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特定社会保険労務士試験第2回過去問の解説(その3)

 第1問の解説だけで(その3)まで来ました。前回の(注)についても書きます。分らなくなったら、基本書で調べたり、前の記事を遡って読んだりして、しっかり理解してください。

 前回も書きましたが、第1問の勉強は、格闘技の訓練ぐらいに思って、頭を切り換えて臨んでください。

 小問(3)では、解雇をした使用者であるY社の立場に立って、Y社の代理人として、Xについての①新賃金・新人事制度等の企画導入の件、②通勤手当の件の2つが、Y社就業規則の「勤務態度、業務能力、勤務成績等が劣悪で改善なく、従業員として不適格なとき」という規定に基づく解雇事由として妥当(適切)ですか?と聞かれているのだろうと思いますが、実際の問題文では「解雇事由としてどのように考えますか」となっていて、何か、微妙に回答の幅があるように読めるのは、どうもスッキリしていません。

 さて、小問(3)の出題の趣旨および配点は、次のとおりです。

〔出題の趣旨〕 Y社の代理人の立場に立って、本件設例における解雇事由に関し、①新賃金・新人事制度等の企画導入の件、②通勤手当の件について、Xに対する解雇事由として、この各事実に関して就業規則に定める解雇事由との関係でそれぞれどのように取り扱うべきかについて、Y社の代理人としての視点からの理解及び主張すべき内容に関して問うもの。

〔配点〕20点(①、②について各10点)

 ポイントの箇所を私が太字にしました。「どのように取り扱うべきか」とは、また、曖昧な物言いで、どういう風に回答して欲しいのかがよく分りません。こういう事実があって、解雇事由に当てはまる、または当てはまらない、と書けば回答になるのかなと考えて話を進めます。

 Y社の代理人としては、①②ともに就業規則に定める解雇事由「勤務態度、業務能力、勤務成績等が劣悪で改善なく、従業員として不適格なとき」のどこかに該当して、解雇は適法と書くことを求められていると思います(よっぽどコジツケの屁理屈でない限り)ので、そのように理由と結論を簡潔に書くと、次のようになります。

①    新賃金・新人事制度の企画導入に失敗し、コンサルタント会社に外部委託して完成させて実施が遅れたという事実は、そのような企画導入をする能力があると見込んで幹部社員としての部長職として好待遇で中途採用してきたXとの労働契約の本旨に反し「業務能力が劣悪」か「勤務成績等が劣悪」のいずれかまたは両方に該当し、結果として「従業員として不適格なとき」にも該当することになるので、解雇は有効である。

②    Xが入社以来1年半という長期にわたって、居住地を偽ることによって通勤手当を実際よりも高く請求することで、毎月1万5千円、合計27万円の金員をY社から不正に取得していたことは、労働契約上の信義則に反するとともに、詐欺または横領にも該当しうるので「勤務態度が劣悪で改善なく」「従業員として不適格なとき」に該当し、解雇は有効である。

 ここで、会社への不正請求ならば詐欺(法律学小辞典5参照)、会社の金銭の不正使用なら横領(同辞典参照)となる訳ですが、本問は、懲戒を問う問題ではないので、懲戒事由等については、管野労働法P700-718「第2款 懲戒」とP76-90「第3章 懲戒」を読んで、知識を広げておいてください。


 小問(4)は、Xの代理人として、本件事案について紛争の解決を図るとした場合、どのような解決が妥当か?と問われています。出題の趣旨は次のとおりです。

〔出題の趣旨〕  本設例についてXの代理人である特定社会保険労務士としてXの立場で本件紛争の解決を図るとした場合、実際上どのような方向に向けて具体的に解決の方向の努力することが妥当と考えられるかについて、その解決策と留意事項を問うもの。

 私が太字にした箇所が回答のポイントとなる訳ですが、話の落としどころを探るには、当然、この紛争の勝ち負け(どちらがどの程度有利か?)の判断が要ります。しかし、本問では、そこは問われていません。一方、最近の試験では、ここが問われます。

