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「ギリシア人・ローマ人」ではなく、「ドイツ人」の育成を目指した中・高等教育改革

(ヴィルヘルム2世)『プロイセンにおける中・高等教育改革』 1902年 ハレ刊
(Willhelm II) / Lexis, W., Die Reform des hoeheren Schulwesens in Preussen. Halle a. S., 1902.
8vo, x, 436pp, contemporary half cloth binding with board, title lettered in gilt to spine

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19世紀から20世紀の世紀転換期に行われた大学入学資格(アビトゥーア)を付与できるドイツの中・高等学校(ギムナジウム)の改革について、当時の各科目の専門家がそれぞれの見解を述べた論集です。改革提言の中心は、総授業数で4分の3近くを占めるラテン語・ギリシア語などの非実用的な古典教育の削減、かわりに現代語教育(ドイツ語・英語)の増加、数学・自然科学授業の重視、体育の導入などでした。

当時の皇帝ヴィルヘルム2世は、ギムナジウムが「国民的自覚を持つ若きドイツ人を育成する事であって、ギリシア人・ローマ人を育てることではない」と述べ、教育改革に積極的に関わっていました。彼の関心はあくまでも君主主義やドイツナショナリズムを根底としていましたが、ドイツの工業化の進展と「世界政策」の観点から時代の要請と必要に沿ったものでもありました。またヴィルヘルム2世自身当時の王侯貴族としては珍しくギムナジウムと大学教育を受けていたため中・高等教育での問題意識を実体験として持っていたため言われています。

実際にこの改革提言の効果が出るのはヴァイマル期・国民社会主義政権期でしたが、この書籍が刊行された1900/1901年以降プロイセンをはじめドイツの各邦国でギムナジウムの大学入学資格の付与の独占は崩壊することになりました。本書は19世紀初めのフンボルト教育改革以来のドイツ中・高等教育の転換期に当たるため時代に発行されました。そのため、ドイツにおける教育改革の歴史を知る上で重要な書籍といえます。

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