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練習問題をやってみましょう(回答)。


 ここまでの説明を踏まえて、(再受験の人達には易しいでしょうが)少し練習問題をやってみましょう。説明してない論点も若干含まれています(ややこしいのは省いています。)。今回は回答を書いておきます。私の説明や基本書の何を見ても構いませんが、まず自分で考えて調べてみて、答案作成後に自己点検してください。回答部分は太字にしてあります。
 
目    次

Ⅰ.第1問(労働紛争事例問題)
1.小問(1)「求めるあっせんの内容」の解答の書き方の練習
①     解雇無効のケース
②   出向命令が無効のケース
③     パワハラ被害の損害賠償請求をするケース
④   パワハラが原因で辞職に追い込まれたが復職を請求するケース
⑤   未払の残業手当を在職中に請求するケース
⑥   未払の残業手当を退職後に請求するケース
2.規範の要件を確かめる問題
①   有効な解雇の公式を書きなさい。
②   普通解雇
③   整理解雇
④   試用期間
⑤   雇止め
Ⅱ. 第2問(倫理事例問題)                     
1.     条文の理解度を確かめる問題                
2.     利益相反・守秘義務違反の判断の練習            
 
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Ⅰ. 第1問(労働紛争事例問題)
1. 小問(1)「求めるあっせんの内容」の解答の書き方の練習
①   解雇無効のケース
A.  無効な解雇をされた後に未払となっている賃金を請求する場合
Xは、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認することを求める。
(注)「Y社はXに対し、・・・・・を確認すること。」という書き方もあります。
B.  無効な解雇をされた後に未払となっている賃金を請求する場合
ア Xは、Y社に対し、令和5年9月から毎月25日限り金30万円を支払うことおよびこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払うことを求める。
イ Xは、Y社に対し、令和5年9月20日限り金20万円および同年10月から毎月20日限り金20万円を支払うことを求める。
(注)「Y社はXに対し・・・・・を支払え。」という書き方もあります。
②  出向命令が無効のケース
Xは、Y社に対し、Zに勤務する労働契約上の義務がないことを確認することを求める。
(注)「Y社はXに対し、・・・・・を確認すること。」という書き方もあります。
③ パワハラ被害の損害賠償請求をするケース
Xは、Y社に対し、(不法行為の損害賠償金として)金××円を支払うことを求める。
(注)「Y社はXに対し・・・・・を支払え。」という書き方もあります。
④ パワハラが原因で辞職に追い込まれたが復職を請求するケース
Xは、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認することを求める。
(注)「Y社はXに対し、・・・・・を確認すること。」という書き方もあります。原因が何であれ、復職を求めるならこの書き方になります。
⑤ 未払の残業手当を在職中に請求するケース
Xは、Y社に対し、(令和5年12月分の未払時間外手当)¥金6万円を支払うことを求める。
(注)「Y社はXに対し・・・・・を支払え。」という書き方もあります。
⑥ 未払の残業手当を退職後に請求するケース
Xは、Y社に対し、(令和4年12月分の未払時間外手当)金6万円およびこれに対する令和5年1月21日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払うことを求める。
(注)「Y社はXに対し・・・・・を支払え。」という書き方もあります。
 
