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ファンケル総合研究所 サプリメント開発の舞台裏Vol.2

錠剤ができるまで

編:ここまでのお話でサプリメントの剤形については理解できました。ここからはメインの剤形である錠剤について詳しくお聞かせ頂きたいと思います。

平田:かしこまりました。錠剤はサプリメントはもちろん、医薬品やラムネのようなお菓子に至るまで、世界中で用いられているポピュラーな剤形ですが、実は全て原料は粉なんです。

サプリメントになる粉を調製する平田さん

編:粉が錠剤になるんですか?

平田:はい。こちらをご覧ください。粉を上下からプレスするだけで錠剤が出来上がります。

粉が一瞬で錠剤になる様子

編:おお!一瞬ですね。1000kgも加えているんですね!

平田:そうですね、原料によりますが、大体1000kgの力を加えると錠剤が作れます。この工程を「打錠(だじょう)」と言います。通常はステンレス製の杵と臼で加圧しますが、特別にアクリル製の臼を作成して撮影した世界でも珍しい、シースルー打錠の映像です。

編:面白いですね、圧力を加えるだけでカチカチの錠剤になるなんて。先ほど剤形を決定する際のお話で「生きた菌を入れると死んでしまう」というのはこの圧力によるものなんですか?

平田:そうです、1000kgもの力が加わると菌はほぼ死滅してしまいます。これが錠剤の弱点のひとつではあるのですが、一方で「一瞬」でできてしまうのが錠剤の強み。工場では、超高速打錠が可能なので、短時間に大量に生産できるため、製造コストを低くすることができるんです。

錠剤を大量生産する

平田:ご覧下さい、生産現場ではこんなふうに超高速で錠剤が生まれているんですよ。

編:凄い!メリーゴーランドのように回転して、怒涛のように錠剤が流れてきていますね。先ほどのシースルーで見た工程が一瞬で完了しているということなんでしょうか。

平田:1秒以内に完了しています。この回転式の機械はロータリー打錠機といい、1本の杵が1周するごとに錠剤が1錠排出されます。1分間あたり60回転のペースで回転しているので、1分間60錠のペースです。さらに機械は50本の杵が備わっているため、60×50=3000、1分間に3000錠製造しています。

編:1分間に3000錠!それはすごいペースですね、確かにこんなに製造効率がいいならお菓子にも錠剤が採用されているのは納得できます。それにしても分間3000錠ということは1時間に18万錠…とても想像できない数字です。

平田:カロリミットだと1製品あたり90錠入っているので、18万錠は2000製品分に相当します。1日で8時間として約1万6千製品の規模ですが、少なくともこの程度の生産スピードでないと需要に応えることができません。

編:確かにそうですね、データによるとカロリミットは5.3秒に1個売れている(2000年5月から2022年9月までの販売実績)とのことなので1日あたり16301個、ほぼピッタリですね!

平田:偶然にもピッタリ合いましたが、需要の変動によっては、複数の機械でもっと生産することもあります。そんな時にスムーズに生産できないと製造現場が混乱してしまう。そのため、実際に私たち研究員が新製品を作る際には、機能や品質は勿論ですが「生産スピード」を満足する設計をすることが求められます。

編:確かに、どんなに優れた製品を設計しても大量生産できなければ世に流通できない「絵に描いた餅」になってしまいますよね。

企画と工場を繋ぐ架け橋になる

平田:はい。ファンケルは世の中の「不」を解消する企業ですから、一人でも多くのお客様に「不」を解消する製品を届けることが前提です。だから私たちは少なくとも大量生産できる「粉」をデザインすることが使命。実際に製剤技術者の仕事は、商品企画からの新製品設計の依頼に始まり、製造工場への製造移管に終わります。

編:研究所だけでなく、工場にも行って仕事をするんですね。

平田:製品開発は研究所と工場を行き来することが多いのですが、特に製剤開発業務はその傾向が強いです。2021年4月に竣工したファンケル三島工場はサプリメント専用工場で、頻繁に出張しています。

製品の立ち上げ時には数日にわたって工場の方々と一緒に製造条件を検証、製造ラインを完成させます。三島工場は見学も可能ですので、ぜひ一度足を運んでいただければと思います。

編:そうですよね、私も三島工場へ見学に行きました。綺麗で見学コースも充実していて、広々していますよね。ひっきりなしに錠剤が流れてきて、製品が次々に生まれてくる様子は圧巻です!下記URLから、現地見学・オンライン見学が可能です。

平田:これまで様々な製品化の業務に携わってきましたが、どんなものであれ最終的に製造できるものとして工場に引き渡すことがゴールなんです。
 ですから製剤技術者の仕事は「飲みにくい成分を飲みやすい形に設計し、大量生産できるようにすること」と表現することができます。

編:デザインして、量産化する。大変なこともあるかと思いますが、自分自身が設計したものが世に流通するというのはなかなかやり甲斐がある仕事ですね。

平田:はい、無事に工場の皆さんに生産ラインを引き渡せた時の充実感はひとしおです。さらに自分の手がけた製品が発売日前に手元に届いたり、店頭に並ぶ様子を見たり、販売後の口コミ情報を確認したり。開発担当の醍醐味ですね!
 一方で、製剤開発は一筋縄ではいかないことも多くて…

編:もちろん苦労がありますよね。そんな「製剤開発の難しさ」については次回掘り下げて行きましょう!

Vol.2 まとめ

・錠剤は粉を杵と臼で約1000kgでプレスすると完成する、非常にシンプルな工程なため大量生産に適している。
・飲みにくい成分を飲みやすく、かつ大量生産化することが、製剤技術者の役割で、研究所と工場を行き来している。

次回予告
 飲みやすさを考えながらの設計は、実際にどのように行われているのか。ファンケルの製剤技術の見所を取り上げていきたいと思います。お楽しみに!



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