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Last Letter



こんばんは、のりです
あと3週間で今年が終わります
早いものですね
めちゃくちゃ濃い1年だったなぁ
小松未歩ラジオの今年の締めはLast Letter
みんなどんな解釈でしょうか?
楽しみですね


Last Letter


♫~
着信の名前を見て、私はすぐに通話ボタンを押した

「もしもーし」

『円!遅くなってごめん!今そっちの最寄り着いたよ』
「全然大丈夫だよ。崇人は大丈夫?バレてない?」
『大丈夫!今日会うためにすごい頑張ったんだから!』
「ありがとう。じゃあ私も家出るね。カフェBLUEの次の角で待ち合わせね。そこで待ってて。迎えに行くから!」
『わかった!じゃあまたあとで』

「うん、またあとでね」

外の音が入らないように、すぐに切った。
ちょうど私が乗る飛行機の搭乗アナウンスが流れた。
電源を切ったあと、燃えないゴミ箱にケータイを捨てた。

ごめんね

こんな形で別れを告げて

私のこと許さなくてもいいよ

中学3年から付き合い始めた崇人は、高校で演劇部に入った
それがすごく楽しかったらしく、大学へ行ってからも演劇を続けてた
いろんな役を演じるのが楽しいと
そんな彼を見るのが好きだった

それから崇人はドラマや映画のエキストラをするようになり、本格的に俳優を目指した
私は高校を卒業して働いていたので、ほとんど同棲して彼を養うような、そんな感じだった
私は崇人の笑顔を見れるだけで良かった
幸せだった

オーディションを何度も受けて、事務所に所属できることになった
それは同時に遠距離恋愛になることを指した
都会へ行く崇人を私は心から応援した
離れても、テレビに出て、元気な姿を見せてほしい
そう言うと、崇人は明るく笑って頷いた

テレビに出るようになった崇人が、遠い人のように感じて、寂しくなるときもあった
それでも合間を見つけて私に連絡をくれた
何ヶ月も会えないときもあったけど、不安は崇人が消してくれた

風の向きが変わったのは、付き合い始めて12年が経とうとする頃だった
崇人のマネージャーから連絡がきた
大事な時なんです
ファンが付いて、今スキャンダルになるわけにいかないんです
別れてください

お金を積まれて
そうはっきり言われた

考えて
考えて
考えて

私は静かに消えることにした
私が悪者になる形で

地元を離れ
海の近くで暮らし始めた
そんな暮らしに慣れた頃
見覚えのある筆跡の封筒が入っていた
切手が貼られていない

どうして
ここの住所はほとんど誰も知らないはずなのに

『円
大好きだったよ
今までありがとう』

あぁ
崇人は、やっぱりそっちを選んだんだ
彼の夢を応援したいという気持ちに嘘はなかった
だから別れることもしたのに
私はやっぱり、心のどこかでは、戻ってきてほしいと思ってたんだ
許してほしいと思ってたんだ

崇人が遠くに行った日も
マネージャーさんからお金を積まれた時も
一緒に暮らした家を出る時も泣かなかったのに
こんな短い手紙で
私は声を上げて泣いた

それから数年経って
私は久しぶりに、崇人とよく来た公園のベンチに座った
同世代の後輩女優と結婚したとニュースで聞いた

崇人
私も楽しかったよ
あなたと暮らしたあの日々が
私の人生で1番幸せだった

手紙を取り出し
最後にもう一度読んで
出来るだけ小さくちぎった
崇人のことを思い出しながら

ばいばい


私が気になったのは
「私を許さなくていい」
というフレーズ
文字数の関係かもしれないけど、「私を許さないで」と言いきらずに
許さなくてもいいよっていう表現が、でも許してくれるなら許してほしい、という気持ちに見えたんです

不倫とか、かけおちとか、いろいろ考えたけど、1番しっくり来た解釈が、夢を追いかけた彼のマネージャーから別れるよう言われ、好きだけど別れた
しかも主人公が悪者になる形で
という所に落ち着きました

みなさんは燃えないゴミ箱にスマホを捨てたり手紙破って放っちゃだめですよ!笑

めちゃどうでもいいですがヘッダーは昔娘が誤操作で私を撮ったものです
ガラケーの頃なので画質悪いけどなんか消せなくて
手紙破らなくてもいいのにね

読んでくれてありがとうございました