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【謎はいつもそこに】虫の気持ち

昨日の朝、学校へ行く前の息子に「なんか階段のところで虫の羽音がしてるんだけど、すごいのがいそう」と言われた。見るとカメムシが1匹いるだけだった。
息子はあんまり腑に落ちない顔をしていたけど出かけていき、私は家事を始めた。一階と二階を行き来していて何度目かに階段を上った時、とんでもない羽音が聞こえて驚いた。
音の方を見ると、人生で見たことのない大きさのオオスズメバチだった。

彼(彼女)は、階段の踊り場のはめ殺しの窓から必死に出る方法を探っていた。
そこにあるエネルギーは焦燥・疲労・不安。
ガラスを必死に開けようとする音がひりひり感じた。

長い箒の先をオオスズメバチの前に持っていき、大丈夫、大丈夫だから乗って、とテレパシーを送る。
虫は人間の気持ちやエネルギーを瞬時に受け取る生き物だと思うのだが、さらにミラーリングが強い(と思う)。私たちが恐怖を感じた瞬間、同じか、それ以上の恐怖を瞬時に味わっている。
だからこそ「助けるから大丈夫だよ」と先に伝えてあげた方がお互いにとっていいと思うのだ。

少し落ち着いたオオスズメバチは、箒をよじ登ってちゃんと上に乗ってくれたので、窓から逃がすことができた。

その後、庭に行くと瓢箪が初めての花を咲かせていた。
瓢箪は初めて育てているので、やっぱり花が咲いてくれると嬉しい。
でもよく見ると葉っぱのあちこちに茶色い小さなウリハムシが4匹ほどいることに気づいた。
私は収穫が必要な農家じゃないから、農薬や殺傷方向のアイデアは採用したくない。とりあえずの酢水をかけてみたけど全然効果がないので、次に薪ストーブの灰を土の部分に撒いてみた。
ウリハムシはどうやら灰の匂いが苦手らしいのだ。
すると早速、1匹のウリハムシが飛び立って私のTシャツに止まった。
耳を傾けてみたけど、文句や抗議のエネルギーではない。10秒くらいすると庭の木々の方へ飛び立って行った。
しゃがんでプランターの様子を見ていると、2匹目、3匹目とウリハムシが引っ越して飛んで行く。いや灰ってすごいな。

ふと見ると、最後のウリハムシが「どうしよう、どうしよう」とオロオロしていた。どうして逃げないんだろう?と見ていると、瓢箪の幹に泡がついていて、その泡が大丈夫かどうかの確認をしていて、手で触ったり、オロオロしているのである。
もしかして赤ちゃんがいるから逃げられないのかな?と思った。
でも調べるとそうではなく、泡の正体はアワフキムシという別種の虫だった。
中には小さな成虫が1匹だけ入っていて、手足を動かしている。
母性なのかと思って感動したのは勘違いだったけど、種を超えた友情にも十分感動する。

シャベルに乗せて、2種を一緒に移動することにした。
が、私が雑すぎて、どちらも灰まみれになってしまった。これはただひたすらに申し訳ない痛恨のミスである。
ウリハムシは「くっせー!」と言わんばかりの動作の後、飛び立って行ってしまった。
アワフキムシは泡から出て歩き出し、雑踏(雑草)に消えて行った。その姿はとても小さいしゆっくりだったけど、なんか渋かった。

今朝また瓢箪を見ると、二個目の花が咲いていた。ウリハムシはどこにもいない。猫と一緒に朝日を浴びてくつろぎ、それから草花や庭の様子を見ていった。
うちの庭は茗荷がどんどん出てくるのだが、日に日に勢いを増す茗荷の葉っぱを見ていたら、昨日のウリハムシが3匹止まっている!

居場所を失って、あれから茗荷に行き着いたのか、と感心した。
それからまた猫のところへ戻り日光浴していると、近くのドクダミの葉にもう一匹のウリハムシを見つけた。これで4匹全員の姿を確認できた。

その一匹は最後に飛び立ったアワフキムシの友達かもしれない、と思った。
人間の世界でも、所属するコミュニティーに合わなくて他の年齢や立場の人と一緒にいる方が楽なことってあるから。
でもそれはまた私の勘違いかもしれないし、正解はわからない。
孤高のウリハムシは、ドクダミのハートの葉っぱが似合っていた。



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