令和3年度精神保健指定医(新様式)合格体験記(症例集め、病院選び、指定医研修会、レポートについて)

2024年2月6日 精神保健福祉法の一部改正に伴う注意点を追記しました。
2024年4月7日 2024年3月26日に厚労省から通達された出されている各種要項の改定について追記しました。

こんにちは精神科医のfaxです。

以前、1期目の新専門医試験合格体験記と題したnoteを作成しました。
新精神科専門医1期生(令和3年度)合格体験記(研修全般~レポート、筆記、面接試験対策)|fax|note

今回は同年度(2021年度、令和3年度)に申請した精神保健指定医に関してのnoteです。

2022年(令和4年)5月に結果が出て、無事に合格しました。口頭試問については内容を漏洩することはできませんので、口頭試問以外の指定医申請に関するnoteを作成しました。

症例集めや専門医対策も視野に入れたレポート選定、指定医研修会、レポート作成における注意点などについて、これから申請する先生含め、今後精神科に進む方にも参考になれば幸いです。私が申請した後の厚生労働省が出した2022年(令和4年)6月分までの変更点についても少し解説しています。
なお、以下西暦で記載していきます。

ご存じの方がほとんどかと思いますが、精神保健指定医の申請に関して、不正取得が問題となったことを契機に、大幅な変更がなされました。2019年度後期(2019年12月)申請分より提出症例の数、症例レポートの様式が変更になり、口頭試問が追加されました。特に症例レポートは大きく変更され、表紙、チェックリスト、レポート本文に分かれることになり、旧制度のレポートを参考にするだけではレポートを作成することが難しくなりました。

施設によっては指導する先生も旧制度の指定医レポートしか指導経験がないということもあるかもしれません。

これまでは移行措置期間であったため、提出する症例に関する縛りが必須ではなかったのですが、2022年6月申請を最後に猶予期間が終了しました。すなわち2022年12月申請分からは上記変更分は必須になります。これから症例を集める先生方は最初から意識して動く必要があります。

大前提として特にレポートは2019年以降の情報を参考にする必要があります。私が受験した2021年6月提出までの分で合計3回申請がされており、最近合否が出た2021年12月、まだ結果が出ていない2022年6月申請も含めるとこれまで5回の申請が行われています。少しずつレポートの情報も溜まってきているとは思いますが、いまだに「ここはどう書いたらいいの?」といった部分は多く残っています。どれも細かい所ではあるのですが、指定医自体が法律に基づくものであり、細かいミスでも一発で落とされると言われているだけに、かなり神経質になります。

このnoteでは、個人情報のこともありますので、具体的なレポート本文は載せておりませんが、私自身が悩んだ細かいポイント(チェックリストや特に中毒例、申請書)も含めて、「自分はこう書いた」、といった情報を多めにすることで、これから申請する先生達にとって「こう書いても合格できたんだ」といった一例になればと思います。

もちろん、あくまで一個人の記事ですので、確実な合格を保証するものではありません。噂レベルですが、査読者によって評価が変わるとも言われています。また、一応私が申請した後の厚生労働省からの変更点はチェックして私なりの解釈も記載しておりますが、2021年6月(前期)の合格者のnoteですので、最新の情報については厚生労働省からの情報をご参照ください。

私が申請した2021年6月(前期)は厚生労働省の医道審議会の議事録によると451人中、口頭試問まで進めたのは340人だったようで、111人がレポートで落ちたことになります。合格率75%という数字を多いとみるか少ないとみるかはそれぞれ意見があるかと思います。日々の業務と並行してレポートを作成するのはそれなりに大変で、他の方も同じように頑張って申請しているはずですが、それでも25%落ちるというのは結構厳しいなというのが個人的な感想です。しかし、専門医と違い、どの施設で勤務していても症例さえ集まれば申請できるため、書きやすい症例が集まらなかったり、十分な指導が受けられないまま申請したりした方もいるのかもしれません。専門医とは違い申請の手引きに症例レポートの例があったりする訳ではないので、そもそもどのように書いてよいか手探りのまま申請した方もいらっしゃるかもしれません。

