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統計学を学ぶ前に知っておきたいこと①ratio, rates, proportionの違い

ratio, rates, proportion,これらの違いをはっきりと説明できる人はこのエントリを読む必要はありません。日本語では同じように訳されているこれらの言葉ですが、英語だと明確に分けて使われるため、最初に違いを整理しておきます。

Ratio(比)

Ratioは性別などのカテゴリーが同じ二つの変数を比較するときに使われる 例)男:女

記述の仕方:○○times more likely to ~、○○times less than~など

疫学の代表例:relative risk(リスク比)

relative riskは介入群が非介入群に比べてどれほど起こりやすいかを示すものなので、必ずexposedに対して、比較対象となるunexposed(コントロール群)が必要である。この場合の介入群(exposed)というのは、それが病気の発症率をあげる場合1より大きくなり(1<risk)、下げる場合1より小さい値をとる(1>risk)。下げる場合は予防因子として特定できる。ちなみに1=riskのときは介入に効果がなかったことを示す。relative risk(リスク比)を計算する方法として、risk ratio、odds ratio、incidence rate ratioがあるがこれらについての説明はまた今度にする。

Rates(率)

ratesはカテゴリーが異なる二つの変数を比べるときに使う。      例)人数/期間

記述の仕方:/1000person-years、 /100person-monthsなど

疫学の代表例:Incidence rate(罹患率)

疫学では分析対象は基本的に人なので、罹患率では特定の期間中にどれくらいの人数が病気を発症したか=頻度を量っている。

proportion(割合)

Proportionの場合、分子と分母は同じ属性のものを比較していて、分子は(特定の集団の)一部、分母は(特定の集団の)全体を示す。     例)クラスの男子の数 / クラスの総数

記述の仕方:値は0から1以外はとらない。疫学研究において、多くの場合それは人に対する影響を測っているので、単位は人(人口)であり、より数値をわかりやすくする手段として×100をして%で表すことが多い。

疫学の代表例:prevalence (有病率:本当は”率”では無いが、日本語では”有病率”と訳される)

有病率の定義は「ある一時点(過去)において、特定の人口のどれくらいの人数が疾患にかかっているか」なので、ここに特定の期間は含まれていない。つまり分子と分母が同じ属性なのでratesじゃなく、proportionで表す。


 以上が言葉が混乱を招いているratio, rates, proportionの違いですが、数学界ではこれらの違いについての共通した見解はまだ得られていないようです。まあ細かいことは置いといて、とりあえずこの3つの違いを押さえておくと、この後出てくるrelative risk、risk ratioとかincidence rate ratioとか言う紛らわしい言葉達に惑わされなくて済むかと(自分はものすごく惑わされた)。例えばincidence rate ratioという言葉を見た時、これは率(rates)同士の割り算で比(ratio)をとったものなのだな、とイメージできるので、何を求めようとしているのかわかりやすくなります。

参考)『Introduction to Epidemiology [second edition]』(Open University Press)

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