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雨宮天さん4thアルバム「Ten to Bluer」感想文

タイトルのとおりですが、2024年3月27日発売の雨宮天さん4thアルバム「Ten to Bluer」の感想文です。天さんが感想待ってます、とのことだったので何か少しでも、と思って書き始めましたが、案の定めちゃくちゃ長文になってしまいました。
長いですが同じようにこのアルバムを聴いた方や、興味を持ってくれている方と感想を共有できれば幸いです。以下、楽曲ごとに感想を書き散らしていますのでよろしければ。


01 Fireheart

「燃やし切れ」「焼き尽くせ」という言葉が印象的な、強い曲だなあ…と思いながら聴いていたのですが、最後に出てくる「生き尽くせ」というメッセージは、これは雨宮天さんご本人の生き様と重なるようなところもあり、クール&ダーク系ロックという天さん楽曲のど真ん中直球的な感じもあり、10周年を飾るアルバムの1曲目にとてもふさわしい曲のように感じました。
ワンフレーズめからかなり強めの声色を使っているのは、これまでの曲たちとは少し違うところで、様々な経験を重ねてきた天さんが持てる引き出しの中から「この声」を選んだところに、「こういうアルバムだぞ」っていう方向性が示されている気がします。

楽曲とは直接関係ないのですが、最近天さんが出演されたアニメ作品で、「ひきこまり吸血姫の悶々」の悪役、ミリセント・ブルーナイトの演技にゾクッとさせられたのを思い出しました。天さんは歌うときにも曲の登場人物を演じる、ということをよく言っていますが、その演技の幅、引き出しはどれほどあるんだろう、と。10年続けてきた重みを感じる1曲めです。

(断然)(当然)(瞭然)
とか
(until the end)
とかの部分は、ライブでのコールを意識してるんでしょうか。そういうところも楽しみです。
あと歌詞では1コーラスめで
「まるでハーピー」だった部分が、2コーラスめでは
「君はハッピー?」になっているところがオシャレだなあと思いました。
ハーピーはいつもお腹を空かしている貪欲な悪魔・・・天さんのイメージ?

02 BLUE BLUES

天さんの作詞作曲。たぶん(間違ってたらごめんなさい)この曲はCのブルーノート音階(E♭、G♭、B♭)を使ってると思うんですが、天さんのことだからBLUESと題した曲を作るにあたってブルーノートスケールを学ぶところからやったのでは?と勝手に想像しました。
天さんが初めて作曲した「火花」を聴いたときに「あっ、この人センスの塊だ・・・」って思った記憶があるんですが、(「口元偽るルージュ」のメロディラインとコード進行にビビりました/長くなるのでまた別の機会に)理論とかセオリーを知らずとも名曲が生まれる天才タイプというよりも、天さんってめちゃくちゃ地道な努力を重ねて表現してる人なんですよね。それを知って聴くと、どの曲もまずリスペクトを感じてしまいます。

ただ、天さんらしいなあと思うのは、ブルーノートって「憂い」を表現しやすい音階のはずなんですが、この曲はメロディラインが上昇しよう上昇しようとしてるように聴こえるんですよ。サビの「ハートエンジン吹かして」がそうだし、大サビ前「ビビッドな青さで!」からの上昇転調は、憂いなんかぶっ飛ばして上を目指してやるぜ、みたいな感じがして大好きです。
個人的にはLINDBERGの川添さんがベース弾いてくれてるのも驚いてベース部分を聴き直しました。LINDBERGからは渡瀬マキさんもTrySailの「Good Luck Darling」にも参加してくれてますね。前向きなメッセージ性のある曲を名ミュージシャンたちが支えてくれている感じも嬉しいです。

あっそうだ、ブルースといえば、雨宮天さんがいつの日か「BLUE NOTE」でワンマンライブやってくれるのを密かに心待ちにしています。

03 衝天

まずこの曲めちゃくちゃカッコいいけどめちゃくちゃ難しくないですか・・・?ってのが最初に聴いた印象でした。
デビュー曲「Skyreach」と同じ作詞家さん作曲家さんコンビということで、Skyreachから続くロックの系譜を継承しつつも、「10年の経験を重ねた雨宮天さんだからこそ出来る表現」を詰め込んである感じがします。

以前、サビのリズムをより疾走感があるようにシンコペーション入れてもらったみたいな話をされてたと思いますが、そのサビに向かうAメロとBメロの構成がそれぞれ違う曲?というくらい世界観が展開していて、聴き手の感情を思い切り揺さぶってくる感じがあります。それぞれ歌い方も細かく違いますし、サビ終わりのゆるやかなビブラートとかも美しいです。天さんの歌唱は、上手いのはもちろんなんですが「音の終わりの処理」がキレイだなあって思うんです。そういう細かな技術が詰め込まれているところもさすが。

