バチェロレッテ感想(ネタバレあり)

 もうすぐ最終回なので、感想を少々。

 まあ話題のやつ観てみるか、くらいの興味本位で観始めた。と言っても、同じく興味本位で観たバチェラー1については全くハマれなかったので、期待値は低かった。そもそも『あいのり』も『テラスハウス』も観ずに過ごしてきたので、リアリティショーに興味が薄いのは当たり前なのだけれど。

 ところが、これが予想を覆すほど面白かった。圧倒的と言っていい。

福田萌子さんの魅力(その1)
 

 まず、予想を裏切られたのは、バチェロレッテの福田萌子さんが自分から見て、とても魅力的だったということ。あらゆる能力値が高いグラマラスな美女、しかも良いところのお嬢さんで教養もスポーツも完璧だという履歴書的な部分はわかっていたが、「今度は女が選ぶ番」というキャッチコピーと真っ赤なドレスで不敵に微笑むメイン画像の印象も手伝って、いかにもキリッとしたデキる女で、性格もきつそうだなあと思っていた。これが全くの思い違いだった。
 まず、笑顔が可愛らしい。男性たちのアプローチに、はっとするほど無邪気な反応を返す。計算高さや媚びを少しも感じさせない自然さがある。振る舞いが無邪気といえば言葉や行動は粗野というのが定番だけれど、萌子さんは常に品が良く、言葉遣いまで綺麗だ。そして、物事をとてもポジティブに受け取る性格で、萌子さんのインタビューシーンを観ると、世界が一段階明るくなってみえるような気にさえなる。
 自分自身がどちらかといえばネガティブな性質のせいか、ポジティブ過ぎる人にじゃっかんの苦手意識がある。偏見かもしれないが、挑戦するリスクを軽視しがちで「失敗した時はどうするか」想定しなかったり、真剣な悩みに対して「たいしたことじゃないよね!」と決めつけて一刀両断したり…。その自分が見ても、萌子さんのポジティブさには嫌な感じがしない。周りを幸せにできる人とはこんな人か、というちょっとした尊敬の気持ちすらわく。
 また、感情が顔に出やすく、喜怒哀楽がわかりやすい。「この人はだめかも」と表情が曇るときもわかりやすいが、感動や喜びも全身から外へ出ていく。その裏のなさが良い意味で発揮されたのが番組開始直後の男性たちとの対面シーン。自分としては「手づかみロールケーキ」や「半裸の肖像画」のプレゼントはちょっとどうかな…と気持ちが引いてしまったが、萌子さんはどのアプローチにも素直に感激していた。大人の女性だけれど、少女のような純真さが見ていて気持ちが良い。

 そして、当然のことながら、彼女の魅力は出演した男性たちにも伝わる。目的としては売名半分、お金持ちの美女獲得が半分といった風情だった彼らの態度が、萌子さんの可愛らしさを知るにつれて、どんどん真剣味を増して変化するのがわかる。

物語としての完成度


 これまでのバチェラーシリーズのように、話が進むごとに参加男性の数は減ってゆく。『バチェラー』では、たとえばアピール不足のせいで涙をのんで足切りされる女性たちもいた。ところが、最初のローズセレモニーを除けば、萌子さんに求婚する男性たちの物語はわかりやすく完結してから別れを告げられている。
 特に、初日に「NEVER JUDGE A BOOK BY ITS COVER(表紙で中身を判断しないでください)」と書いた交換日記を萌子さんに渡したエバンズ・マラカイさんへ、後日、「I never judge a book by its cover. Also,never judge the person one met for the first time,the person judge a book by its cover.(私はけして本を表紙で判断することはない。逆に、初めて会う人のことを他人を表紙で判断する人だと前もって判断しないで)」と書いて返したのは象徴的だ。

