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連載:お寺の女性の今、そしてこれから [15] 白川あかねさん

未来の住職塾

こんにちは。未来の住職塾の松﨑香織です。

この連載では、お寺で生活する女性のウェルビーイングを大切にするために、さまざまなお立場にある、お寺に暮らす女性のお声をお届けしています。第15回目のゲストは、高野山真言宗・栄福寺(愛媛県今治市)の僧侶・寺族 白川あかねさんです。

取材・文 ● 松﨑香織 

ゲストプロフィール:
白川あかね(Akane Shirakawa)
1976年生まれ。一般家庭に育つも、中学生の時に僧侶になりたいと思い、龍谷大学卒業後に一般企業勤務を経て、高野山にて修行。高野山大学大学院密教学専攻修士課程修了。僧名は法慧(ほうえ)。2011年 四国八十八ヶ所霊場第57番栄福寺に嫁ぐ

僧侶を志した中学生の頃

――在家から高野山真言宗の僧侶になられ、四国八十八ヶ所霊場・栄福寺のご住職との結婚を機にお寺へ入られたあかねさんですが、僧侶になろうと思われたのはどのようなきっかけですか?

あかねさん 中学2年生の時、ドキュメンタリー番組で比叡山の千日回峰行を特集していたのですが、行者さんを見た瞬間に「これを目指したい!」と思ったのが始まりでした。うちは仏壇のあるような家ではなかったのですが、僧侶を拝む信者さんの姿を見て「お坊さんがいることで救われる人がいるんだ。自分が拝むことで仏様との仲介役になって誰かを助けられるのかもしれない」と自分なりの解釈をしたのだと思います。

――その頃から、そういう存在になりたいと願われていたのですね。

あかねさん 中学校を卒業したら比叡山へ行きたいと思って延暦寺に手紙を書いたことがありました。お返事に宗門学校のパンフレットを送っていただいたのですが、家族や先生は「家がお寺でもないのに急にどうして?」と、高校生で出家することは叶わず。でも、大学で仏教学科へと進むことができ、卒業後は一般企業に就職して、休みの日に霊場巡りやお寺参りをする生活を送っていました。

高野山とのご縁がつながり、出家へ

あかねさん 比叡山とのご縁はなかなかできなかったのですが、ある時、親戚の葬儀に来られた高野山真言宗のお坊さんが相談にのってくださり、思いがけず高野山への道が開き始めます。就職して5年が経った頃に高野山大学大学院へ入学し、在学中に修行を経て僧侶になることができました。大学院で教学を学んだり、お友達のお坊さんと対話したりする中で、仏様に守られていることを感じるようになって、何かあっても「仏様がいるから大丈夫やわ」と、深く悩んだり不安になることがなくなったように思います。
 大学院修了後は高野山大学の広報に就職して3年ほど従事しました。

結婚を機に霊場寺院へ入る

――夫の白川密成さんとは、その頃に出会われたのですね。

あかねさん はい、密教の勉強会で知り合いました。当時、インターネットで彼の連載エッセイを読んでいて、有名人に遭遇した気分で話しかけたのが始まりです。在学中に高野山のお寺をお手伝いしていたこともあって、結婚してお寺に入る不安はあまりなかったです。ただ、年中無休でお遍路さんをお迎えする環境の大変さは感じています。一方、霊場ということで国内外からいろんな方がお参りに来られて、田舎にポツンとありながら広い世界と繋がれる面白さがありますね。

――栄福寺では、副住職的なお立場でいらっしゃるのですか?

あかねさん 今は、僧侶の資格を持ったお寺の奥さん、という立ち位置です。住職からは、正式に副住職になってもいいんじゃない?と言ってもらっているものの、「副」がつくとはいえ住職に並ぶ仕事が今の自分にできるか、迷いがあります。

 栄福寺に来て10年ですが、まだまだ存在感を出せていないということも感じます。何年か前に住職が高野山へ修行に行っている数ヶ月のあいだ私が法事をつとめたりした時期があって、「住職の奥さんはお坊さんなんやね」なんて認識していただく機会が多少ありましたが、やはり檀家さんとのコミュニケーションにおいて義母には全然かないません(笑)

