未来の住職塾
連載:お寺の女性の今、そしてこれから [7] -スペシャル座談会
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連載:お寺の女性の今、そしてこれから [7] -スペシャル座談会

未来の住職塾

こんにちは。未来の住職塾の松﨑香織です。

この連載では、お寺で生活する女性のウェルビーイングを大切にするために、さまざまなお立場にあるお寺の女性のお声をお届けしています。第7回目はインターネット上で、男性も交えたオンラインのディスカッションを開催しました。全国各地よりさまざまな宗派の皆さんが男女を問わず30名ほどがインターネット上に集まり、ジェンダーについてご一緒に考える機会となりました。
(登場者の名前は仮称です。)

TOPイラスト;早坂宏香さん(曹洞宗寺院寺族)

◉ 「女性も活躍を!」のその先に、当事者主権が認められる環境を

―最近は、お寺の世界でも少しずつ「女性活躍」が言われるようになりました。実際のところ、皆さんは現場でどのように感じていますか?

慧理子
「これからは女性にも前に出てきてもらわないと!」と言ってもらえるようになったと感じます。ただ、実際に行動すると「女の出る幕じゃない」と叱られてしまうこともあるので、どのタイミングであれば前に出てよくて、どのようなことならやっても許されるのか、判断が難しいところだなと感じることはありますね。

―「女性に活躍の機会を!」という雰囲気だけでは、全ての女性が自由に行動できるようになるわけでは必ずしもないことが伝わってくるお話しですね。「活躍の中身」や「前に出るタイミング」を、当事者の女性たち自身が決められるような環境にしていくことが肝要そうです。

真梨
私は現在、比較的大きな組織に所属していますが、確かに言葉では聞かれるようになりました。まったく意識されることもなかった頃に比べると進歩を感じる一方で、会議に出席できる立場にある女性メンバーは、まだ私一人です。この先、女性メンバーが1人、2人増えることはあっても、大きく状況が変わることはないのではないかとの懸念があります。そう思うと、これまで違和感にフタをして見ないフリをしながらやってきましたが、受け止め方を変えて、痛みを前に進む力に変えていかなくてはいけない、という気持ちに最近ではなってきました。

文恵
私は副住職である今のうちに、お寺や地域でいろいろなことをやってみたいと思っていました。社会の意識が少しずつ変わるなどして行動を起こすハードルも下がってきたように見えたのですが、実際には、よほどの覚悟を決めない限り、少なくとも私が暮らす村では、いまだ女性が一歩を踏み出すのはやはり難しい……。最近そう実感することがあって大きなショックを経験しました。結局、行動に移すには移したのですが、勇気を振り絞る必要がありました。

―仏教界においても、特に宗派など影響力の大きな組織においては、会議など意思決定の場や役員など影響力のあるポジションに女性を等しく入れていく必要性が感じられます。僧侶になりたい女性が自然とその道を進めるような文化を醸成していくこととも連動しますね。せっかくの素晴らしい力と意欲を、もっと自由に発揮できるようになって欲しいです。

◉ 互いの生き方を尊重し、それぞれの歩みを大切にできる仏教界へ

―住職をされている方にうかがいます。女性の住職として、どのようなご苦労を感じていますか。

菊乃
私は村のお寺に一人っ子として生まれ、父が亡くなったことをきっかけに住職を継ぎました。仏道を深めながら自分なりのお寺づくりをしてみたいと思い、自分が住職になる道を選びました。ですが、男性が住職になって女性の配偶者が後をついていく、という形が一般的な中で、その逆を行くしんどさがあります。私の村には同じ宗派の女性住職が他にいらっしゃらなくて、最初の頃は毎日が孤独感でいっぱいでした。

蓮子
結婚や子育ての大変さを自分でも味わいながら、人の話を深く聞けるようなお坊さんになりたくて、住職になってから子供を3人もうけました。家事も子育てもしながらの法務は本当に大変で、心身のバランスを取ることがとても難しかったです。大きなお腹でお盆行を回りきれず、サラリーマンの夫にも手伝ってもらっていたら、「旦那さんが継ぐのか」「旦那さんが会社を辞めたらいいんじゃないの」と言われてしまい、さすがに心が折れそうになりました……。

沙羅
住職として日々のことをするのって、性別に関係なくエネルギーがいりますよね。加えてお坊さんのおつとめは男性中心に成り立っているプレッシャーもあって、さらにその中で子供を妊娠したり出産したりすると、体だけでなく精神的にもすごく疲弊します。産後すぐに動けずにいると、「だから住職は男性でなくては」「早く息子に継がせないと」なんてことを言われてしまったりして。

―性別に関係なく仏縁あって発心し、僧侶や住職という人生を女性も等しく歩んでいますよね。その素晴らしさをもっと大切に思い合えたら、と感じました。妊娠や出産のみならず、思うように動けなくなるようなことは誰にでもありえますから、そんなときは相手の状況を思いやり、一人一人のさまざまな事情に寄り添える仏教界であってほしいと思います。

◉ あとに続く女性たちのためにできること

節子
お寺同士で集まっておつとめするときなど、男性僧侶に混じって隅っこでコソッと着替えるわけですけれども、男性にも申し訳ない気がして、いたたまれなくなるんですよね。でも、お寺によっては個別の部屋を用意してくださることがあって。そういうとき、「申し訳ない、自分一人が女性なばっかりに……」なんて思っていましたが、最近「あとに続く女性たちのことも考えなくちゃ」と思うようになり、今では遠慮せず使わせていただくようにしています。そういう配慮を、皆が当たり前と思えるようになればいいですよね。

