『バチェロレッテ』最終回に思うこと

 ほとんどのことは前回書ききってしまったけれど、SNSに流れる感想を読み、続きを書きたくなりました。


 最終回を迎えて、SNSには多くの感想が流れた。最後まで頑張った杉ちゃんや黄さんへのエール。男性陣への評価。ただ、その中でも、「だから結婚できないんだ」という萌子さんへの批判が目立っていた。
 杉ちゃんと(もしくは黄さんと)結婚しておけばいいのに。あるいは、アフターファイナルローズで男性たちが漏らしていたように、とりあえずお付き合いしておけばよかったのにと。

 かくいう自分も、萌子さんに対して、モヤッとする想いは生まれた。
 ただし、それは彼女の結婚観についてではない。結婚についてこれほど真剣な彼女が、よりによって『バチェロレッテ』というショーに身を投じてしまったことについてだ。
 これは、あくまでショーだ。しかも、とても品が良いとはいえない見世物だ。いくら真実の愛を謳おうと、これは「結婚以外の全てを備えた素晴らしい人を、複数の異性が奪い合う」番組だ。ローズセレモニーで人数を絞るシステムもそうだが、1on1デートのルールしかり、ストールンローズしかり、基本的に争いを生むように仕組まれているし、バチェロレッテを巡る口論の様子も編集でカットせずに放送される。
 この番組に萌子さんが出演したのは、売名のためではないだろう。いや、売名もゼロではないだろうが、結婚相手を探す目的の方が大きかったと思われる。でなければ、「どちらも選ばない」なんて、番組を壊す形で決断をくだすはずがない。この行動のせいで、これまで同性の支持者が多かった萌子さんに、批判の声が集まりだしているのだから。
 アフターファイナルローズ回での男性陣の非難も、口ぶりはどうかと思ったが、言いたくなる気持ちはわかる。「全員違いました」なんて、何のために自分たちはカメラの前でさらし者になったのだと感じるだろう。
 ちなみに、もし売名行為が目的なら、杉ちゃんを選ぶのが最適解だったと思う。内向的な杉ちゃんの本質を見抜いて王子に変身させたプリンセス萌子の物語になるし、黄さんやローズさんを落としてきたことで「私は情熱的なイケメンや地位と自信のある男に目が眩む女とは違う」と示すこともできる。
 けれど、萌子さんはそうしなかった。
 自分の運命の相手ではない、と二人とも落とした。
 これは当たり前のことだと思う。経験を積んだ大人の女性が、出会ってたった二か月、しかも数回しか会っていない人に結婚までの道を見てしまうなんて、それこそ運命でしかありえない。
 『バチェラー』シリーズで「運命の相手探し」が成立したのは、バチェラー自身に、エンターテイメントを演出して番組を盛り立てようとする気持ちがあったからだと思う。というか、売名の目的なくして、テレビ番組で顔をさらしながら結婚相手を探す必要はないだろう。それゆえに、視聴率は高くなくては困るのだ。


 萌子さんが、どんな気持ちで『バチェロレッテ』に参加したのかはわからない。
 ただ、これまで彼女はとても真剣に男性たちに向き合っていた。デートを楽しむことと、真面目な話をすること。『バチェロレッテ』の中で、後者の比率は『バチェラー』よりも高かった。誰よりも相手を知ろうと努めていたと思う。彼女は結婚に真剣すぎたのだ。
 繰り返すが、『バチェロレッテ』はショーだ。
 例えば、萌子さんが番組の序盤で誰かに惚れ込んでしまい、番組のルールには仕方なく従いながらも一途にデートを重ね、最後にバラを渡してキッスで締めたとする。これは、萌子さんと恋人にとっては大成功、真実の愛を手にできて良かったね、となる。
 しかし、視聴者としてはかなりつまらない番組だろう。主人公の気持ちは全く揺らがず、すれ違いも発生せず、ただ順当に好きな人とくっついただけ。おそらく男性たちの争いも起きない。誰がどう見ても惚れられていて、あとは落ちる順番が変わるくらいだから、デートに身を入れる男性もそれほどいなくなる。そんな内容だったら、果たして萌子さんのファンはこれほど増えただろうか。
 その点、『バチェロレッテ』が面白かったのは萌子さんが真剣に悩んで決めかねていたからで、批判されたのは選びきれなかったからだ。たぶん、観ていて一番面白い展開は、萌子さんの出演目的が売名で、かつ「まあ、いい人が見つかったら結婚もワンチャンありかな」くらいの気持ちだったパターンだと思う。
 真剣に結婚したい人とは、相性の悪い番組だった。聡明な萌子さんなら、きっとわかっていただろうに…と。ただ、それだけが残念なのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?