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【2020.04.09】著者に苦労をかけてでも、最後に一緒にガッツポーズできる表現に高めていく手伝いをすること。

初めて「バーチャルオフィス」を実験した。随時開きっぱなしのZoomミーティングを設定しておき、入りたい人が、入りたいときに入る。相談や雑談をしてもいい。それらをなんとなく聞きながら黙々と作業をしてもいい。

これがなかなかによかった。物理的な空間で一緒に居合わせることはできないけれど、話し声や雑音に触れ、画面上での仲間たちの動作を見ていると、オフィスにいるのと近い雰囲気を味わうことができる。雑音や間接視野に入る動きなど、思っていた以上にそういう「何気ないもの」のなかにリアルな場の良さ・安心感があったのだな~と気づかされた。

バーチャルオフィスの利点はいろいろある。

●画面共有で資料を確認し合えるからペーパーレス
●普段のオフィスでは一人だけ遠隔操作ロボットで参加するメンバーがいたが、バーチャルオフィスでは全員が同じ状況になる
●ブレイクアウト機能を使えば即座に別部屋での個別の相談ができる(リアルな場のように歩いて部屋を移動する必要なし)。
●同僚の飼い猫の姿が映り、癒される。
●同僚の飼い猫の鳴き声が聞こえ、癒される。
●同僚の飼い猫がまた映らないかな~と期待しているだけで、癒される。
●同僚の飼い猫が......

明日も入ってみよ。


今日は先輩から、校閲力の向上をほめてもらえてとても嬉しかった。数千字の原稿を確認するだけでも、まだまだかなりの時間がかかってしまう。それでも、感覚を研ぎ澄ませるべきポイントはなんとなくつかめてきた。

これは編集の領域も含めての話だけれど、他者の文章と向き合うにあたってのいまのところの心得をまとめてみようと思う(まだまだできていない部分もいっぱい)。

①届けたい読者の状況をイメージし、それを再現しながら初読する。
いきなり一字一句を精査しながら読む人は少ないので、「その読者が読むスピードのなかで意味を取れるか/ワクワクするか」などを見る。「初読ができるのは一度切り」であることを胸に刻んで大切に取り組む。

②初読で感じた「輝くポイント」を言語化する。
(1)どんなメッセージやエッセンスが輝いていたのか
(2)それはなぜ自分に響いたのか≒どんな状況の人に響きそうか
(3)それは届けたい読者にも響くものであるか

③「輝くポイント」を磨き込むための視点を、再読しながら言語化する。
(1)「輝くポイント」をより輝かせるために必要なことは何か
(2)「輝くポイント」を邪魔してしまっている違和感は何か

④③をもとに「輝くポイント」を実際に磨き込む。
(第一優先)構造改革:論やストーリーの構成自体を大きく変える/扱う事例やエピソードが効果的かを判断し、追加orカットする......etc
(第二優先)淀みない流れづくり:読者の理解や感情の流れをイメージ/必要に応じて提示する要素の順番を入れ替える/不要な脱線をカット/文頭・文末の魅力化......etc
(第三優先)細部磨き込み:使用する単語のニュアンス精査/音読も交え違和感を確認・修正(一文の長さ・リズム・重複表現・改行etc)/著者らしさやこだわりの強調......etc
※これらはすべて決定事項として著者に伝えるのではなく、あくまで「提案」し、本当に表現したいこととすり合わせながら修正を進める。その際、第一優先~第三優先をすべて一度に提案するのではなく、優先順に一つずつ提案する(第一優先で大きく構造が変われば、第二・第三優先の提案内容も変わるため)。著者にも違和感を遠慮なく伝えてもらい、粘り強くともに磨いていける関係を築く。

⑤校閲・最終確認
誤字脱字や表記統一の確認/差別表現・傷つく人がいないか・不毛な論争を起こさないかなどを最終確認

まだ全然抜けている気がするけれど、パッと思いつく限り。

大きな視点としてとても大事なのは、「違和感」よりも先に「輝くポイント」を見抜き、「そこをどう磨くか」を最重視すること。じゃないと違和感探しは、単なる重箱の隅つつきになってしまい、効果は薄い。たとえば輝くポイントがそもそも30点しかないのであれば、-1点の違和感を10個取り除いても、出来上がった原稿は20点→30点になるだけ。そうではなくて、輝くポイントを100点に磨き上げる方法を考えて、その上で不要な違和感を消していく。

このなかで今日ほめてもらえた部分は「④の第二優先~⑤」にあたる部分だと思っている。けれど、実は僕がいま特に向上したいと思っているのはその手前の「④の第一優先」、つまり「大きな構造改革」の提案の力だったりする。それこそが、重箱の隅つつきを脱して、「輝くポイントを100点に高める」ために重要な部分だからだ。

どうも、「いま書かれている言葉を活かしてできることを」という狭い視点にとらわれてしまっていることが多い気がする。それは、「せっかく苦労して書いてもらった言葉なのだから活かさないと」という気持ちから来ているのだとは思う。

けれど、それは編集者として「本当の親切」ではないと思っている。著者に苦労をかけてでも、最後に一緒にガッツポーズできる表現に高めていく手伝いをすること。それこそが担うべき役目であるから。

そのためには、大きな構造レベルの提案こそが、最もレバレッジの高い部分。そしてそこで問われる力量やセンスが、自分にはまだ足りていないと自覚している。


狭い視点にとらわれない「思い切りの良さ」。今年度高めていきたいテーマです。

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