「娓瀰糺」現代語訳
これはある女神の日記だ。
私は火を司る女神であった。
かまどの火、火山の火、人の心に宿った火などさまざまな火を見守ってきた。
私はある人に恋をしてしまった。
彼は私に些細だけど大きな優しさを与えてくれた。
しかし、この恋は叶うことはなかった。
彼には美しくて優しい恋人がいた。
叶うことのない恋に苦しんでいた私の前に影が現れた。影はこう言ってきた。
「このパプリカと羊肉を食べよ。そうすればあなたは楽になるだろう。」と。
私は疑ったが、恋への苦しみから逃れたいあまりにパプリカと羊肉を食べてしまった。食べた瞬間に激痛が走った。眩暈と吐き気が私を襲い、気づいたら身体から赤い液体が溢れていた。
ある方(創造主)の囁き声が聞こえた。
「パプリカと羊肉を食べることはこの世界では禁じられている。
禁忌を犯してしまうと身体から赤い液体が溢れ出てくるようになってしまう。
これはあなたの子孫まで続いてしまう。」と。
私の身体からはずっと赤い液体が溢れ続けている。
楽になるどころか、身体も心も病んでしまった。
この身体が子孫まで続いてしまうのは辛く悲しい。
私は決めた。私は子孫のためにも、この赤い液体が出てしまう身体が何かのために
あって欲しいと。そして、彼に恋心を供養して欲しいと。
子孫と自分の恋心のためにこの命を天に捧げる。
後に、子孫たちに受け継がれたこの身体は子を産むための身体になった。
血が眠る臓器、”子宮”。
今でも恋はいろいろな形である。
いくつかの想いは”心臓”に封じ込められている。
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