 例えば、第16回(令和2年度)第1問小問(4)の出題の趣旨は次のように書かれています。

〔出題の趣旨〕 本件事案について、双方の主張事実や本件事案の内容等を踏まえて本件試用期間満了による本採用拒否の解雇の効力について考察し、その法的判断の見通し・内容について250字以内での記載を求める出題である。解答にあたっては、本件が試用期間中の解雇であることから、試用期間満了時の解雇は通常解雇とは異なるのでその法的意義内容に言及し、その上でX、Y社の主張事実の内容、Xの従業員としての不適格性の立証はY社が行うべきであることから、本件主張関係を考察して、客観的合理性と社会通念上の相当性についての判断考察内容の記載を求めるものである。

 ポイントは私が太字にした箇所です。次に第16回(令和2年度)第1問小問(5)の出題の趣旨を載せます。

〔出題の趣旨〕 本件事案について、Xの代理人である特定社会保険労務士として、本件「あっせん手続」において、小問(4)の「法的判断の見通し・内容」を踏まえ、Y社側の主張事実も考慮し、妥当な現実的解決を図るとした場合、どのような内容の提案をするかについて250字以内で記載を求める出題である。本問の解答にあたっては、小問(4)で考察した法的判断をもとにして和解解決を図るとした場合にどのような提案が、Xとして双方の主張や事実関係からみて現実的で妥当なものであるかについて、Xの立場として考えられる提案内容の記載を求めるものである。

 第16回第1問小問(4)では、次の小問(5)で話の落としどころを書かせる前に、申請者と相手方の主張事実の内容を検討して、最終的な法的判断の見通しとその内容を書かせるというワン・ステップのための小問を入れています。

 何を言いたかったかと言うと、第2回第1問小問(4)では、直接書くことは要求されていませんが、やはり、話の落としどころを書く前提として、最終的な法的判断の見通しが必要だったのではないか?それがあってこそのXの代理人としての(Y社も受け入れやすい)妥当な解決策の提案ではないか?と考えるわけです。

 本第1問は、XはY社が期待したほど(銀行員を見込んで好待遇の部長職で採用)の成果を上げられなかったのだが、Y社も新人事制度等構築のためのXに対する指導・支援が不十分だったし、Xを雇った目的として将来の取締役候補というのもあってこれに失格と言うほどのこともなかった(通勤手当の不正請求の件もXによる反論の余地はある)のだから、百歩譲って、仮に客観的に合理的な理由があったと認めたとしても、解雇することが社会通念上相当とまでは言えないと判断し、最終的にはY社による解雇権濫用で、解雇は無効になるのではないかというのが、私の見立て(法的判断の見通し)です。

 そうすると、話の落としどころとしては、①Y社への復職、②解雇とされていた期間に対応する賃金およびボーナスの支払をXが求めることができるとしても、Y社が被った金銭に限らない損害およびXのY社内における今後の立ち位置等を考えると、③Xの職種の変更、地位の降格、賃金の減額等によって、Xも譲歩したという形を残すことが必要であると考えます。次の小問(5)の問題文が、この落としどころを暗示しているのかなとは思いますが、小問(4)の回答に「Xを課長に降格して年俸を8百万円から5百万円に減額することが相当」とまで書いてしまうと、「自分の頭で考えたのか?」と採点者(出題者)に疑われそうなので、そこは自分の言葉で書くように心掛けてください。


 余談ですが、昔(バブル前まで)は、新卒で就職すると中高年の終身雇用の女子社員がたくさん会社におられて(寿退社しなかった人たち)、各職場でお局様と呼ばれていたり、その上に春日局様みたいな人が君臨していて、会長・社長・役員にも睨みをきかせていた会社がたくさんありました。新入社員としては、少なくともこのお局様ネットワークに嫌われないようにするのが一苦労でした。また、各職場に古手のたたき上げの人たち(当然、正社員の終身雇用)がいて、部長や課長も彼らに頭があがらないというのもあり、新入社員はいつも鬼軍曹に鍛えられて一人前に育っていきました(一部、反発する新入社員もいました。))。パワハラは当たり前でした(怒鳴る、説教する、書類や鉛筆を投げる、机をたたくなど)が、会長→社長→役員→部長→課長→係長→平社員と順番に怒られるので、(誰かが特定の誰かをいじめるようなことではなく)ある意味、相身互いでした(よく、上から叱られてションボリしている管理職を見ました。)。

