FDDの基本動作_未経験者に向けて

初めに

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 FDD(バイサイド)にアサインされた未経験者や経験の浅いスタッフに対して伝えたこと感じたことをまとめたもの。かなり個人的な趣味趣向が入っていますが、誰かの参考になればと思い書いています。

FDDにアサインされたら

 アサインが決まったら最低限行うべき基本動作は存在します。以下は私がスタッフ時代に気をつけていた事項の一部です。

案件概要の確認

 まずは案件概要の確認。確認する内容は、対象会社の概要(業種、規模、展開地域、子会社等の有無、組織図、役員構成等)、買い手の属性(上場企業?投資ファンド?)やM&A経験量、売り手の属性、ストラクチャー(特にカーブアウトか否か)、案件規模、SPA締結予定時期/クロージング予定時期、オークション/相対取引、マジョリティ取得/マイノリティ投資、FDD以外で実施されるDDの有無、FAや仲介会社の関与等。概ねIMにまとまっているが、ないものは開示資料を見たり、プロマネ等に確認する。
 上記以外にも色々とあるが、そういった事項を確認しながら本件における想定論点を考えてみる。難しいかもしれないが、これをやるやらないで成長が全く違う。自分で考えてみたらプロマネにぶつけてみる。そしてプロマネの考える論点との差がなぜ生まれたのかを把握して次に活かす。この繰り返しで案件に対する「感度」が上がる。
 たまに参考レポートを要求し、ともすれば同じスライドを作れば終わりと考えているのでは?と思われるスタッフもいるが、そんなことは決してない。確かに確認する分野は似通っているが、案件によって必要なスライド、まとめ方は全然違う。同じような論点でも全く同じものを作ればOKというのは基本的にない。どのような箇所が論点になり、それはどういった形でとりまとめられれいるか?は確認するが、それ以上はない。あまり参考レポートに引っ張られることなく、新鮮な目線で各案件での必要なレポートの内容を考えてみていただきたい。

期限の確認

 どの仕事でもいつまでに何を出すか、は通常決まってる。決まっていないコンサル案件等は炎上しがち。単に中間報告会はいつだっけ?にとどまらず、そこから逆算して自身の作業に落としていく。パートナーレビューやプロマネのレビューはいつ?レポートのファーストドラフトはいつまでに上げるべき?自身のレポート作成時間を踏まえると、必要なQA回答の回収期限はいつか?回収期限の目安からすると、いつまでに必要なQAを入れないといけないか?そう考えるとFDD期間はタイトと感じるはず。決まってないのであれば、早く決めろとプロマネやパートナーに進言すべき。コンサルティング案件等では、自分からクライアントと報告会の日程を握りに行くような場合もあるが、FDDに限ってはあまりお勧めしない。関与者も多く、自身が知らない情報もあるので、上位者のケツを叩くにとどめておくのが無難。
 QAスタートから中間報告まで4週間くらいの案件では、感覚的には3週間目でレポートドラフトをプロマネに上げたい。そうなると2週間の終わり頃には概ねQA回答は欲しい。となれば、2週間目の半ばにはQAを投げ切りたい、というのが自分の感覚値。開示資料のタイミングからこの通りに行くことはほぼないが、このスピード感で進めていれば、(少なくともスタッフレベルでは)大事故は起こらないし、プロマネからは信頼を得られるはず。DDスタートして最初の1、2週間はほどほどにやりましょう、というチームもあるが、完全に逆。最初の1、2週間ほどがっつり時間をかけるべき。必要なQAを投げ切れば、後は作業に近い。

作業計画の作成

 大筋のスケジュール感が見えてきたら、自分の作業計画を作っていく。チーム内の作業分担を確認し、重要度やかかりそうな時間を踏まえ、どこからを手をつけるか考える。慣れないうちは最初の2、3日で最低限の必要な表を作りきってしまうのがお勧め。自分の手を動かして数字をまとめていくと、不足資料や確認すべき事項が見えてくる。時間のかかりそうな箇所や重要そうな箇所もなんとなく見えてくる。そこがQAの出発点にもなる。必要な資料は何がどこまで出てきている、そもそも想定していた資料が対象会社存在しない場合の代替案も考えたい。 QA回数やタイミングも当然ながら頭に叩き込む。週のいつ時点で自社からFAへ送付し、内部のQAレビュー回すならいつかは基本中の基本。内部のQAレビュータイミングが決まってないなら、ここでも自分からプロマネに握りにいくこと。

QAリストの作成に関して

QAは重要な点から

 いきなりQAを作成するのではなく、まずは開示情報を整理していく。案件規模にもよるが、スタッフ3、4名くらいの案件であれば基本的には全ての開示に目を通す。他の領域(法務やビジネス分野)で開示された資料についても可能な限り目を通す。関連度合いによって確認深度は下げてもよい。大量の情報があるので、重要な資料は保存場所をまとめる等、すぐにアクセスできる状態にしておく。また、価値評価関連の事項はここで拾えるものは拾って金額まで表に入れてしまう。
 QAを出す順序は大きなところから。会社概要の理解や概観的な話と重要論点が優先。必要情報が出ていないならそれも初期段階で入れる。瑣末な論点から入れる者を見ると、上位者としては非常に心配になる。優先順位がつけられず、DD期間の後半から最後にかけてバタバタと重要なQを入れそうで、レポートもボロボロな姿が目に浮かぶ。(自身の最初の頃はそうだったので…。)

