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スピリチュアルな成長痛と、小さな自己否定の先に

久しぶりにスタバきた。恐る恐るオーツミルクラテを頼んだ。懐かしい、人工甘味料の匂いだ。それとわかってて、それでも飲んでみた。

ところでこのところ、心理学を学ぶ人たちとの出会いが多い。現役カウンセラーとか、チューリッヒでユング心理学を研究する教授とか。彼らは、俺の「前世体験」について前向きな興味を示してくれる。なるほど、彼らにとって自分に起きた出来事は研究対象に近いのだな、と新鮮な思いがする。

彼らと話をするうちに、前世の記憶のあれこれと、ユング的な「集合的無意識」の指すものは、同じものなんだろうな、と思うようになった。そして俺は生まれつき、集合的無意識とのパイプが太いんだな、とも。

そんな感じで、ここ10年間に自分の身に起きてずっと未分化だった現象を、アカデミックな眼差しから分類化することを試みている。ユングもまた、霊的な現象に悩まされることの多い人生だったらしいから、自ずと親近感が湧く。

スピリチュアルや宗教的な文脈でしか理解できないようなことを、できるだけ「日常」の側に引き込んで、そこにとどまりつづけ、あの世とこの世を反復横跳びしてきたことで、いつしか俺には「橋を往復する」力が身についた。

身についた、というか、「それがタケル君の才能ですよ」と、彼らに言われたんだった。「あの世にいく才能があるんじゃなくて、あなたにはあの世とこの世を自在に行き来する才能がある」と言われ、なるほど確かに行きっぱなしにはならないよなと思った。

カウンセリングの現場には、この「行きっぱなし」になる人も数多く訪れるという。俺も実際、「行きっぱなし」になってる人を何人も見てきた。彼らは、たいてい統合失調症と診断される。俺がそうならずに済んだのは、なんでだったんだろうなあ、とふと思う。

社会人としては到底受け入れられないような、「こんなのアリにしたら頭やべえじゃん」と思わずに言われないようなあれこれを飲み込んでこられたのは、結局は「地に足がついていたから」なのらしい。要するに、そもそも地に足がついて、肉体、精神的な土台となる器が頑丈であればあるほど、相対的に到達する「あの世」「集合的無意識」の裾野も広がるものらしい。

同時にそれは、常識という心をなくさずに非常識を受け入れていくような作業なので、常識的であることを捨てなければ、その分だけギャップに苦しむことになる。俺はその「ギャップ」にギリギリまで絞られて、踏みとどまるのに必死だったんだな、と思った。

常識を捨てるか、語り合える友を捨てるか

けれど、いっそ常識を捨ててしまう選択肢だって、ずっとあったんだよな、と今にして思う。

実際、俺の周りにはもっと気楽に、「宇宙の神秘を受け入れようよ」とあっさり飲み込んでいく人たちもいた。しかし彼らのスピリチュアルをいとも簡単に受け入れるあり方には、相対的に現行の社会とか現実からは逃れたい、またはそこに批判的である本音が透けて見えて、どうにも賛同することができなかった。

彼らの奥底には、幼少期から社会で孤立したり、馴染めず苦しい思いをした経験がある。その痛み、トラウマ、それでも社会で生きなければならない辛さを「宇宙的なスピリチュアル」という万能性でいっときでも楽になりたい、という本能はわかるし、むしろ束の間逃げ込むことで楽になれるのなら、それは楽になるべきだ、と最近は思うようになった。

そもそも「そんなのなし」と決めつけること自体が、自分も幼かったよなと思う。ただ、彼らに対する嫌悪を無視できなかったのは、俺は絶対にそこから逃げないと決めていたからでもある。ただ、ひたすら前進するしかなかったからだ。

それに、人は急激に成長する時、またはしなければならない時、どうしても自分の過去や他人の在り方を否定したくなるもの、だとも思う。成長は、小さな自己否定を重ね、そうして前進するものだ。少なくとも心理的にはそういう状態の連続を経験する、と思う。

これは、昨今やたらと耳にするようになった「自己肯定」の対義語としての意味ではなくて、どちらかというと「反省」や「内省」の意味に近い。

急激な成長は、どうしてもこの「反省」「内省」の力が強く働くので、それをあたりに投影して、何倍もの力でイライラしてしまう。俺はそのイライラを決して人に当てたことはないが、そのために距離を取る必要があったんだな、と振り返る。

こんなふうに振り返られるのは、その「急激な成長期」を抜けたからなんだよなあ、と思う。スピードが緩まり、その分イライラもなくなり、ありだよね、うん、と思えるようになった。とても楽だし、自分に安心している。

いっとき離れて行った友人たちに、もう一度連絡でもしてみようか。

そんなことが思い浮かんでは消え、また浮かんでは揺れている。

一方で、新たな出会いが広がりつつある。


駆け抜けてきて、よかった。


読んでくれてありがとう。

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