 高度成長期の日本映画では、東宝の、森繁久弥が社長役を演じた「社長シリーズ」というのが流行って、毎日、接待やら交際費での飲食、個室に社用車を用意される役得てんこ盛りの重役にあこがれました。一方、植木等主演のサラリーマンシリーズという映画も流行って、下から頑張れば、いつかは俺も重役になって役得を満喫するぞと言ってみたり、出世しなくてもそれなりに気楽で楽しいサラリーマン生活と言ってみたりもして、今、考えると牧歌的でした。今は、大企業の役員(重役という言葉は死語?)になっても、メチャメチャ働かされて、「役損だ!」と言っていた人もいます。

 バブル経済からその崩壊後にかけては、松竹の「釣りバカ日誌」が日本の企業社会を斜めから見て皮肉ってましたね。釣りバカかつ家族思いサラリーマン(高度成長期のエコノミックアニマルとは正反対)の浜ちゃんが、(人生至る所に青山ありで)幸せそうにサラリーマン生活を満喫していた一方、鈴木建設社長のスーさんは、会社ではいつも機嫌が悪くて、ワンマン社長のパワハラ親父丸出しなのに、(自社の平社員の)浜ちゃん家族との交流+(仕事人間が)釣りという趣味の発見で人間味を取り戻すという設定は、ちょっとあり得ない話でしたが、少し癒やされました。

 「不適切にもほどがある」というTVドラマで、1986年というバブル時代が描かれていましたが、あの狂ったような時代を知らない受験生も多いのでしょう。ちなみに、主人公の小川一郎は昭和10年生まれの設定ですから、私の親の世代です。バブル時代私は、ちょうど20歳代でした(だから何なのよ?)。

 昔が良かったとは言いません(今から見れば不適切なことが多かったですが。)。確かに、現代の方が働くことは、より大変(難しい)ですが、昔も大変だった(よく生き残った)と思います。ついでに、AIの進歩は、便利な一方、仕事を奪われるかもしれない脅威なのだろうな、と漠然と考える、今日、この頃です。

 小問(5)は、Y社がXを解雇の代わりに、課長に降格して、年俸500万円程度で雇用を維持するとした場合に、Xの同意が要るか?と(結論とその理由を)問うています。Xにとっては、解雇されるよりはマシですが、部長から課長に降格されて、年俸も800万円から500万円に減額される訳ですから、そんなことを一方的にされたら困ると言うことは明らかです。ここで、ちょっと気になるのは、出題の趣旨の私が太字にした箇所です。

〔出題の趣旨〕 本設例について、Y社としてXを解雇するのではなく経営企画部長から課長に降格して、課長としての年俸で雇用を維持するとした場合のXの同意の有無について、地位等を特定した雇用に関し解雇回避措置、不利益変更等についての総合的な法的理解を問うもの。

 本当は解雇したいのだけれど、解雇権濫用と言われるのが嫌だから、(解雇回避措置として)期待した成果の未達、部長としての能力不足等を理由として、降格・賃金減額で妥協するか、とY社からXに提案してみたら(解雇回避措置だから)Xの同意なしに認められるものか?とY社の頭の良い人(または、顧問社労士)が考えたという設定でしょうか。

 当時のベテラン社労士なら、幅広い知識と経験に基づいて、「使用者による労働条件の一方的な引き下げは労働条件の不利益変更だから出来ないし、解雇回避の努力義務があるのは整理解雇のときだけだから、労働者側の成果や能力を問題にして普通解雇をすることを回避する代替措置だからといって、労働条件の不利益変更となる一方的な引き下げが認められる訳はない。よって、申請者Xの同意は要る。」程度はサラサラと書けて、一応の合格点はもらえたのかな?と推測します。例えば、「Xが地位特定・職務特定の雇用契約をY社と締結していて、それが未達だったら課長への降格があると規定されていたら同意なしにできる」ぐらいが、付加出来たら加点されたかもしれません。