Bメロは三連符を多用してタメ気味に歌っていることで高く翔び立つ力を溜めているようにも聴こえますし、溜めたエネルギーを爆発させて疾走感あふれるサビへ、かと思いきやサビ直前はロングトーンにピアノのフレーズになってるのがオシャレ。この曲、ピアノの使い方がすごくいいんですよね。
そしてなんといっても最後のロングトーンが圧巻。これライブで生で浴びれると思うと楽しみですね。
10周年を迎えてひと息、どころか天を衝いてもっと先へ、って言ってしまう天さん。そういうところが好きなんだよなあ、と思わされます。

04 Love-Evidence

冒頭3曲に「めちゃくちゃ強い曲」を並べといて次がこれ、っていうのは世界観が変わりすぎて「あれ、異世界にきた?異世界に水の女神様?」ってなりますね。ここから3曲はポップ&カジュアルゾーン、なのかな?と思いました。
いわゆるダンスナンバーって天さんの楽曲では限られてるのでそういう意味でも貴重な曲ですよね。もともとダンスには苦手意識が、と言ってる天さんですが、苦手といいながらチャレンジする姿にも感動しますし、この曲のMVでは天ちゃんダンサーズとのダンスがとても印象的でした。
どこかのライブのMCで、「カワイイ系の楽曲もやってほしい」という声に「(そっちはTrySailでやってるので)そんなのやるもんか」みたいなことを言われていたと思うのですが、やるとなったらここまで振り切るんだぞ、っていうところも天さんらしいなあと思います。「どうせやるなら徹底的にやる」っていう姿勢がとても好きです。

05 mellow moment

タイトルの通りメロウで日常っぽいカジュアルな感じの楽曲ながら、これよく聴くと1Aと2Aのメロディ、1Bと2Bのメロディがそれぞれちょっとずつ変化して違うものになってるんですよ。なにそのオシャレな演出。
この曲の主人公は、歌詞から想像すると何かつらい過去を抱えているような、最低限度しか人と関わらずに一人で生きていこうとしていたように読み取れます。ところがそこに現れた「誰か」の影響で、氷が溶けるように、コーヒーに砂糖が混ざり合うように少しずつ心が解れていく体験をしていて、これはどういうシチュエーションなんだろうなあ、と。

妄想ですが、この曲が「Ten to Bluer」というアルバムに入っていて、天さんがいまファンに伝えたいことを詰め込みました、の一部だとすると、「じゃ、またね」と気軽に言えるような日常の中のカジュアルな関係性の相手によって変わっていく自分、みたいなものが表現したいテーマなのかなあと思いました。それはある面では天さん自身のことなのかもしれないし、我々ファンが天さんから受け取っているもののことを歌っているようにも聴こえるし。そういう意味でこの曲がアルバムの真ん中にあるのはけっこう象徴的にも感じます。

06 JACKPOT JOKER

この曲がアルバムのリード曲になってるのはどんな意味が込められてるのかなあ、と考えながら聴きました。

まず、ちょっと口ずさんでみるとわかるけどこの曲もめちゃくちゃ複雑で難しいんですよね。メロディのジャンプも多いしピッチを当てるだけでも相当歌いこなすのは大変そう、と思います。
技巧的なところに注目して聴いてみると、たとえば1B「永遠に眠ってるつもりなの」の最後と、サビ「甘く絡みついたDevil Eyes」の最後は同じB音(シ)なんですが、サビの方だけファルセットで歌ってるんですよね。
自分の観測範囲では、天さんはhi-D(高いレ)くらいまではファルセット使わずパンチの効いた地声で歌ってる曲もあるんですが、この曲に関してはかなり細かく歌唱プランを練って「どの部分をどんな声で聴かせるか」を考えてあるように感じました。

レコーディングの1時間前?に「悪戯っぽい、挑発的な感じで歌いたい」と決めた、とインタビューでも言われてましたが、今までやったことのない、見せたことのないキャラクターを演じよう、というのは声優・雨宮天さんの技術を詰め込んだところであり、JOKERとかペルソナ、という言葉が出てくるこの曲はそういう天さんのひとつの新たな表現=仮面を見せようとしてくれたものなのかもしれない、と思います。まだまだ見せたことのないものを見せてくれそうな、10周年からもっと先の天さんもより楽しみになるような、そういうメッセージだと受け取りました。

個人的なことですが、天さんの声に興味を持ったきっかけのひとつはアニメ「よふかしのうた」のナズナちゃんなんです。本当はピュアで可愛いところをたくさん持っていながら、ちょっと雑なところとか乱暴なところとか、悪戯っぽいところとか、そういうキャラの幅広さがとても好きで。演じる天さん自身にもそういうところを感じますし、この曲にも現れている気がします。

あと、この曲はとにかくMVが強いです・・・みんなMV見て!最高だから!
初回盤に付いてくるアナザーエンドも見て!最高だから!


