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明治の元勲達も仰ぎ見た鉄血宰相のイメージ

『ビスマルク』 [1905年] マインツ刊 ショルツ愛国絵本8
Bauer, Karl, Bismarck. Vaterlaendisches Bilderwerk. (Vaterlaendische Bilderbuecher, Nr. 8). Jos. Scholz, Main, [1905] <R18-202>
Oblong 8vo, [16]pp, 8 colored plates, original half-cloth boards with dust jacket, jacket chipped

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ユーゲントシュティールの画家など、本格的な美術家を挿絵のイラストレーターとして採用して質の高い「芸術家シリーズ」の絵本を刊行していたマインツのショルツ社より発行されたビスマルクの絵本です。当時のドイツ愛国教育のために発行された一冊です。

セダンの戦いの後ナポレオン三世との会談

本書で登場するビスマルクは、常にドイツナショナリズムを代表し、「われわれドイツ人は神を恐れるが、それ以外なにものもおそれない」という、明治政府の重鎮であった大久保利通や伊藤博文もモデルにしようとした超然とした「鉄血宰相」として描かれています。

「我々ドイツ人は神を恐れるが、それ以外何物も恐れない」の演説シーン。この演説の後半「神への恐れから、すでに我々は平和を愛しく育んでいるのです」、この部分は、ビスマルク崇拝者からはこの演説の勢いを削ぐものとして、反対者からドイツの傲慢さを強調するために、しばしば無視される。

しかし、こうした超然としたイメージは、ビスマルクの引退後や死後にカリスマ崇拝的に増幅されて描かれたもので、実際のビスマルクとはかけ離れたものと言われています。生前ビスマルクも当時のドイツでの自身のカリスマ化に気づいていましたが、本人はこうした動きを歓迎していませんでした。

ゲルマニアに看取られるビスマルク。ハンブルクのビスマルク記念碑と同様に甲冑姿に。

本書は、新皇帝ヴィルヘルム二世の統治が必ずしも安定しないことも相まって、イメージの抽出からカリスマ的な指導者として祭り上げ、ビスマルク崇拝へと異常な高まりを見せる当時のドイツのナショナリズムの動向を見ることができます。
参考文献:飯田洋介『ビスマルク』中央公論社 2015年

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