2.規範の要件を確かめる問題
① 有効な解雇の公式を書きなさい。
  有効な解雇 = 原則として就業規則概要の事由(政府見解や判例は例示列挙説・懲戒解雇は限定列挙 + 就業規則に定める解雇手続の履行(社内規定等に定めがある場合)+ 労基法の解雇予告手当の履行(予告除外認定を含む。)+ 法律上の解雇禁止(法定禁止事由)に不該当 + 解雇を相当とする理由(総合的な判断)(客観的な合理性と社会通念上の相当性【解雇権濫用法理】)
② 普通解雇
A.   勤務態度不良による解雇の妥当性の判断要素を2つ書きなさい。
1.問題行動の反復・継続性
2.使用者側の注意・指導の有無
B. 職務能力不足による解雇の要素を4つ書きなさい。
1.就業規則に解雇事由の具体的な記載があって、それに該当すること。
2.単に能力が他の従業員と比べて劣っているということだけではなく、その程度が著しいため、改善の見込みがないと認められること。
3.会社の統制上または営業面で看過できないほど広範囲かつ深刻なものであること。
4.当該従業員を他の業務に配置転換するなどの方法によっても回避しがたい状況に陥っていること
③ 整理解雇
A. 整理解雇の4要素を書きなさい。
  1.人員整理の必要性
  2.解雇回避の努力
  3.対象者の選定の合理性
  4.整理手続の妥当性
④ 試用期間
A.  最高裁は、試用期間の法的性格について、
解雇権留保付労働契約説」を採用しています。
B.  使用期間中には広い解約権が留保されているとは言え、それが恣意的に行われて、解雇が濫用とされないように、「客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認され得る場合にのみ許される」ものでなければならない。
⑤ 雇止め
A. 次の2つの場合には、「解雇権濫用法理」が適用されるか、または類推適用されて、雇止めは無効となる。
ア 期間の定めのない労働契約と実質的に異ならない状態にあると認められる場合 
イ 上記アには該当しないが、労働者が期間満了後の雇用の継続を期待することにつき合理性が認められる場合 
B. 裁判例で示された雇止めの判断要素を5つ書きなさい。
   ア 業務の客観的内容
   イ 契約上の地位の性格
   ウ 当事者の主観的態様
   エ 更新の手続の実態
   オ 他の労働者の更新状況
(注)実際には、雇止め手当などの代償措置も考慮されます。
Ⅱ. 第2問(倫理事例問題)
1.条文の理解度を確かめる問題
  次に掲げた法令の条項の空欄を埋めなさい。
(業務を行い得ない事件)****************************
第22条 社会保険労務士は、国又は地方公共団体の公務員として職務上取り扱った事件及  
 び仲裁手続により仲裁人として取り扱った事件については、その業務を行ってはならない。
2 特定社会保険労務士は、次に掲げる事件については、紛争解決手続代理業務を行ってはならない。ただし、第号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
1.      紛争解決手続代理業務に関するものとして、相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼承諾した事件
2.      紛争解決手続代理業務に関するものとして相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法信頼関係に基づくと認められるもの
3.      紛争解決手続代理業務に関するものとして受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
4.      開業社会保険労務士の使用人である社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員若しくは使用人である社会保険労務士としてその業務に従事していた期間内に、その開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人が、紛争解決手続代理業務に関するものとして、相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件であって、自らこれに関与したもの
5.      開業社会保険労務士の使用人である社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員若しくは使用人である社会保険労務士としてその業務に従事していた期間内に、その開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人が紛争解決代理業務に関するものとして相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるものであって、自らこれに関与したもの
(用語の解説)
・  「相手方」―――――――外形的に紛争があるように見えても、当事者間に実質的な争いがない場合は、相手方にあたらない。
・  「協議を受けて」とは、具体的事件の内容について、法律的な解釈や解決を求める相談を受けることをいう。したがって、単に話を聞いただけであるとか、立ち話や雑談の域を出ないものであって、法律的な解決にまでは踏み込まないものについては、ここでいう「協議を受けて」にはあたらない。
・  「賛助」とは、協議を受けた具体的事件について、相談者が希望するような解決を図るために助言することをいう。内容としては、相談者に対して事件に関する見解を述べたり、とるべき法律的手段等を教えることである。したがって、相談者の希望しない反対の意見を述べた場合等には、ここにいう賛助にあたらない。
(秘密を守る義務)******************************
第21条 開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員は、正当な理由がなくて、その業務に関して知り得た秘密を他人に漏らし、又は盗用してはならない。開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員でなくなったにおいても、また同様とする。
(社会保険労務士の職責)―――――――公正誠実義務************
第1条の2 開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない。
(信用失墜行為の禁止)*****************************
第16条 社会保険労務士は、社会保険労務士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。
(依頼に応ずる義務)******************************