 以上の説明でも、一応の回答と理屈にはなっている訳ですが、「総合的な法的理解を問う」と出題の趣旨に書かれているので、もう少し掘り下げて検討してみます。

 老婆心ながら付け加えておきますと、労働契約法の制定は平成19年12月5日、施行は平成20年3月1日ですから、同法第8条(労働契約の内容の変更)「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」を使って、この反対解釈から「同意がなければ変更できない。」という根拠付けをして回答を導くと言う手法は、(平成18年の第2回当時)できなかったということを記憶しておいてください(今なら、同法8条に触れないと減点でしょう。)。

 第2回第1問に関する小問(4)までの検討は、解雇権濫用法理の論点でしたが、ここでは、「使用者による一方的な①賃金の減額を伴う②降格は可能か?」という論点が問われています。しかも、「これが解雇回避措置だったら、使用者側の③正当性の補強材料になるのか?」という論点を関連させています。ここで触れておきますが、「使用者による一方的な①    賃金の減額を伴う②降格は可能か?」が違法で出来ないというのなら、当然、解雇回避措置としてこれをY社がXに対して、解雇の前に提案(強制)すると言うことは出来なくなるので、正当性の補強材料となることはないとなりますので、①②の検討の結果、③は検討するに値しなくなります。

 例えば、部長や課長という呼称がポジション(管理職としての職制)を表す場合と部長職が1級、次長職が2級、課長職が3級というタイトル(職能資格上の能力の格付け)を表す場合があるとします。前者の部長→課長は使用者の人事権の範囲内だし、後者の部長職→課長職は、(能力が下がったという曖昧な理由に基づく)賃金という労働条件の不利益変更となって労働者の同意が要るとかいう分析的議論をここでしておきたいので、菅野労働法P721-727「第2款 昇進・昇格降格」を読んで少し幅広に勉強してください。労働契約法8条(労働契約の内容の変更)・9条(就業規則による労働契約の内容の変更)だけでなく、労働協約による変更の場合も含めて、労働条件の不利益変更の論点についても、併せて勉強してください(第16回(令和2年度)の能力担保研修のビデオで、石嵜信憲弁護士が手厚く説明していました。)。

 それぞれの論点について、管野労働法P427-441「4.賃金制度をめぐる諸問題」に賃金の面から、上述の「第2款 昇進・昇格・降格」に人事制度の面から書かれています。労働法学者は、研究対象が大企業と労働組合制度に興味関心が向いているのかなと読んでいて感じました。分析・検討は精緻です。この際、解雇に次ぐ重要論点である労働条件(賃金、昇格・降格等)の不利益変更について、勉強してください。

 以上、やっと、第2回第1問の解説が全部終わりました。

 次回(その4)で、第2回第2問(倫理事例問題)を1回の記事で書き上げる予定です。

追伸ー1

 前回(その2)で(注)にしておいた「就業規則の解雇事由に該当しないと解雇できない(解雇無効)なのか」について検討します。

 答えは、安西本P965-P968「四 解雇はどのような要件をみたせば有効か」に詳しく書かれています。その一部を引用します。

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なお、このような就業規則や労働協約のない場合、またはあっても解雇事由の定めに該当しない場合にも、もともと民法上は、「解雇の自由」の建前がとられているので「やむを得ない事由」があれば当然解雇ができるとする例示列挙説と、もともと自由なところを労働者保護のため就業規則の必要記載事項を定めたのであるから就業規則の解雇事由に該当しない解雇は無効とする限定列挙説がある。政府の見解は、「平成15.4.18付内閣総理大臣より衆議院議長宛の質問主意書に対する答弁書」において「第89条第3号は、就業規則に記載された『解雇の事由』以外の事由によって使用者がその使用する労働者を解雇することを制限するという法律効果を有する条文ではないと解している。したがって、お尋ねの場合の解雇の効力については、第18条の2の規定(筆者注。現行の労働契約法第16条)に基づいて判断されることになる。」「第78条第3号は、就業規則において『解雇の事由』を記載することを義務付けるものであるが、当該就業規則に使用者がどのような『解雇の事由』を記載かまでを定めたものではなく、また、当該就業規則に記載された『解雇の事由』以外の事由によって使用者がその使用する労働者を解雇することを制限するという法律効果を有する条文ではないと解している。