07 情熱のテ・アモ

天さん作詞・作曲。スパニッシュな感じがカッコいいけどこれバッキングのリフとか、けっこう「情熱大陸」意識してるよね?(編曲の宮永さんの遊び心でしょうかw)
天さんが作る曲、メロディの特徴として「そこ通るの?」みたいなところがあるんですよね。コード進行自体が独特なケースもあるけど、「そのコードだったらメロディは普通こんなふうに行くよね」っていう通り道をあえて通らない部分があるというか。
この曲だと、たとえば冒頭の「ヒールの音鳴らし」の「鳴らし」の部分とか。
最後の歌詞「情熱のテ・アモ」のラスト音も、G(ソ)で終わってるけど、自分だったらたぶん最後の音だけC(ド)にしてオチを付けたくなっちゃうなあと思ってああ自分は凡人だ・・・と頭を抱えたとこなんですが、ぜったいここはGのまま動かないほうがオシャレなんですよね・・・
特に作曲された曲のメロディに強く感じるんですが、天さんは「普通で良しとしない」「人と違ったことをやってやろう」みたいな姿勢がありますよね。
この曲もそういうところをバチバチに感じて、すごく刺激になったしライブで聴くのが楽しみな一曲でもあります。

アルバムのインタビューで天さんは作曲ソフトのCubeseを使ってデモ作ってるという話を読みました。自分もへなちょこながらDTMをずっと趣味としてやっていて、天さんの作曲される曲にはめちゃくちゃ刺激をもらっています。StudioOneという別の作曲ソフトを使っていますが、少しでも天さんと同じ景色が見られるように、これを機にCubaseに乗り換えようかなあ、なんて思っています。

08 風燭のイデア

和ロックを作ってほしい、というファンの声に応える形で天さんが作った曲ということで楽しみにしていました。
TrySailの「Sunsetカンフー」(花鳥風月~)、「Ah! La Vie En Rose!!!」(旅立とう~)でも歌唱法としてメリスマ(こぶし的なフェイク)を多用していて、天さんのこぶしとかメリスマは大好物なので和ロック作るならきっと入るのでは?と思ってたらめちゃくちゃ使ってくれててそれだけでテンション上がりました。これが入ると雰囲気がぐっとオリエンタルになるし、音の処理がとても細やかで美しいんです。
それから、天さんの言葉選びとかのワードセンスが好きなんですよね。タイトルを見たとき、まず「風燭」という言葉が目につきました。日常生活でまず使うことのない語ですが、たまたま僧侶の知人がいて「風燭滅え易く、良辰遇い難し」という弘法大師の言葉を教えてもらったことが合って知っていました。風前の灯火のように生命は儚いものであるし、良い星に巡り合うことは難しい(だから自ら善い行動を心がけよう)という意味で、とても良い言葉だと思ったんですよね。天さんの生き方と通じるものもある気がして。

天さんがどこからこんなボキャブラリーを持ってくるのか、とても興味がありますが、インタビュー等によるとまずは百人一首を学ぶところから初めたとか・・・ストイックさに尊敬しかないです。
その歌詞がとても魅力的でした。歌詞って意味はもちろん、言葉のリズム感が大切なのもありますが、「音としてのハマりの良さ」みたいなのはなかなか狙って作るのが難しいだけに、ハマった時はめちゃくちゃ気持ちいい!ってなるんですよね。この曲はサビの「天つ風に乗って」がその意味で抜群に良くて、またそこで「天つ風」って言葉を選んだ天さんほんとに最高・・・ってなりました。
ディナーショーで「初紅葉」生で聴けて本当に感動したのを思い出しました。演歌や歌謡曲の流れを経ての天さんの和ロック、まだまだ聴き込んだら味が出てきそうで楽しみな楽曲になりました。