第20条 開業社会保険労務士は、正当な理由がある場合でなければ、依頼(紛争解決手続代理業務に関するものを除く。)を拒んではならない。
(社会保険労務士の業務)****************************
第2条 社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。
1.      別表第1に掲げる労働及び社会保険に関する法令(以下「労働社会保険諸法令」という。)に基づいて申請書等(行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、異議申立書、再審査請求書その他の書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識できない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。)をいう。以下同じ。)を作成すること。
1の2 申請書等について、その提出に関する手続を代わってすること。
1の3 労働社会保険諸法令に基づく申請、届出、報告、審査請求、異議申立て、再審査請求書その他事項(厚生労働省令で定めるものに限る。この号において「申請等」という。)について、又は当該申請等に係る行政機関等の調査若しくは処分に関し当該行政機関等に対してする主張若しくは陳述(厚生労働省令で定めるものを除く。)について、代理すること(第25条の2第1項において「事務代理」という。)。
1の4.個別労働紛争の解決に関する法律(平成13年法律第112号)第6条第1項の紛争調整委員会における同法第5条第1項のあっせんの手続並びに雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保に関する法律(昭和47年法律第113号)第18条第1項、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の雇用管理の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)第52条の5第1項及び短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号)第22条第1項の 調停の手続について、紛争の当事者代理すること。
1の5.地方自治法(昭和22年法律第67号)第180条の2の規定に基づく都道府県知事の委任を受けて都道府県労働委員会が行う個別労働関係紛争(個別労働紛争の解決の促進に関する法律第1条に規定する個別労働関係紛争(労働関係調整法(昭和23年法律第257号)第6条に規定する労働争議に当たる紛争及び特定独立行政法人等の労働関係に関する法律(昭和23年法律第257号)第26条第1項に規定する紛争並びに労働者の募集及び採用についての紛争を除く。)をいう。以下単に「個別労働関係紛争」という。)に関するあっせんの手続について、紛争の当事者代理すること。
1の6.個別労働関係紛争(紛争の目的の価額が民事訴訟法(平成8年法律第109号)第368条第1項に定める額を超える場合には、弁護士が同一の依頼者から受任しているものに限る。)に関する民事紛争解決手続(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成16年法律第151号)第2条第1号に規定する民間紛争解決手続をいう。以下この条において同じ。)であって、個別労働関係紛争の手続の業務を公正かつ的確に行うことができると認められる団体として厚生労働大臣が指定するものが行うものについて、紛争の当事者代理すること。
2. 労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類(その作成に代えて電磁的記録を作成する場合における電磁的記録を含み、申請書等を除く。)を作成すること。
3.事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること。
2 前項第1号の4から第1号の6までに掲げる業務(以下「紛争解決手続代理業務」という。)は、紛争解決代理業務試験に合格し、かつ、第14条の11の3第1項の規定による付記を受けた社会保険労務士(以下「特定社会保険労務士」という。)に限り、行うことができる。
3 紛争解決手続代理業務には、次に掲げる事項が含まれる。
1.第1項第1号の4のあっせん手続及び調停の手続、同項第1号の5のっせんの手続並びに同項第1号の6の厚生労働大臣が指定する団体が行う民間紛争解決手続(以下この項において「紛争解決手続」という。)について相談に応ずること。
2.  紛争解決手続の開始から終了に至るまでの和解の交渉を行うこと。
3. 紛争解決手続により成立した和解における合意を内容とする契約締結すること。
4 第1項各号に掲げる事務には、その事務を行うことが他の法律において制限されている事務並びに労働社会保険法令に基づく療養の給付及びこれに相当する給付の費用についてこれらの給付を担当する者のなす請求に関する事務は含まれない。
(注)他の法律において制限されている事務の代表例は、弁護士法第72条である。
(非社会保険労務士との提携の禁止)**********************
第23条の2 社会保険労務士は、第26条又は第27条の規定に違反する者から事件のあっせん、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。
(名称の使用制限)*******************************
第26条 社会保険労務士でない者は、社会保険労務士又はこれに類似する名称を用いてはならない。
2 社会保険労務士法人でない者は、社会保険労務士法人又はこれに類する名称を用いてはならない。
3 社会保険労務士会又は連合会でない団体は、社会保険労務士会若しくは全国社会保険労務士会連合会又はこれらに類似する名称を用いてはならない。
(業務の制限)*********************************
第27条 社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第2条第項第号から第2号までに掲げる事務を業として行ってはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び政令で定める業務に付随して行う場合は、この限りでない。
弁護士法***********************************
非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第72条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定め      がある場合は、この限りでない。

