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極東書店ニュースNo.722 日本人著者・日本関連テーマ 注目タイトル

極東書店ニュースONLINE、2024年4月15日に新着書誌情報を追加いたしました(No.722)。その中から日本人著者・日本関連テーマの注目タイトルをご紹介いたします。

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安平弦司著 オランダ共和国におけるカトリックの生存-ユトレヒトにおける共存のエージェンシーと公共圏 1620~72年- 

Yasuhira, Genji, Catholic Survival in the Dutch Republic: Agency in Coexistence and the Public Sphere in Utrecht, 1620-1672. 2024 (Amsterdam U. Pr.) <722-150>

宗教改革後、ユトレヒトのカトリック教徒は、その社会的地位とネットワークを動員することで、敬虔なカトリック信者として、また名誉ある市民として生きる余地を作り出し、空間的実践や自己表象の言説を通じて、公共圏におけるより多くの権利を勝ち取りました。

ユトレヒトにおいて、カトリックの司祭と信徒がどのように協力し、中世の遺産に依存し続けながら近世の宗教的多様性に適応し、公共を区切る共同体的なプロセスに参加することで、改革体制を生き延びることができたかを探る一冊。(Open Accessあり)


鎮目雅人他編 世界中の貨幣博士-歴史的視点

Álvarez, Andres / Bignon, V. / Ögren, A. / Shizume, Masato (eds.), Money Doctors Around the Globe: A Historical Perspective. 2024 (Springer) <722-298>

本書は、世界的な通貨改革の歴史的経験と、その背後にいた改革者「マネードクター」-理論的かつ実践的な知識に助けられながら、安定した金融・財政システムを構築する方法、あるいは現在進行中の金融の乱れを修復する方法について、助言および行動を提案する人-に焦点を当てた研究書です。

16世紀から20世紀までのアメリカ、アジア、ヨーロッパ、オセアニアの事例を集め、その目的、戦略、結果について論じ、現代への示唆を導き出しています。


酒井吉清著 デフレと財政赤字-日本の経済政策に関する3つの問題

Sakai, Yoshikiyo, Deflation and Fiscal Deficits: Three Questions About Japanese Economic Policy. 2024 (Springer) <722-191>

日本経済に関するこの研究書では、著者は経済政策に関する3つの問題
-①財政政策と物価水準にどのようなメカニズムが存在するのか、②公的赤字が人々の富と貯蓄を増加させるというMMTの命題は標準的なマクロモデルに適合するのか、③米国経済において財政赤字が純富をもたらすというブランシャールの主張は日本経済にも適用できるのか、に焦点を当て、その答えを提示しています。


鷹岡澄子編 環境の技術革新とESG投資-アジア太平洋地域

Takaoka, Sumiko (ed.), Environmental Technology Innovation and ESG Investment: In the Asia-Pacific Region. 2024 (Springer)<722-200>

本書は、日本、中国、韓国など、伝統的な革新国と新興革新国を含むアジア太平洋地域の環境技術と金融市場と、環境関連技術のイノベーション、金融、環境・社会・ガバナンス(ESG)問題の結びつきに焦点を当てた研究とその成果を紹介しています。


平塚貴晶著 ネイティブスピーカー主義とトランススピーカー主義


Hiratsuka, Takaaki, Native-Speakerism and Trans-Speakerism: Entering a New Era. 2024 (Cambridge U. Pr.)<722-1620>

トランス・スピーカー主義という解放的な概念を導入することで、一般的なネイティブ・スピーカー主義-言語教育における不平等なパワー・ダイナミクスを永続させる偏見-を解体し、この分野の言説を再構築する画期的な書籍です。

話者としての地位によって課される制限を越えて、すべての言語話者、教師、研究者の多様性、公平性、包摂を促進することを目指し、言語の多様性を歓迎し、包括的な言語教育環境を発展させることを最終的に促しています。


J.ニアリー著 アイルランドと日本のパブリック・ディプロマシー

Neary, John, Public Diplomacy in Ireland and Japan. 2024 (Amsterdam U. Pr.)<722-661>

ビジネス、教育、ツーリズム、スポーツといった様々な外交の分野と、それらが日本やアイルランドの対外関係、二国間関係においてどんな役割を演じたかを考察した書籍、著者は元駐日アイルランド大使のニアリー氏ということも興味深い1冊です。


A.E.デレーニ著 東北の災害を超えた生活-沿岸部日本の自律と適応性


Delaney, Alyne E., Life Beyond the Tohoku Disasters: Autonomy and Adaptability in Coastal Japan. 2024 (Lexington Books)<722-757>

本書は東北大学のアリーン・デレーニ先生のフィールドワークの成果で、宮城県のある街を中心に、震災後の生活を詳細に描いた1冊です。

地域の文化や漁業の生計を巧みに文脈化し、災害復興政策が地域社会に与える主な影響を明らかにしながら、人々がその土地や海の風景に愛着を持ち、互いにつながり、伝統を共有し、海とつながった働き方をすることの重要性を示しています。


明治時代日本における民法典論争

Piegzik, Michal, The Civil Code Controversy in Meiji Japan: The Struggle to Modernize the Nation. (Leiden U. Pr.)<722-420>

開国後、明治時代の日本において法の近代化は急務であり、当初は日本の伝統的な社会的紐帯に革命を起こすことを意図して、フランス法の影響が強い民法を起草していたが、それにフランス的すぎるとして反対した人々がおり、民法典論争が勃発。この問題は難航し、成立まで長引くこととなった…という、「日本の私法の自由化の失敗」の歴史を論じた、非常に興味深い一冊。

この民法典論争に関わった代表的な法学者が、法政大学ともゆかりの深いボアソナードとなります。