見出し画像

第2問(倫理事例問題)で使う条文集


 以下に、(私の独断と偏見による)頻度および重要度を考慮した順番で書いてあります。初期の試験では、専ら社会保険労務士法22条2項への該当(抵触)の有無を質問してきていたので、易しかったのですが、最近は、そこには該当(抵触)せず、別の条項に該当(抵触)して、目の前の依頼者からの代理の依頼を受任できないと解答させる設問が多くなり、難化しています。とにかく、以下の条文は、紙に印刷して壁に貼るなり、カードにして持ち歩くなり、PDFにしてスマホでいつでも見られるようにするなりして、暗記してください。過去の記事では誤記・変換ミスが多かったので、今回見直しましたが、できたらご自分で条文に当たって間違い探しをしてみてください。そうすると理解が深まると思います。実際に第2問を解く際にどのように使うかについては、ブログの記事で説明していきます。

 第19回の第2問で、社労士法22条2項の解釈の(知っていたら得をしたか、かえって惑わされたか分からない)問題が出題されました。今後も同様の解釈を知っているかどうかを問いかけるような設問が(かなり高い確率で)あるかも知れません。よって、全国社会保険労務士会連合会の公式見解を知っておく必要がありますので、それを調べる資料を紹介しておきます。それは能力担保研修で配られた「特別研修 グループ研修・ゼミナール教材」というA4で白い表紙の150ページ程度の冊子です。第20回が初受験の方は、誰か先輩に借りてください。

 私の手元には、第16回(令和2年度)版があります。それですと、P116-118に「社会保険労務士法の解説(抜粋)」に載っています。「依頼を承諾した」の解釈の箇所で「双方代理として民法一〇八条により禁止されているところである」とあるのは、改正前民法時代から続く当事者の同意があれば双方代理が認められるという点と改正後の民法で双方代理は禁止ではなく無権代理になると明記された点から考えるとおかしいので、この解説文を書いた人が、法律に詳しくなかったのか(それとも、社労士に難しい法律の話は理解できないからこの程度の説明でいいかと考えたのか)?という疑問が湧きます。そして、現在の出題者が、そこはおかしいと気付いているとしたら、やっぱり、最新の正しい情報が要るのだろうと考えています。まあ、それよりも社会常識として、事実をどのように規範にあてはめるかということの方が難しいとは思います。余談ですが、同書には複数の倫理に関する綱領等が記載されているので、一度は目を通してみてください。連合会の考える高邁な理想の社労士像というものが浮かびかがってくると思います。それを知ると、第2問(倫理事例問題)で、「受任できる」と結論付けるのは、かなりハードルが高いという感覚を持たれると思います。第2問を解くときには、この感覚を持っていることが大切であると私は考えています。

 少しだけ、社労士法22条2項の特徴について触れておくと、1~3号は、いずれも当該特定社労士と現在の依頼者の間の(利益相反)関係を問題にしており、過去の関係には触れていません。一方、4号・5号は、過去の依頼者と当該特定社労士の間の(利益相反)関係を問題にしているが、所属する組織の他の社労士と依頼者の(利益相反)関係には触れていないという特徴があります。前者だと、過去の依頼者と敵対する依頼者候補が現れたときに、それを妨げる条項にはなっていないのですが、それを別の条項を持ってきて「受任できない」と結論付けるという設問が多いです。また、ほとんど出題されていませんが、過去に所属した事務所のボスや同僚の依頼者の事件に何らか(どの程度)のかかわり方をしたら、「自らこれに関与したもの」になるのか?というのも大いに疑問のあるところで、もし出題されたら、判断に迷うだろうと想像しています。

 いずれにしても、「はじめに条文ありき」ですから、まずは、条文を声に出して読んでみて、自分の頭で理解して、その趣旨(言いたいこと)とキーワード(例えば、賛助し、協議に応じ、同意した、など)を覚えることです。くどいようですが、六法などで、条文に当たってみてください。

**************************************************************************

(業務を行い得ない事件)

第22条 社会保険労務士は、国又は地方公共団体の公務員として職務上取り扱った事件及び仲裁手続により仲裁人として取り扱った事件については、その業務を行ってはならない。

2 特定社会保険労務士は、次に掲げる事件については、紛争解決手続代理業務を行ってはならない。ただし、第3号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。

一 紛争解決手続代理業務に関するものとして、相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

二 紛争解決手続代理業務に関するものとして相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの

三 紛争解決手続代理業務に関するものとして受任している事件の相手方からの依頼による他の事件

四 開業社会保険労務士の使用人である社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員若しくは使用人である社会保険労務士としてその業務に従事していた期間内に、その開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人が、紛争解決手続代理業務に関するものとして、相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件であって、自らこれに関与したもの

五 開業社会保険労務士の使用人である社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員若しくは使用人である社会保険労務士としてその業務に従事していた期間内に、その開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人が紛争解決代理業務に関するものとして相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるものであって、自らこれに関与したもの

(秘密を守る義務)