 萌子さんは直前に行われた2on1デートで彼を落として別れることもできた。実際、もう一人のデート相手であるローズさんは、この回のローズセレモニーでは残されている。誰が次へ進んだかという結果だけ見ればいつ決めても同じだ。けれど、萌子さんは2on1の時間内に片方を落とすことができず、ルールを崩してまで時間をもらった。そして設けられた席で、日記に書き込んだ言葉をマラカイさんへ贈った。本当に、どちらも大事過ぎて、決めきれなかったのかもしれない。ただ、出来る限り心をこめて別れを告げたい、ぶつ切りにしたくないという気持ちもあったのではないか。
 いざ1 on 1デートで深く語り合う段になって、萌子さんのまっすぐな質問に対して語れる中身がない(自分と向き合ってこなかった)ことを自覚し、涙を見せた藤井さん。結婚よりもスーツのために出演を決め、その動機を正直に語った牧野さん。一度も与えられなかったチャンスをつかむために、ストールンローズを手に萌子さんのもとへ走った榿澤さん。いずれも、彼の物語はここまで、この先のピークはもうないだろうというタイミングで退場している。
 お別れする前に、きちんとエンドマークを打つ。萌子さん自身のこだわりか、編集の腕かはわからないが、よくできている。まるで、『バチェロレッテ』は萌子さんを主人公にした恋愛シミュレーションゲームのようだと思う。

福田萌子さんの魅力(その2)


 そう感じる要因はもう一つある。とにかく萌子さんが誠実で心が綺麗である(カメラ越しにはそう見える)点だ。
 まず、相手を否定せずにまっすぐ向き合うことができる。努力して完璧になったが欠点がないため個性もないことがコンプレックスだと漏らした実業家に「何も悪いところはない。完璧なのが個性」と、温かい言葉をかける。不倫を告白した男性にも、その事実に対してはどうこう言わず「私にわかるのは、あなたはそういう経験を持っている。」と告げる。
 また、番組をしばらく見ているとわかるが、萌子さんは芯がしっかりしており、意思をはっきり表現できる女性だ。結婚相手の選定という主旨にも意欲的なので、男性と話していて思ったことは口に出し、疑問はすぐに解決すべく、ずばり聞いてしまう。この分では、さぞかし厳しく男性たちを判定するんだろう、ちょっと悪いところが見えたら斬られる…と、序盤では思っていた。
 ただ、彼女は一貫して「あなたがどんな人間か、どんな未来を想定しているのか知りたい」と全員に問いかけているだけだ。どの男性に対しても問いの内容は変わらないし、きちんと答えが返ってくれば、それが聞き心地の良いものでなくても、敬意をもって接している。
 最初のカクテルパーティーで目立っていた、画家の杉田さん。良い意味ではない、悪い意味で、だ。どうしても萌子さんに話しかける勇気が出なかった彼は、カクテルグラスを手に、ひとりでぽつねんとソファに座っていたのだ。彼女を奪い合うライバルであるはずの周囲の男性たちが、見るに見かねて背中を押してやるほどの引っ込み思案な人だ。彼は実力を評価されているアーティストらしいのだが、女性に対して強く自分を推したり、笑わせに行ったりできるタイプではない。萌子さんを前に緊張しているのか、どう見ても態度は弱々しいし、しぐさも女性慣れしていない男そのもの。いわゆる男性的な魅力からは程遠い。

 しかし、その杉田さんの手を取って、萌子さんが語り掛ける。「あんなに綺麗な絵が描けて、こんなに感受性が豊かで、いろんなことを同時に頭の中で考えて、人のことを考えられる人ってなかなかいないので、本当に素晴らしいと思います。だから…You’re special!」と。白いドレスも相まって、女神様の降臨のようだった。
 その後の杉田さんの成長ぶりも凄まじい。あんなに小さくなっておどおどと顔色をうかがっていた彼が、次第に萌子さんに自分の考えや哲学を述べて、彼女の気持ちを震わせたり、「(萌子さんは自分の人生に)なくてはならない」と一生懸命にアピールできるようになる。また、落ち着いて話せるようになったことで、予想と違うことが起きてもポジティブにとらえる性質や、他にはないクリエイティブな感性が見え始める。たいていメッキが剥がれると地金が出てしまうものだが、杉田さんの場合は逆に、中身の良さが余計な物に覆い隠されていたのだ。

 初日のカクテルパーティーの時点ではいかにも風采の上がらなそうだった杉田さんのことを知ろうとして向き合った萌子さんは、なんて素敵な女性だろうと思う。長所が明らかになるにつれて杉田さんの人気が出たけれど、彼を覆っていたものを引きはがし、その輝きを表に出すことは、並みの女性にはできなかっただろう。
 攻略対象の悩みを引き出し、癒して自信を持たせる。また、時には厳しい意見も出し、彼女との出会いも別れも彼らの成長をうながす。『バチェロレッテ』の主人公は名実ともに萌子さんだ。

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