大雪の高野山備忘録


大寒波の出張

仕事の関係で、月に何回か高野山に行く。この日は10年に一度の最強寒波が直撃した日だった。
高野山に行くには国道480号線で山を登って行く。気温は氷点下だが、路面はまだ凍っているような雰囲気でもない。到着したのは昼頃で、高野山の街中はすでに雪が降っていた。

17時前に仕事を終え、お客さんに挨拶する。
お客さんが一言
「高野山道路(480号線)、すっごい凍ってるみたいだから気をつけてね!」

「あっはい、ありがとうございます」とは答えたものの、「すっごい凍ってる」とはどんな状態だ?スタッドレスタイヤならどうにかなるのか?不安ではあるが帰るしかない。

外に停めた車のフロントガラスは白く覆われていた。車内の温度計は-5℃。町内の道路も除雪が追い付いていないのかアスファルトが雪に埋まりはじめている。おっかなびっくり発進して山を下り始める。大門前の温度計は-7℃を表示していた。そりゃ凍るわけである。

車が滑るという感覚

路面はシャーベット状に見えた。カーブが連続する下り坂を20㎞以下で下りると道が開け、ガードレールに突っ込みそうな状態で止まった集配車と法面に突っ込んだ車、ドライバーさんと話す警察官が見えた。状況的には車が滑り、止まったものの方向転換も危うくそのまま停止したというところなのだろうか。「恐いなぁ…」と思いながら様子を見ていたら、自分の車もツー…と滑り始めた。アクセルを踏んで走っている時とは違う感触。前進しているが、車がコントロール下にいる感じがしないのだ。ブレーキも効かないので、パニックになりつつサイドブレーキを踏みつけたらなんとか止まった。

さて、再度発進するのも恐いが、強くなる雪の中でこのまま留まるほうがもっと恐い。
私はサイドブレーキを解除し、アクセルを踏まずに走り始めた。この場所からしばらく、平坦な道が続く。私はもう一度滑り、今度は冷静にサイドブレーキをかけた。後続車がさっきより車間距離を空けて走っている。前進している感覚がないまま道路を進む。普段なら煽られるような速度だと思う。風も強くなり、また停まった車を数台見かけた。

最も凍結の可能性が高い(であろう)エリアはくぐり抜けたが、今度は雪と風が時間とともに強くなっていく。高野山の雪はパウダースノーだ。雪を風が巻き上げて、カーブの度にホワイトアウトのような視界になる。ハイビームにしてみたが雪に反射して余計に眩しかったので、そのまま走った。前が見えないので、一瞬見えるガードレールと法面の形状を頼りに走り続けた。一旦待避所に寄せて、後続車を見送る。ゆるゆると山を下り、花坂という地域にたどり着いた。

まだまだ続くふもとまでの道のり

花坂まで来ると多少山中と天候が変わるのだが、この日はほぼ変わっていない。ホワイトアウトこそしないが、雪がフロントガラスに吹き付けるのでワイパーの動きはせわしないままだ。風も強いようで、薄く積もった雪の上を降ってきた雪が滑っていくのが見えた。車内の温度計は変わらず-5℃を示している。アスファルトがまだ見えてるといっても、この温度ではアイスバーンの危険もある。結局、先ほどまでと変わらずノロノロ運転するしかなかった。ちなみに猛スピードで自分を含めた3台を一気に追い抜く車もあった。

待避所で道を譲ること2回、峠からの下りでいつも以上にエンジンブレーキをかけてどうにかふもとまで下りることができた。とはいえ、ふもとも雪は降ってるし、道はシャーベット状の氷にタイヤの模様が付いている。多くの道も通行止めで、なす術なくだらだら帰るしかなかった。

翌日は言うまでもなく大雪だったので在宅勤務に変更。次の日は出勤できるかなと夜に駐車場を見に行くと、フロントガラスが氷漬けのままだったので笑ってしまう。
もう週末まで休んでやろうかと思う寒さだったが、そういうわけにもいかないので溶かしてから寝た。それからほぼ通常通りに出勤できるようになったのは、週が明けてからだった。


大雪の備忘録

さて、こんな大雪というか大寒波も何年かに一度の事案なわけだが、生還できるかどうか紙一重な部分もあったのではないかと思う。とりあえずこの一件で体感したことと、後からいろんな人に教わったこと、調べたこととしては

  • 氷で滑りそうな時は発進も停止もゆっくり。急な操作はしない。

  • ホワイトアウトになった時は吹雪が止むまで待つ。ハザードランプなどで周囲に車があることをアピールする。吹雪が止んだらゆっくり走る。

  • 吹雪で車が走行不可になりそうな場合は停止せずに少しずつ進む。

  • フロントガラスが凍ったらデフロスターをつける、もしくは消毒用アルコールを薄めたもの、ぬるま湯、解氷スプレーを使う。

  • そもそも凍らないようにタオルや毛布、専用シートをかけておく。

といったところだろうか。
できれば極力大雪には遭いたくないし、降るなら外に出たくないが、来年か何年後かに同じような事態が起きないとも限らないわけで。
その頃にはもっと便利なツールが誕生していることを願いつつ、自分の備忘録を残しておく。


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