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【2020.04.05】「どれを読もうか迷っている時間」を「どれでもいいから読む時間」に使えば、どれだけ読書量が増えるだろうか......そんなつまらないことは考えてはいけない。

今朝はとても嫌な夢を見て起きた。

......という記憶はあるのだけれど、それがどんな夢だったか思い出せない。嫌なことがあると、何度も何度も反芻してしまう性格だから、思い出せないということは「対して嫌な夢ではなかった」ということなのかもしれない。そう考えれば、悪くはない朝だったと言える。

この論法はいろいろなことに応用できる。

たとえば、「ちゃんとメモしないから忘れるんだろ!」と怒られたとする(実体験)。そんなときに、「あのですね、メモをしないと忘れてしまうようなことは、大して重要ではないのではないでしょうか? 大して重要ではないのであれば、忘れてしまって何か差し支えあるのでしょうか?」と言い返せる。

言い返す、その勇気さえあればね。


午前中に水回りの掃除をしてから、ひたすら『ペスト』(カミュ著、新潮社)を読んでいた。ここ3日ずっとこの本の話を書いているけれど、文庫本とはいえ500ページ近くある。その上、古典翻訳独特の味わい深い(ちょっと読みづらい)言い回しが多く、一筋縄にはいかなかった。

そんな本書を、今日ようやく読了することができた。

「コロナ蔓延に伴う世界の現状と重なるディストピア小説」という前評判で読み始めたけれど、それだけの印象で読んだら大間違い。それどころの本ではなかった。読み終えて「レ、レビュー書けねぇ......」と途方に暮れたのは久しぶりだ。それくらい、喚起された重要なテーマが多く、濃い。

稀に見る、化け物みたいな小説だった。

「実世界の現状と似ているからこそ引き込まれる」というのは正しいと思う。でも同時に、「実世界の現状と似ているからこそ、読むのが難しい」という逆説的な面もあるように思えた。

感染症の発生

楽観

深刻化

街封鎖

地獄の状況と正義の行動

開放

この大きな流れは、現実世界と大いに重なる。けれど、重なるがゆえに、「出来事」や「状況の推移」、つまり大枠の動きに過度に意識が集中してしまう恐れがあるかもしれない。「その先(自分たちの未来)はどうなっていくの?」と。この意識が強くなり過ぎると、事の流れを早送りで確認したい衝動に駆られる。

そうなったときに、この本が500ページ近くを費やして綴っているディテールは、疎ましく感じてしまうかもしれない。けれど、この尋常じゃないディテールにこそ、この物語の良さのほとんどが編み込まれている。特に、心境・感覚の描写が凄すぎる。「容赦ない描写」と言ってもいいかもしれない(韻を踏んでいる......!)。

読み終えての大きな感覚としては、昨日書いた通り、このコロナ騒動に対する自身の態度が固まってきた。

大きなヒロイズムよりも、足元の誠実さを。

きちんとレビューを書くためには、もう一度読み返さなければならないと思う。他に読みたい本がたくさんあるのに(すごい買い溜めしている)、それでもすぐにもう一度読み返したくなるこの物語の魔力に脱帽。一人ひとりの人物の振る舞いや心理描写を、もっともっと細かく追いたい。


ちなみに、買い溜めしている本の中には、同じように「感染症」を扱ったものが多数ある。

著者はあの『ロビンソン・クルーソー』を書いた作家・ジャーナリストであるダニエル・デフォー。舞台はロンドン。この作品は実際の公的文書や個人の記録を基に再現されている。

「世界の読むべき小説100」みたいなリストに入っていたのをかつて見て、ずっと気になっていた本。突如失明し、視界が真っ白になってしまう......という感染病の世界を描いたフィクション。なんと3月に文庫版が出版されていて、なんというタイミングだと思い購入。文庫版訳者あとがきが去年12月に書かれているので、コロナの事態を受けて急いで制作したわけではないことがわかる。

ベストセラーになってからだいぶ時間が経っていて「いまさら」感がすごいけれど、生物学者(歴史学者だと思っていた)の視点から見た病原菌にも触れてみたいと思い。人類史レベルの大きな歴史を振り返りたいという気持ちもあったので、ちょうどいい。


どれから読もうか迷ってしまう!

この「どれを読もうか迷っている時間」を「どれでもいいから読む時間」に使えば、どれだけ読書量が増えるだろうか......そんなつまらないことは考えてはいけない。この「どれがいいかな」の時間すら、本好きにとってはとても幸せな時間なのです。


『キングダム』アニメシリーズ第3弾開始まで、あと2時間......最高に盛り上がる合従軍編。どれくらいの山場かと例えるならば、『ドラゴンボール』におけるナメック星(フリーザ)編であり、『幽遊白書』における暗黒武術大会(戸愚呂)編であり、『るろうに剣心』における京都(志々雄真実)編である。

ドキがムネムネです。

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