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中世史 注目タイトル(極東書店ニュース 723号)

極東書店ニュースONLINE、2024年5月1日に新着書誌情報を追加いたしました(No.723)。今回はBoydell & Brewer、中世史の新刊が充実しておりますので、こちらでご紹介いたします。

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日本西洋史学会にも出展いたします!


Boydell & Brewer社は、「書籍としての本」をとても大切にしている出版社です。昨年のフランクフルト・ブックフェアでミーティングをしたときに、出版社として美しく個性的なブックデザインを重視しているのだと誇らしげに語ってくれました。

デザイナーにより美しくデザインされた表紙にもぜひ注目してください!


A.Curry記念翻訳・編集 百年戦争の記録

Ambühl, Rémy / King, Andy (eds.), Documenting Warfare: Records of the Hundred Years War, Edited and Translated in Honour of Anne Curry. (Warfare in History) 424 pp. 2024 (Boydell, UK) <723-1238>

百年戦争に関する文献資料は数多く存在しますが、その数を考えると、出版されたものは比較的少なく、翻訳されたものはさらに少ないといえます。

本書は、Anne Curry 教授の業績を記念し、この分野の専門家による編集、翻訳、詳細な分析、解説を加えたものです。

契約書、目録、恩恵状、宣誓供述書、遺言書などが含まれ、徴募、暴力、身代金、和平から火薬、海運、服装、迷い馬(!)に至るまで、さまざまなテーマに新たな光を当てています。


長い12世紀における領主権と地方

Boston, Hannah, Lordship and Locality in the Long Twelfth Century. 274 pp. 2024 (Boydell, UK) <723-1249>

Multiple Lordship -複数の領主の土地を所有したり複数の領主に同時に忠誠を誓ったりすること―は、西欧の「封建的」モデルのもとでは長い間、潜在的に危険な逸脱であり、領主権構造の衰退の兆候であるとみなされてきました。

本研究では、12世紀後半のレスターシャー、ダービーシャー、スタッフォードシャーの小領主の分析を通じて、逆に、この時代にはMultiple Lordshipは少なくともSingle Lordshipと同様に一般的かつ通常の慣行とみなされていたことを明らかにしています。
またこれらの小領主が領主構造の柔軟性を利用して、地域的な権威の中心を構築し、彼ら自身が重要なアクターとなった経緯を探っています。

この時代の地域社会は、領主権、親族関係、地域性といった重なり合う絆によって形成されており、それぞれが人間関係や行動に根本的な影響を及ぼしうるものでありました。本書は、領主権をより広範な権力と影響力の中に位置づけています。


東西ラテン世界における十字軍、定住、歴史記述 1100~1300年

Crusade, Settlement and Historical Writing in the Latin East and Latin West, c. 1100-c. 1300. 2024 (Boydell, UK) <723-1251>

第一回十字軍から東地中海の「十字軍国家」が崩壊するまでの期間は、中世の歴史書にとって極めて重要な時期です。

1096年の最初の十字軍の出発から、13世紀後半のマムルーク朝によるラテン諸国の征服に至るまで、十字軍の活動や、十字軍が築き、保護することを目的とした居住地は、膨大なテキストを生み出し、ラテン西域とラテン東域の歴史学的文化に豊かな洞察を提供しました。

しかし、十字軍と「十字軍国家」に関する現代の学問は、中世の作家たちが両者の歴史を事実上区別できないものとして扱っていたにもかかわらず、両者の間に人為的な境界線を引きがちでありました。

本書は、中世盛期において、個々の十字軍遠征と東地中海のフランク人居住地がどのように描かれ、記憶されたかを考察しています。イングランド、フランス、ドイツ、南イタリア、聖地を含む広範な地理的範囲をカバーし、ジェンダー、感情、自然界、制度としての十字軍、起源神話、テキストの受容、物語の形式、歴史的ジャンルなどのトピックを扱っています。


スコットランドにおける死と王位継承 1214~1543年

Death and the Royal Succession in Scotland, c.1214-c.1543: Ritual, Ceremony and Power. 2024 (Boydell, UK)<723-1256>

死と継承の儀式的側面が、スコットランド王室のアイデンティティと、より広範な儀式文化の双方をどのように反映していたかを明らかにした1冊。

当書籍は、13世紀から16世紀にかけてのスコットランドの王権にまつわる死と継承の儀式サイクルについて、カンモア王朝の最後の世紀、ブルースとバリオールの対立の危機、スチュワート家の出現と統合、1543年にスコットランドで埋葬された最後の君主ジェームズ5世の葬儀に至るまで、長期持続分析(Long duree analysis)をしたものです。

これまで研究されていなかった財務記録や物質文化を含む幅広い一次資料を用いて、王権と権力、王権を正統化する儀式の機能、権力の実際的な行使との関連におけるその意義、より広いヨーロッパの文脈におけるスコットランドの類似性と独自性を示す証拠など、重要な問題を取り上げています。


スコットランドにおけるルネサンスと宗教改革再考-R.A.Mason記念論集

Rethinking the Renaissance and Reformation in Scotland: Essays in Honour of Roger A. Mason. 2024 (Boydell, UK) <723-1287>

このエッセイ集は、Roger A. Mason教授の功績を称え、スコットランド史における「ルネサンス」と「宗教改革」の意味を批判的に再評価したものです。

前近代スコットランドを研究する第一人者らによる論考集は、中世からルネサンスへの文化的変遷、スコットランドのアイデンティティの定義と再定義における歴史的記憶の役割、分派抗争の時代における文学・政治・宗教の接点、そして何よりも前近代スコットランド人の政治的・宗教的展望を形成する思想の重要性といった側面を研究しています。


T.W.Smith著 第一次十字軍を書き直す


Smith, Thomas W., Rewriting the First Crusade: Epistolary Culture in the Middle Ages. (Crusading in Context) 246 pp. 2024 (Boydell, UK) <723-1289>

第一回十字軍に由来する書簡は、遠征の開始、作戦、余波を理解するための超一級の資料です。1095年から1100年にかけて、書簡は歴史的記述、文学的創作、ニュース、神学的解釈の混合物として、地中海全域とヨーロッパ内の社会的関係を支えました。

本書は、オリジナルの写本に関する広範な研究に基づき、多数の写本についての新たな証拠を提示したうえで、手紙の一部は12世紀以降に十字軍遠征地を訪れた何世代にもわたる筆記者や読者によって作られた、その場限りの「創作」であり、挿入や後書きという形で新たな意味の層を加えるものであると論じています。

この新しい理解に基づいて、書簡の「現実」の区別を曖昧にし、第一回十字軍の歴史の中心的な側面を書き直し、新しい方法で文書を考察しています。本物の書簡であれ、文学的な「創作物」であれ、それらは遠征を祝い、記念し、記念化するための共同体的な場所として機能したことを明らかにしています。


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