09 the Game of Life

ギャンブル、っていう言葉が出てくるので、リード曲のJACKPOT JOKERとの関連性も気になりながら曲調は全く違う洋楽調のナンバー。
天さんの楽曲って比較的二拍三連符が多い気がするんですが、この楽曲だと
Bメロの「居場所は大舞台 浴びるスポットライト」のとこですね。ここも含め、全体的にほんのちょっとだけジャストテンポよりも後ろノリになっていて、そこが独特のグルーヴ感を生んでいる気がします(そう聴こえてるだけなので違うかもしれませんが)。天さんって言葉の音をリズムに置くセンス、みたいなのがずば抜けてるんですよねえ。
タイトルもそうですし、歌詞のフレーズでも例えば「レール踏み外しても笑ってりゃ大どんでん返しも甚だあり得るGo On!!」なんて言ってるように、人生なにがあるかわからんよ、だから遊ばなきゃ、行動しなきゃだよ、って背中押してくれる感じは、最高に天さんだなあああ、ってなりますね。

昨年11月に開催された天さん初のディナーショーに参加したのですが、あまりに「特別な時間」すぎて未だにその余韻が残っている気がします。
あんな素敵な時間、空間に出会えたのは本当に幸せだったし、そういう瞬間にまた立ち会えるように、自らどんどん行動して、この複雑な「Game of Life」を乗りこなしていかなきゃ。そう思わせてもらえる曲でした。

10 SOS

この曲、作詞は上坂梨紗さんで天さんが書いたわけではないですが主人公の女性はやっぱり天さんなんじゃないかなあって思うんです。
雨宮天さんっていうアーティストは、圧倒的なパフォーマンスを持っているのに、その力で押し切るタイプというよりは、不安なときはその不安を、弱い部分はその弱さを我々ファンに見せてくれるところがあるんですよね。
弱さを見せる、ってそれ自体が勇気の要ることだと思うんです。でも同時にその中からなんとか前を向き、より先を、より高いところを目指そうとする姿が我々にとって眩しく見えているし、そこから多くの力をもらっているんだよなあ、と思います。

タイトルが「SOS」だし、歌詞も「人生って苦行みたいね」なんて言ってるし、生きてると本当にいろいろあるよね、しんどいよねって共感しながらも最後には「また私 前を向くの サラバSOS」と言ってくれることに逆に励まされる。天さんはそういうメッセージをずっと我々に送り続けてくれている気がしています。
この曲に描かれている内容に対して曲調はかなり明るく前向きで、辛い部分もしんどい部分も認めつつ、だけど前を向くよ、一緒に行こうよ、って言ってもらえている気になれるので、そういう点でアルバムの終盤にこの曲が置かれていることにも意味を感じました。

11 Dear Blue

多くのファンが同じことを発信してるのを見ましたが、自分もこの曲はもう初手からダメでした。泣きました。まだまだ何回聴いても泣いてしまいます。
ここまで10曲、それぞれの楽曲の世界観で様々なキャラクターを「演じてきた」天さんが、急に仮面を外して、あるいは鎧を脱いで、等身大の「雨宮天」として我々に届けてくれる言葉がこれですよ。胸の奥のずっと深いところをぎゅっと掴まれるような、感動とも切なさとも愛おしさとも言える感情が溢れてきて耐えられませんでした。

思い返せば、天さんの楽曲で初めて泣いた記憶は、アニメ「一週間フレンズ」のキャラソンとして歌われた「奏」でした。まだ天さんのことを知ったばかりで、こんなに素敵な声の人がいるんだ、と感動して少しずつ出演作を見始めたころ。アニメの切ないストーリーと、主人公の藤宮さんを演じる天さんのひとつひとつの言葉が刺さって、オリジナルも何度も聴いたよく知ってるはずの曲なのに気づいたら涙が流れていました。
「奏」の歌詞で好きなところはたくさんあるんですが、

君が僕の前に現れた日から
何もかもが違く見えたんだ
朝も光も涙も、歌う声も
君が輝きをくれたんだ

の部分は、まさに自分にとっては天さんのことで、天さんに出会っていなかったらこんなに素敵なたくさんの体験はなかったんだな、と思います。

その天さんから、

頑張る君がどうか独りにならないように
不安に負けないようにこの声を届けたい

なんて言われたら、感涙しかないです。

10年間、つらいこともたくさんあったと思いますが、ずっとファンのためにたくさんのメッセージを届けてきてくれて、寄り添ってくれて感謝しかありません。
自分は1年とちょっと前に天さんのことを知ったばかりのまだまだ新参『青き民』ですが、この1年くらいで駆け足で天さんの10年間を追いかけて、追いかけながらたくさんの感動と力をもらっていて、本当に宝物のような出会いだったと思っています。この曲の「Blue」は天さんから見た青き民のことなのだと思いますが、我々ファンから見た「Blue」=雨宮天さんに伝えたい言葉は、この曲の最後にちゃんと書かれていました。

これからも 元気でいてね
ずっと笑い合おう Dear Blue

本当に素敵な作品をありがとうございます。
これからもずっと応援しています。




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