―言われてみると私も、たとえばお手洗いが男女に分かれていないお寺で勉強会など開催するときは、男性に申し訳ない気がしてコンビニのお手洗いへ行ったりしていました。男性が多数の状況がほとんどなので身を引くクセがつきますが、勇気を出して配慮をお願いするのは、自分だけでなく他の皆さんのためにも大切なことかもしれないですね。

真知
多くのお寺の女性はマイノリティであることを経験しながら、その中でも人々の幸せを願って日々おつとめされています。そうして育まれたレジリエンスや人に寄り添う心は、きっと仏教界にとって、社会にとって、大きな力になると感じました。

◉ 知識や経験を無価値化しない社会へ

―女性の僧侶が少ない地域で住職をされている方は、日々どのような課題を感じていますでしょうか。

柚香里
私の暮らす田舎の仏教界において、女性の住職は究極のマイノリティです。単に少数というだけはではなく、未熟で無知な存在として扱われれてしまうことがあります。なかなか話を聞いてもらえなかったり、まともに取り合ってもらえなかったりすることも。まっすぐに物事を進めることが難しくて、さまざまな方策を練りながら、いろんなやり方を編み出す毎日です。

真由
私の地元でも、とかく女性僧侶は半人前と見られがちです。住職としてやるべきことを実現しようと思うと、総代さんや近隣のお寺にあらかじめ幾重にも根回しをしたり、何度も繰り返し気持ちを伝えて回らなくては一歩も進めないようなことがたくさんあります。お寺を預かる責任を全うするためにも、男性社会のマイノリティとしてなんとかうまく立ち回る、ということをこの数十年やってきました。

―皆さんの豊富な経験をもってしても、未だ半人前と軽視されてしまうのは、健全とは言い難い状況ですね。やる気と能力を、もっと地域や人々のために注げる環境になってほしいと思います。そうでなければ、せっかくの素晴らしい力が本当にもったいない!

◉ 地域のお寺同士で支え合える仕組みを


私はお寺に母と二人暮らしをしているのですが、広い境内に窓もたくさんあって、常に防犯を気にしながら生活している気がします。女性の住職であることをお寺の特徴としてSNS発信をしていますが、あまり前面に出しすぎても、女性だけで住んでいると知られた時に怖いかな、なんてことを考えます。

百合
わかります!夜中に男性が助けを求めてお寺に駆け込んで来られる時など、どこまで対応させていただくべきなのか迷います。男性お一人住まいの家へお参りに行く際も、背中を向けてお経をあげるのを怖いと感じる時もあって。無意識に、お鈴に映るお姿を確認してしまいます。

―女性だけでお寺を預かる場合の心配事についても、もっと仏教界全体で共有できるようになると良いですよね。お寺同士で支え合っている地域があれば、ぜひ情報をシェアしていただきたいです。

◉ マイノリティを生まない宗派組織へ

恵香
私は独身の副住職です。結婚すればその瞬間から男の子を産むことを望まれる境遇で、女性の住職は家事と育児と法務に手一杯で外へはあまり出られなくなる、と言われていますから、それまでの貴重な時間を、高度な専門知識を学んだり、いつか指導的な立場となれるような勉強をするなどして有効に使いたいと思っていました。ですが、そういったハイレベルな学びの場に女性は入れないため、教学面でも実践面でも深みを目指すことがかないません。そのような状況が、これからの時代も正しくあり続けられるのかどうか、少なくとも議論は始めなければならないのではないかと感じています。

薫子
令和も間近という頃に、研修の場で先生から「男性が衣をつける場に女性が衣をつけてくるべきではありません!」と諭されたことがあります。とても悲しくなるのと同時に、このような考え方の僧侶を、法を説くお手本であるべき立場に据える組織のあり方に大きな疑問を感じました。ですが、そのような差別意識を問題だと思っても、マイノリティ化してしまっている自分の言葉は非常識な愚痴と捉えられる恐れがあります。

―生まれながらの特性によって区別をしたり機会に差をつけることは、もはや日本においても受け入れられなくなってきているように感じます。宗派の会議の場に例えば相当数の女性がいたなら今のお話のようなことも議論されたのではないでしょうか。宗派がより良い組織であり続けるためにも、意思決定層や役員の人選は多様であることが望まれますね。

皆さん、今日は意義深いお話し合いを有り難うございました。

 「女性も活躍を!」のスローガンで終わらないために仏教界として考えるべき課題は、複合的で多岐に渡ることがうかがえる座談会でした。
 世界経済フォーラムが毎年公表しているグローバル・ジェンダー・ギャップ(世界男女格差)レポートにおいて、2019年の日本のジェンダー・パリティ(公正)指数は、過去最低の121位となり、先進諸国の中では最下位という結果でした。
ジェンダーギャップは女性のウェルビーイングや尊厳を損ねてしまう要因として、また女性や子供の貧困にも繋がる社会問題として、国内においても認識され始めています。仏教会としても、足元のことから一つ一つ丁寧に取り組む姿勢を社会に見せていただきながら、マイノリティや弱者を生ない社会を目指して、率先した環境づくりをぜひ期待したいと思います。

この連載記事は、大正大学地域構想研究所BSR(Buddhist Social Responsibility)推進センターが毎月発行する『地域寺院50号、51号』に掲載されました。
地域寺院は、これからの地域社会に必要とされる寺院の在り方を探る情報を発信する月刊誌です。
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インタビュアー プロフィール

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松﨑香織一般社団法人未来の住職塾 理事。米国Fish Family財団 JWLI (Japanese Women’s Leadership Initiative)フェロー。役員秘書として銀行の経営企画に携わったのち、ロンドンの非営利組織にてマーケティングに従事。2014年より未来の住職塾ならびに塾生コミュニティ(現在約650名)の運営に携わる。全日本仏教会広報委員会委員、WFB(世界仏教徒連盟)日本センター運営委員会委員。
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