性はいわばマイノリティ化してしまっているのですね。やはり、男性僧侶のみなさんに意識改革をしてもらう必要がありそうですね。

美海
男性と同じように女性もお寺の活動に日々携わり、共にお寺で生活しています。決定権をもつ男性に率先していただきながら、一緒に誰もが居心地よく暮らせるフラットな環境をつくっていけたら良いですね。

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お寺のジェンダー課題という大切なテーマについて、全国さまざまな宗派の皆さまと、思いの共有を性別問わずご一緒に体験することができました。こうしたシェアリングの機会などをとおして、より良い方向へ進むことができたら素晴らしいですね。

この連載記事は、大正大学地域構想研究所BSR(Buddhist Social Responsibility)推進センターが毎月発行する『地域寺院50号、51号』に掲載されました。
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