そういった意味では、どの病院で働くかも重要です。これから精神科を目指す学生、研修医の方にもどのような病院で働くことが良いのか参考になればと思います。
現在医学生、初期研修医の先生にとっては、大学医局に入局するかどうかが最初の大きな選択になるかと思います。大学病院の良さ(特に研究)もありますが、きちんと病院を選べば、少なくとも精神科においては、必ずしも大学医局に入らずとも最短で資格取得が可能ですので、選択の幅を狭めることなく、ご自身の進路を考えて頂ければ幸いです。

専門医試験のnoteでも書きましたが、簡単に自己紹介をしておきます。私は初期研修後、医局には属さずに専門医研修プログラムを有する精神科単科病院に就職し、3年間の専門医研修を終え、4年目に専門医、精神保健指定医の申請を同時に行い、無事両方合格しました。自身の経験とこれまでの制度の変更を見ていると、専門医はともかく、指定医はスーパー救急をやっている病院で数年研修した方が最短で取りやすい傾向になりそうです。

もちろん、早く取れば良いものではないと思います。特に指定医は患者さんの人権に関わる資格で、責任も重いため、しっかり経験を積んだ上で取得を目指すといった考えも大事だと思います。

しかし、特に精神科単科病院では精神保健指定医の資格がないとできない職務が多いため、実務上困ることも多く、私自身は早く取らなければと感じながら研修していました。
また、上記理由から給与も上がることが多いです。求人を見ても、指定医の有無で提示年収が違ったり、そもそも指定医前提の募集が多かったりします。精神科の中では専門医はともかく指定医は必須という考えが大多数で、他科でよくある「専門医=その科で一人前、ようやくスタートライン」の専門医が精神科では指定医であると言っても過言ではありません。もちろん、求められる事柄が違うため専門医は専門医で取った方が良いと考えていますが、まだまだ指定医至上主義は変わらないだろうと思います。実際、2022年度の診療報酬改定で指定医と指定医以外での精神療法の点数に差がつくようになりました。本来の指定医の意義からは反れているような気もしますが、ますます取得する重要度は高くなったと言えます。


はじめに

大まかな指定医取得の流れは、
症例集め→指定医講習会を受講→レポート作成・提出→口頭試問→合格発表です。

最短取得でのスケジュールは、
 精神科3年目に指定医研修会を受講
 →4年目の6月にレポート提出
 →3月頃口頭試問
 →5年目の6月頃合格=指定医取得
となります。
あくまで現時点でのスケジュールで、今後は早まる可能性もありますが、申請から合格発表まで約1年間かかるため、何度も申請することは避けたいですね。

基本は厚生労働省が公式HPで出している文書を見れば分かります。雑な説明に感じるかもしれませんが、法的な手続きにのっとって申請、指定が行われるものですので、ネットでまとめられた記事をそのまま鵜呑みにはせず一度は確認しましょう。
それでも不明な点は後述する指定医研修会で質問したり、県、政令指定都市の窓口に問い合わせたりしましょう。ただし、担当によってずいぶん対応が違うようです。

実際に働いてみないとイメージがわかないとは思うのですが、それでも早い段階で一度は厚労省が出しているPDFに目を通すことをお勧めします。専門医もそうですが、専攻医1年目(いわゆるレジ1年目)からある程度計画を立てて症例を集めたり、レポート作成に必要な事項を押さえながら診療、カルテ記載したりすることは後々役に立ちますし、実際の臨床でも重要なことが多く含まれているので、患者さんのためにもなると思います。書きやすい経過の症例なのにその辺が曖昧だと、いざレポート作成する段階になって後悔することになります。

現在医学生、研修医の方、あるいは転科を考えている先生も、できれば精神科に進むと決めた時点で一度目を通してみることをお勧めします。その方が入局する医局や就職する病院選びにおいて参考になると思います。

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