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【創業者の夢は「発明家としての成功」思いを引き継ぎ、3代目代表が鉄道業界において”変化を起こす”】

会社名:三上化工材株式会社
昭和30年創業、車両用つり手、連結幌のほか車両用各種部品を製造するリーディングカンパニー。「安全で快適な移動空間のより良い明日をつくる」を掲げ、単なる輸送機関の役割だけでなく、「快適性」や「独自性」「革新性」のレベルを上げ、多様化するお客様からのニーズに応え、永続的な発展を目指す。独自開発商品「やさしいつり手(GM型)」は2020年10月にグッドデザイン賞を受賞した。


ー創業67年という長い歴史がございますが、ご創業された当時の創業者様の想いや経緯について、改めてお聞かせください。

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 当社は昭和30年に先代である私の祖父が創業し、今日まで歩みを進めてきました。
 鉄道業界において、自身が生み出したアイディアや開発した商品を通じて世の中を良くすることが祖父の夢だったと聞いています。

 祖父は元々、祖父の兄が経営していた塩化ビニルが主体の紡績加工会社で働いていました。この当時、お客様であった阪神電鉄様が電車内で使用する「つり革」の改善について、相談をしてこられたことがあったそうです。

 この頃の「つり革」は天然皮革を用いて製造されていたため、製造コストがかかる一方で、劣化によってちぎれてしまい、乗客が怪我をしてしまうという事故が多発していたんです。この問題を解決するために、祖父と祖父の兄は自社が得意とする塩化ビニルを用いた、現代の「つり革」に近い製品を開発しました。

 この技術をもっと追求したい、開発を続け、社会に貢献したいと考えた祖父は、特許を取得し、「つり革」のメーカーとして、三上化工材株式会社を設立したといいます。

ー事業承継にいたったきっかけと、事業承継を受けるにあたって、課題に感じたことや苦労されたご経験をお聞かせください。

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私自身は、大学院では会計学を専攻していました。いつか私も祖父のように起業して、自分にしかできないことを発信し、社会に貢献していきたい、という経営に対する想いを抱いていたからです。

 祖父の後を継ぐはずだった父が、2011年に63歳の若さで急逝。現役で社長を務めていた祖父は、この時に既に90歳を超えていました。そんな中で、孫である私に突如、白羽の矢が立ったというわけです。

 父が亡くなった翌年、私は大学院を卒業。次期後継者として、三上化工材に入社しました。取締役としての肩書はありましたが、製造業のことは勿論、初めのうちは何一つとして分からない状況でした。

 祖父や先輩社員に一つひとつの作業工程やそれらが持つ意味などを丁寧に教えてもらいながら、時間をかけて全部門をまわり、必死で勉強しました。

 そして2014年、祖父から事業を承継し、2代目社長に就任
 祖父とは4年ほど一緒に働いていましたが、発明家タイプの祖父と、私とでは、経営のタイプは違ったのかな、と思います。
 経営を始めてから、まずは現場を理解しようと徹底的な現場主義を貫いてきましたが、これからは会社全体を客観的に見られるよう、数字の面でもしっかりと状況を把握し、牽引していくことが中小企業経営において、非常に重要だと考えています。

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 過去を遡れば、私自身が実態を正確に把握できておらず、そのために必要なデータ収集も不完全な状態でした。そんな中で経営における重要な意思決定をしていくにあたっては、様々な人の意見が必要不可欠でした。従業員の皆さん全員が納得するような答えが導き出せず、一時は社内に軋轢が生まれたこともありましたが、そういった時期も乗り越えて、今があります。

 事業承継から丸8年が経ちましたが、やっぱり今でも現場を把握することは大切にしています。これは、お客様に対しても同様です。当社の商品をどのように使っていただいているのか、どのようなニーズが生まれてきているのかなど、チェックシートを活用しながら、現場調査を進めています。

ー「鉄道業界の問題を解決する先駆者的役割を担っていく」という内容の経営理念について、三上社長がお考えになっている鉄道業界の課題とその解決案について、可能な範囲でお聞かせください。