2.利益相反・守秘義務違反の判断の練習 
  
① 過去にB社に対する個別労働紛争に関するあっせんの代理を特定社会保険労務士甲に依頼し、あっせん手続によりB社から100万円の損害賠償金を受領した労働者Aが、別の請求原因で新しい勤務先C社を相手方とするあっせんの申請の代理人を甲に依頼してきました。 
まず、登場人物の特徴、役割・他社との関係などを整理してから続く質問に回答してください。
B社:過去に労働者Aからあっせんを申し立てられて、損害賠償金を支払った。
A:過去にB社を相手にあっせんを申し立てて、損害賠償金を受領した。新しい勤務先C社を相手とするあっせんの代理人を甲に依頼した。
C社:現在雇用しているAから、甲を代理人にしてあっせんを申立てられようとしている。
甲:過去にAの代理人としてB社を相手とするあっせんを申し立てて損害賠償金を取得せしめた。Aから現在の雇用主C社を相手方とするあっせんの代理人を頼まれた。
 この場合、誰と誰の間に利益相反関係が生じますか?それとも生じませんか?   
(答え)①A-B社間の利益相反関係は、損害賠償金の支払いで完了したので、現在ではない。②A-C社間は現在利益相反関係にある。③B社―C社間は元々無関係。
  この場合、誰が誰に何を開示すると、誰に対する秘密保持義務の違反を生じますか?
(答え)甲がAの秘密をC社に開示すると守秘義務違反になるが、Aの代理人である甲とC社は接点がないので、そのおそれはない。
  もし、社労士法22条2項が存在しないとしたら、この依頼を受任出来ますか?
(答え)できる。甲は、誰かの利益相反関係に巻き込まれることはなく、守秘義務違反を引き起こすおそれもないから。 
②  過去にB社に対する個別労働紛争に関するあっせんの代理を特定社会保険労務士甲に依頼し、あっせん手続によりB社から100万円の損害賠償金を受領した労働者Aがいました。今、B社が、労働者CからB社を相手方として申請されたあっせん手続の代理人を甲に依頼してきました。まずは、関係者の整理から。
B社:過去に労働者Aから甲を代理人とするあっせんを申し立てられて、損害賠償金を支払った。今回、Cからあっせんを申し立てられた。
A:過去にB社を相手方にあっせんを申し立てて、損害賠償金を受領した。
C:今、B社を相手にあっせんを申し立てた。
甲:過去にAの代理人として、B社を相手方とするあっせんを申し立てて損害賠償金を取得せしめた。労働者Cからあっせんを申し立てられたB社から代理人を依頼された。
  この場合、誰と誰の間に利益相反関係が生じますか?それとも生じませんか?
(答え)①A-B社間の利益相反関係は、損害賠償金の支払いで完了したので、現在はない。②A-C間は、元々無関係。
  この場合、誰が誰に何を開示すると、誰に対する秘密保持義務の違反を生じますか?
(答え)甲がAの秘密を開示すると守秘義務違反になるが、今、Cとの紛争でB社にAの秘密を開示する必要性はないので、守秘義務違反のおそれはない。
  もし、社労士法22条2項が存在しないとしたら、この依頼を受任出来ますか?
(答え)できる。甲は、誰かの利益相反関係に巻き込まれることはなく、守秘義務違反を引き起こすおそれもないから。       
③  B社に対する個別労働紛争に関するあっせんの代理を特定社会保険労務士甲に依頼し、あっせん手続を継続中(未決着)の労働者Aがいました。今、B社が、労働者CからB社を相手方として申請されたあっせん手続の代理人を甲に依頼してきました。
B社:労働者Aからあっせんを申し立てられ、現在、係争中である。
A:雇用主B社を相手方にあっせんを申し立てて、現在、係争中である。
C:今般、雇用主B社を相手方にあっせんを申し立てた。
甲:現在、Aの代理人としてB社を相手方にあっせんをしている。今般、そのB社からCに起こされたあっせんのB社の代理人になって欲しいと頼まれた
    この場合、誰と誰の間に利益相反関係が生じますか?それとも生じませんか?
(答え)①あっせんで争っているA-B社間の利益相反関係は継続して存在している。②A-C間は無関係である。
    この場合、誰が誰に何を開示すると、誰に対する秘密保持義務の違反を生じますか?
(答え)甲がAの秘密を(紛争が続いている)相手方B社に開示すると守秘義務違反になるおそれがある。Cとの紛争の内容が明らかではないので、Aの秘密をB社に開示する必要が生じるかどうか不明であるが、可能性はある。
    社労士法22条2項のいずれかの号に抵触し、受任を妨げられますか?
(答え)社労士法22条2項3号に抵触している。しかし、同法同条同項ただし書に「ただし、第3号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りではない。」と定められているので、労働者Aが同意してくれれば、甲はB社からの依頼を受任できる。
 
追伸
 次回は、最近の過去問第1問(労働紛争事例問題)の構造の分析と攻略方法を、次々回は、同第2問(倫理事例問題)の構造の分析と攻略方法を書きます。いずれも、Wordファイルにすると40ページ前後あります。読むだけでも相当骨が折れます。しかし、今後、個別の過去問の解説を読んで理解して行く際の基礎知識になります。また、これらを読んでから、以前書いた第1回と第2回の過去問の解説を読み返していただくと、より一層理解が深ま
るものと考えています。
 昨年度の塾生と話した時に、過去問を順番に読んでいくよりも、第1問は論点(例えば、整理解雇、錯誤、パワハラなど)別に過去問を材料にしながら解説し、第2問は条項(例えば、社労士法22条2項1号、弁護士法72条など)別に過去問を材料にしながら解説してくれた方が、勉強しやすいし、理解が早いと言われました。そこで、第2問の構造の分析が終わったら、その方針で進めたいと考えております。6月28日は、「錯誤」を予定しています。

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