第21条 開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員は、正当な理由がなくて、その業務に関して知り得た秘密を他人に漏らし、又は盗用してはならない。開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員でなくなった後においても、また同様とする。

(社会保険労務士の職責)―――――――公正誠実義務

第1条の2 社会保険労務士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない。

(信用失墜行為の禁止)

第16条 社会保険労務士は、社会保険労務士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。

(依頼に応ずる義務)

第20条 開業社会保険労務士は、正当な理由がある場合でなければ、依頼(紛争解決手続代理業務に関するものを除く。)を拒んではならない。

(社会保険労務士の業務)

第2条 社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。

一 別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令(以下「労働社会保険諸法令」という。)に基づいて申請書等(行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、再審査請求書その他の書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識できない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。)をいう。以下同じ。)を作成すること。

一の二 申請書等について、その提出に関する手続を代わってすること。

一の三 労働社会保険諸法令に基づく申請、届出、報告、審査請求、再審査請求書その他事項(厚生労働省令で定めるものに限る。以下この号において「申請等」という。)について、又は当該申請等に係る行政機関等の調査若しくは処分に関し当該行政機関等に対してする主張若しくは陳述(厚生労働省令で定めるものを除く。)について、又は当該申請等に係る行政機関等の調査若しくは処分に関し当該行政機関等に対してする主張若しくは陳述(厚生労働省令で定めるものを除く。)について、代理すること(第25条の2第1項において「事務代理」という。)。

一の四 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号)第6条第1項の紛争調整委員会における同法第5条第1項のあっせんの手続並びに障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)第74条の7第1項、労働施策の総合的な推進並びに雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保に関する法律(昭和47年法律第113号)第18条第1項、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第47条の8   第1項、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の雇用管理の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)第52条の5第1項及び短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号)第25条第1項の調停の手続について、紛争の当事者を代理すること。

一の五 地方自治法(昭和22年法律第67号)第180条の2の規定に基づく都道府県知事の委任を受けて都道府県労働委員会が行う個別労働関係紛争(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第1条に規定する個別労働関係紛争(労働関係調整法(昭和21年法律第215号)第6条に規定する労働争議に当たる紛争及び行政執行法人の労働関係に関する法律(昭和23年法律第257号)第26条第1項に規定する紛争並びに労働者の募集及び採用に関する事項ついての紛争を除く。)をいう。以下単に「個別労働関係紛争」という。)に関するあっせんの手続について、紛争の当事者を代理すること。

一の六 個別労働関係紛争(紛争の目的の価額が120万円を超える場合には、弁護士が同一の依頼者から受任しているものに限る。)に関する民事紛争解決手続(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成16年法律第151号)第2条第1号に規定する民間紛争解決手続をいう。以下この条において同じ。)であって、個別労働関係紛争の民間紛争解決手続の業務を公正かつ適確に行うことができると認められる団体として厚生労働大臣が指定するものが行うものについて、紛争の当事者を代理すること。

二 労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類(その作成に代えて電磁的記録を作成する場合における電磁的記録を含み、申請書等を除く。)を作成すること。

三 事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること。

2 前項第1号の4から第1号の6までに掲げる業務(以下「紛争解決手続代理業務」という。)は、紛争解決代理業務試験に合格し、かつ、第14条の11の3第1項の規定による付記を受けた社会保険労務士(以下「特定社会保険労務士」という。)に限り、行うことができる。

3 紛争解決手続代理業務には、次に掲げる事項が含まれる。

一 第1項第1号の4のあっせん手続及び調停の手続、同項第1号の5のあっせんの手続並びに同項第1号の6の厚生労働大臣が指定する団体が行う民間紛争解決手続(以下この項において「紛争解決手続」という。)について相談に応ずること。

二 紛争解決手続の開始から終了に至るまでの和解の交渉を行うこと。

三 紛争解決手続により成立した和解における合意を内容とする契約を締結すること。

4 第1項各号に掲げる事務には、その事務を行うことが他の法律において制限されている事務並びに労働社会保険諸法令に基づく療養の給付及びこれに相当する給付の費用についてこれらの給付を担当する者のなす請求に関する事務は含まれない。

(注)他の法律において制限されている事務の代表例は、弁護士法第72条(後記)です。

(非社会保険労務士との提携の禁止)

第23条の2 社会保険労務士は、第26条又は第27条の規定に違反する者から事件のあっせんを受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。

(名称の使用制限)

第26条 社会保険労務士でない者は、社会保険労務士又はこれに類似する名称を用いてはならない。

2 社会保険労務士法人でない者は、社会保険労務士法人又はこれに類似する名称を用いてはならない。

3 社会保険労務士会又は連合会でない団体は、社会保険労務士会若しくは全国社会保険労務士会連合会又はこれらに類似する名称を用いてはならない。

(業務の制限)

第27条 社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務を業として行ってはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び政令で定める業務に付随して行う場合は、この限りでない。

(注)「3号業務」が禁止対象になっていないです。

弁護士法

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)

第72条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

(注)「非弁活動になりますか?」という質問が数回第2問で出題されています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?