 鉄道は時代の流れとともにニーズが変化していき、快適性・独自性・革新性などが、昨今の電車に求められるようになってきております。また、違う側面から見れば、電車自体が「選ばれる交通機関」にならなくてはいけなくなった、とも言えます。

 私たちは、そんな鉄道業界の課題に対して積極的に貢献していくことが自社のミッションだと考えています。

 想像してみていただきたいのですが、「つり革」って車内に沢山ありますよね。それだけに、車内のインテリアや景観に大きくに影響してしまうんです。ですから、イベント用の列車であれば、つり革の色や形などの見た目を良くすることで、より楽しい空間を演出することが出来ます。

 一方、都心向けであれば、握りやすさであったり、急ブレーキ時に捕まりやすいであったり、快適な移動空間を提供することが非常に重要ですよね。

 将来的には現在のメインアイテムである「つり革」と、車両の連結部分である「幌(ほろ)」だけでなく、車両全体が快適な空間になるような、トータルコーディネートを提供していきたいと考えています。

ー不確実性の高い現代社会で、外部環境の変化に強い企業として永続経営を目指される上で、三上社長が大切にされていることや具体的に取り組んでいる内容がありましたら、お聞かせください。

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 少し抽象的かもしれませんが、“変化を起こす”ことを大切にしています。自分自身が変化する、変わるって、自分次第で出来ますよね。でも、社会に変化を起こすことが出来れば、それがすなわち、社会への貢献に繋がっていくものだと思っています。

 会社として変化を起こしていくためには、社内外からの協力が必要不可欠ですよね。皆が納得した上で、前向きにチャレンジしてもらう。そのためには、自分たちが作った製品に対して、あらゆる方面から自信を持ってもらうことが、大事だと思っています。

 「~だからうちの商品って良いんだよ!」と、自信を持って言いたいじゃないですか。そのためには、根拠や裏付けに基づいた商品スペックを明確にしないと、大きい声では言えないと思っています。

 その一環として、九州大学と協力し、人間工学の視点からも商品開発を進めています。
 また、2020年には、当社の「やさしいつり手」が、グッドデザイン賞にも選ばれました!

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https://www.g-mark.org/award/describe/50749

ー三上社長が会社経営をされている中で、事業承継を受けて良かった、と感じたのはどんな時ですか。会社経営の魅力をどうお考えですか。

 祖父や父と仕事した期間が本当に短かったので、会社の中での二人のことは、正直、私自身あまり知らないんです。しかし、「おじいちゃんは頑張っていたんだよ、お父さんは凄かったんだよ。」と、長くお付き合いのあるお客様から温かいお言葉をかけていただいた時に、改めてファミリービジネスならではの感慨深さを感じました。二人の成し遂げた仕事や役割が、今も感謝され続けているのは、やはり嬉しいものですよね。

 会社経営していく上での魅力といえば、“自分の思った形で社会貢献が出来る”、これに尽きると思います。特に「つり革」は生活の中に自然と溶け込んでいて、とても身近にあるじゃないですか。
 実際に利用している、役に立っているところが見えやすいので、自信や誇りにも繋がりやすいのかなと思っています。

ー三上社長が会社の事業そのものやプロダクト、サービスについて何か広くPRしたいことがあれば、お聞かせください。

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 私たちはメーカーとして、お客様からご依頼があった製品の開発を行なっています。しかし、これから私たちが目指していくのは、自分たちが必要だと思った製品を開発し、世の中に広めていくという、リーディングカンパニーとしての在り方です。
 先ほど、「トータルコーディネート」と表現しましたが、例えば「つり革」から車内の印象を変えたり、防音の「幌(ほろ)」を用いて快適な移動空間を提供したりと、私たちが出来ることは無限にあると思っています。

 祖父が夢見た「発明家」としての成功、また、当社がミッションとして掲げる、「お客様と社員、社会の喜びに貢献する」ということを同時に叶えていきたいですねー。

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【御紹介企業様】
会社名:三上化工材株式会社
代表者:代表 三上 省吾
本社住所:〒578-0943 東大阪市若江南町1丁目1番28号
ホームページはこちら(https://mikami-kakouzai.co.jp/index.php

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