QAリストも成果物の一部

 QAに関して色々と言いたいことはあるが、最も重要なのは「QAリストも成果物の一部と心得る。」これに尽きると思う。レビューコメントに対して「なぜ資料ひとつ依頼するのにこれだけ色々と言われなければならないのか?」と言われたこともあったが、こちらはそもそもQAリストが成果物の一部との認識なので、その最低レベルに達していないから言ってるだけであり、そのような疑問が出てくること自体理解できないし、その程度の認識ならVDRからデータダウンロードだけしておいてください、という気持ちになる。流石に言わないが。QAリストは対象会社や他のアドバイザー、クライアントも確認するものであり、レポートとはレベル感が違えど必要な水準に達していなければ当然提出できない。端的な日本語、数字の正確性、提出期限は最低限守りたい。
 以下はよく書くレビューコメント。
・そもそも書いた後に自分で見直していますか?
・正しい日本語ですか?
・計算チェックしていますか?計算があいません。
・単位を書いてください。期間を具体的に書いてください。
・他のQA回答や開示資料でわかりませんか?
・初期資料依頼リストで既にお願いしている項目では?
・別に「該当なし」と回答が来ているので、再び聞くのでれば当然ながら聞くべき理由を具体的に書かなければ同じ回答が返ってくるのでは?
・その情報を入手してレポートにどのように反映する予定ですか?
・その情報は現在開示されている情報から加工して代用できませんか?
 無駄な情報を依頼すると、売り手側も工数を割かれ、他の重要な情報の提出が遅れる可能性あるので、適当な依頼はしないで欲しい。もちろん依頼すべきことや聞くべきことをQAに入れるなという意味ではない。必要な事項は最後まで離してはならない。あと、レビューコメントの意味がわからなければ適当に修正して提出するのではなく、コメントつけた人間に質問し、背景を適切に理解した上で修正対応して欲しい。お互いに時間の無駄になるので。

インタビューに関して

インタビューの時間は非常に短い

 他者の分野もあるので、自身で聞く部分に関しては特に少ない。当然ながら一から入れたQを読み上げるのではなく、省略して質問する。相手が一度読んでいる前提で質問する。基本的にその場で資料を確認するような時間も惜しいので、事前に頭に叩き込んでおくこと。対象会社から直接情報が取れる機会は非常に限られるので、一言一句ニュアンスも含めて聞き逃さないこと。理解できなければ放っておかず、理解できるまで聞くこと。録音することも多いとは思いますが、抑えるべきポイントに絞ってQを入れ、インタビューで質問し回答を得られたのであれば、正直、聞き返すことはかなり少ないかと思っています。

レポートの作成に関して

レポートはエグザマから書く

 ここまで書いた認識で進めていれば、レポート作成は作業に近い。その意味では作成にかかる時間が気になるポイントであるが、スライド作成スピードは経験の多寡で相当変わる。初期的には自分の見積り時間の2倍くらいを想定しておいた方が良い。思った以上に時間がかかる。作成スピード自体を引き上げることは一朝一夕には難しいが、上位者から見て早いと思わせるコツはある。それは、QAを出す順番と同じだが、レポート作成も重要な点から行う。すなわちエグザマから作り上げてさっさとレビューに回し、エグザマ以外は後回しにすることだ。報告会ではエグザマ中心に説明することが多いし、クライアントも基本的にエグザマしか見ない(と勝手に思っている)。プロマネからしてもエグザマ以外はあまり興味が湧かない。エグザマ以外も作り始めると相当な時間がかかるので、エグザマができていないでプロマネに激怒される前に、さっさとエグザマを作り上げて他は後回しにしよう。

レポートに伝える意思を持たせる

 レポート作成の心得で一つだけ言うならば、「レポートに伝える意志を持たせる」ことだろうか。レポートは数字や会社情報をただ取りまとめた資料ではない。あくまで経営の意思決定のために必要な情報を端的に理解できるようとりまとめたもの。主観を排除した形で文章は作成するかもしれないが、スライドで伝えるメッセージ、レポート全体で伝えるメッセージは何かを意識して欲しい。必要な情報は盛り込まなければならないし、不要な情報は可能な限り削ぎ落とす。表の勘定科目ひとつを表示するしないにもそういった気遣いが現れるし、そういった些細な事項も考えて作成して欲しい。それが「レポートの伝える意思」だと考えている。

その他

 細かい点になるが、自身のドラフトが完成したら、レビュー依頼を行う前に、印刷して自分で一読してみるのも品質を上げる際には重要。自分で見ても結構間違いが見つかる。
 最後に、一度指摘されたことは二度と指摘されないように。レポート作成のお作法的なものもあり、知ってる知らないだけの話もある。自分のスタッフ時代は、一度指摘された事項でその他の案件にも関連しそうな事項は全てエクセルにまとめて定期的に見直していました。
 まとまりのない文章ですが、ここまで読んで頂きありがとうございます。何か一つでも得られるものがあれば幸いです。

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