子育てと寺務のバランス

――日頃の、お寺でのお仕事についてお聞かせください。

あかねさん 日中は納経所でお遍路さんの応対をして、その他に法事の準備や取引先業者さんとのやり取り、会計・総務等を担っています。うちは家族で切り盛りしているので、事務を手伝ってもらう人手がなくて、チェック機能が働きづらいんですよね。かといって雇用するほどの仕事量ではないし……というのが、悩みどころです。先日も、労働保険料を計算間違いしていると役所から電話があり、単純ミスをしてしまう自分に残念な気持ちになりました(笑) 現在子育て中で、急に子供のことで予定を変更する可能性が常にあるため、何事も前倒しで動くようにしています。

 掃除が好きで、けっこう力を入れて頑張っていますよ。お寺がきれいだね、と言われるのも嬉しくて。

 最近、お遍路の方々から「コロナ禍で四国へ行けないからお守りを郵送してほしい」というお声をいただくようになり、オンライン受付の準備をしています。SDGsへの取り組みとして環境に配慮した自然素材のお守りなども作りたいと思っています。

――あかねさんは、お寺の経理から社会保険や退職金など労務のことまで、しっかり整備なさっている印象です。

あかねさん 企業で総務や人事の経験があったので、それが今になって活きている感じです。整備に本腰を入れ始めたのは、自分たちの老後に何の保証もないことに気づいたのがきっかけでした。病気などで住職を続けられなくなった場合、どこかから退職金が出るわけではないし、お寺に住み続けられなくなる可能性もある……。何かあった時の準備もしておかなくては、と思いました。同時に、決算や社会保険などの義務も他の法人と同じように果たしていきたいと考えています。

これからの歩み

――ご自身のこの先のビジョンをどのように描いていらっしゃいますか?

あかねさん 仏様を拝む暮らしを思い描いて僧侶になり、なんなら自分でお寺を作りたいと思っていたくらいだったから、お寺で家事や育児が中心の生活を送るというのは意外な縁でした。子育てが一段落したら、お坊さんとして拝むということをしっかりやりたいと思っています。その頃には「副住職になる」と決心できる自分になっているかもしれませんね。

――さまざまなお役目の一つ一つに丁寧に取り組まれているご様子が窺えました。貴重なお話をありがとうございました。

この連載記事は、大正大学地域構想研究所BSR(Buddhist Social Responsibility)推進センターが毎月発行する『地域寺院64号』に掲載されました。
地域寺院は、これからの地域社会に必要とされる寺院の在り方を探る情報を発信する月刊誌です。
・定期購読の詳細はこちら

インタビュアー プロフィール

松﨑香織:一般社団法人未来の住職塾 理事。米国Fish Family財団 JWLI (Japanese Women’s Leadership Initiative)フェロー。役員秘書として銀行の経営企画に10年間携わったのち、ロンドンの非営利組織にてマーケティングに従事。2014年より未来の住職塾ならびに塾生コミュニティ(現在約650名)の運営に携わる。全日本仏教会広報委員会委員、WFB(世界仏教徒連盟)日本センター運営委員会委員。

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【お知らせ:お寺の事例シェア企画】

昨年12月に興山舎より出版された『みんなに喜ばれるお寺33実践集 - これからの寺院コンセプト』の出版を記念して、書籍で紹介されている2か寺のご住職に登壇いただき、本では語られていない最新の活動実践事例をお話しいただきます。

お話しを聴くのは、著者である未来の住職塾 松本紹圭 塾長と、遠藤卓也 講師。ご参加の皆さんの寺院活動にも役立つように事例を一緒に紐解きます。

コロナ禍において、これまでのように仏事がとりおこなわれなかったり檀信徒の集いの機会も減り、不安を感じているお寺も多い中、新しいご縁を結んでいくためのヒントとなる最新事例をご紹介いたします。

『みんなに喜ばれるお寺33実践集』出版記念オンラインイベント
 実践事例共有LIVE

開催日:2022年3月7日(月) 14:00-16:00
開催形態:オンライン(Zoomを使用)
進行役:松本紹圭(未来の住職塾 塾長)、遠藤卓也(未来の住職塾 講師)
発表者:久住謙昭さん(神奈川県・日蓮宗 妙法寺 住職)、品田泰峻さん(青森県・真言宗豊山派 普賢院 住職)
参加費:無料(先着100名まで)
対象者:僧侶やそのご家族(配偶者や兄弟姉妹、後継者)など、伝統仏教寺院にて「宗教指導者」としての役割を担う方。僧侶のご家族については、僧籍の有無を問いません。

一般社団法人未来の住職塾


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