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 私がここで言いたいことは2点あって、①行政法規の規制がそのまま民法上の権利義務を制限する基準になるのではないということと、②法律の勉強は、条文の解釈を徹底的に掘り下げて理解する必要があることです。

 前者①の例として、道路交通法違反のスピード違反や飲酒運転で交通事故を起こした時の損害賠償額は民法の不法行為責任に基づいて、故意過失の有無や両当事者の過失割合などで決められるのであって、道路交通法違反があったから加害者が全責任を負って、請求された損害賠償金を支払わされるわけではないということは、社会常識としてご存じですよね。

 後者②の例として、第19回第2問で問われた「双方代理の論点」で、ろくに条文も読まずに、双方代理は民法で禁止されていると判断したり、当事者の同意があれば双方代理が出来るということを知らずに、「同意がある」ことを見落として的外れな解答をしたりした受験生がいたことをあげることができると思います。

 特定社会保険労務士試験は、社会保険労務士試験で勉強した労働社会保険諸法令のように、法律・政省令・告示・通知・行政解釈などを丸暗記すれば回答できる試験ではなく、きちんと法解釈学を勉強しなければならない試験だということを君に銘じておいてください。


追伸ー2

 この試験の第1問のテーマとしては、解雇がメインで、時間外手当の未払やハラスメントの損害賠償など労働者が虐げられている話が多いのですが、最近よく聞くのは、人の採用がうまくいかないとか、募集をかけても時給を大幅に上げないと人が集まらないとかといった、使用者側が困っている(労働者優位)という話です。何か、大きな流れが変わっているのではないか?と考えて、調べて読んだ本2冊が、私の余生と孫たちの将来に大変参考になるなと思ったので、紹介しておきます。この潮目の変化が、いきなり第20回の試験に反映するとは思いませんが、読者の皆さんの将来設計には役立だろうと考えています。

 まずは、リンダ・グラッドストン/アンドリュー・スコット著「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」東洋経済新報社です。2000年代に入って生まれた子供の半数は100歳まで生きるから、人生設計の在り方が、私たちの世代とは全く変わる(こうなる)という問題提起がショックでした。私と同年代の人は、ぎりぎり逃げ切れたと考えることもできました。仮に、今、65歳の私でも90歳まで生きるとしたら、お金や住居の点を含めて余生の送り方を再検討しなければならないなと考えています。100年生きる人生設計(公的年金が全然足りなくなる、引退年齢が80歳ぐらいになるなどの対策)を若い時にするというのは、かなり面倒な(難しい)話だなと考えています。

 2冊目は、古谷星斗+リクルートワークス研究所著「『働き手不足 1100万人』の衝撃」プレジデント社です。少子高齢化とか、人口減少社会とか、消滅地方自治体とかいう言葉はよく聞きますが、日本の総人口が減りだすということは、特に労働力人口の減少が顕著で、殊にエッセンシャル・ワーカーと呼ばれる労働者の不足が急激で、地方を中心に生活インフラの維持が困難になり、先端産業の復活とか政府が言っていることどころではなく、危機が目の前に迫っているという話がショックでした。ここで言っている「働き手不足」とは、バブル時代の(使用者側の需要が拡大して人手不足になっていた)人手不足対策として、労働者のレベルを下げて大量に採用して(今の50歳代後半は仕事ができないで足手まといになって)失敗したというのとは色合いが違って、景気が悪くて使用者側の需要が増えている訳ではないのに、働き手の供給量が減って来て、社会のあちこちで、エッセンシャル・ワーカーが足りなくなりつつあるということです。

 これら2冊を読むと、気が重くなりますが、第1問の解答を書くときに、「労働者は弱いもの」というステレオタイプの色眼鏡で見なくなるというメリットと、自分(と家族)の人生設計を考え直すキッカケになるというメリットがあると思います。


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