実際に計算してみる(グリコレーティングの場合)

グリコレーティング (Glicko Rating System) の計算方法を前項までで学んできたので、実際の試合データを使って、イロレーティングの時と同じように計算してみようと思います。

算出にあたって

今回使ったデータは、イロレーティングの時と同じで、1993年5月15~16日に行われたJリーグの5試合です。
この試合は、Jリーグが開幕して最初の試合で、10チームにより行われました。

各チームのレーティングは初期値である1500、レーティング偏差も初期値として推奨されている350で算出してあります。

表計算ソフトとして、引き続き、Googleスプレッドシートを使っています。

算出結果

試合結果およびレーティングの算出結果は以下になります。
ホームとアウェイで変動幅が違うことがあるので、1試合をホームとアウェイに分けて、2行にしています。

Jリーグ開幕節のデータを使って算出したレーティング (Glicko)

いずれのチームもレーティングが同じで、引き分けも無かったため、勝ったチームに+162ポイント、負けたチームに-162ポイントが加えられました。
イロレーティングの場合は+10と-10だったので、だいぶ変わりました。

レーティング偏差によって、変動係数Kも約485となったため、レーティングに大きな影響を与えています。

算出結果(得失点差とホームアドバンテージを考慮した場合)

得点差やホームの優位性を考慮したバージョンも作ってみましたが、イロレーティングのほうでやったような計算方法では、得点差の調整がうまくいきませんでした。

変動係数を1.5倍とか2倍とかして調整する方法なのですが、前回は20だった変動係数が、今回は485と大きな値なので、これが2倍になると異常に大きなレーティング変動となってしまいました。

そこで今回は、実際の勝率(s)を調整する方法としました。
これまでは勝ちは1、引き分け0.5、負け0で計算していましたが、次のように変えました。

1点差勝ち 約0.83、2点差勝ち 0.9、3点差勝ち 約0.94、4点差勝ち 約0.97
1点差負け 約0.17、2点差負け 0.1、3点差負け 約0.06、4点差負け 約0.03

点差によって、グラデーションをつけた値を付けてみました。
もとはチェスのレーティングのために作られている仕組みなので、勝利、引分、敗北の3種類以外に区別しようがなく、点差による仕様などもともと無いのですが、サッカーの場合は点差によって、ある程度の強さの違いも評価できるだろうということで、組み入れてみました。

この結果、レーティングが大きく離れていている対戦のうち、上位のチームが1点差で勝った場合などで、勝ったのにレーティングが下がる、という現象が発生する可能性があります。

本来なら大差で勝ってもいいのに1点差しかつかなかったということは、レーティングほど実際の実力は離れていないかもしれない、と考えられるので、勝ってもレーティングが下がるのは問題ないかな、と思っています。
また、下がるといっても、ほとんどが10未満という下がり幅になりそうです。

得点差とホームアドバンテージを反映したレーティング

この結果、5点差ついた鹿島vs名古屋以外は、1点差だったので、変動幅もだいぶ抑えられました。
また、ホーム側が勝った場合93の変動幅が、アウェイ側が勝った場合124となっています。同じ1点差ですが、ホームアドバンテージのせいで、30ほどの違いが出ました。すこし感覚的に差が大きく出過ぎてるような気がしますが、このあたりはもう少し検証が必要そうです。

算出を振り返って

イロレーティング時と比べて、おおきくレーティングが変動する結果となりました。開幕節ということで、レーティング偏差が大きいため変動幅も大きくなるのは当然ですが、これがどのように収束していくのか、この先の変動も気になるところです。

なお、今回は使いませんでしたが、時間経過によってレーティング偏差が増える定数cの設定も考えなくてはいけません。(シーズンオフをはさむとレーティングの信頼度が下がるという設定)

今回も参考として、作成したGoogle スプレッドシートを貼り付けておきます。興味があるかたは以下のリンクからご覧ください。

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