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ファンケル総合研究所 サプリメント開発の舞台裏Vol.3

錠剤作りの難しさ

編集:前回は平田さんのお仕事である製剤開発の概要についてお聞きしました。成分を飲みやすい形にデザインし、大量生産できるようにすること、これが製剤技術者のお仕事でしたね。

平田:はい。研究所でサプリメントの形や大きさを設計し、工場で現場の方々と一緒に大量生産化を実現します。自分の手がけたものが世に出るので、とてもやり甲斐のある仕事なのですが、一筋縄ではいかない非常に難しい面もありますね。

編:実際にどんな難しさがあるんでしょうか?

平田:まず第一に、サプリメント成分だけでは錠剤にすることはできない、ということですね。例えばコラーゲンだとしたら、コラーゲンの粉100%でプレスしてしまうと、プレスしている杵から錠剤が離れなくなってしまいます。ハンマーで叩かないと離れないほど強く固着してしまうので、全く生産にならないんです。

編:ハンマーで錠剤を叩く!?想像ができない状況ですね。前回高速でメリーゴーランドのように高速回転する様子を見ましたが、こんな状況では生産にならないのは納得です。

平田:一方で1000kgでプレスしても、全く固まらなくてサラサラと粉に戻ってしまうものもあるんですよ。他にも錠剤に縞模様が出たり、取り出した途端に割れてしまったり、トラブルの事例を上げたらキリがないほどです。
 とにかく1000kgもの力で一気に圧縮するので、想像できないトラブルに見舞われることが良くあるんです。そのため錠剤にする粉には綿密な準備をしておく必要があるんです。

一瞬で高圧縮する工程だけに、想像もしないトラブルに見舞われることも。

編:綿密な準備とは、具体的にはどんなことをするんでしょうか?

平田:まず基本的な準備としては、粉が凝集してダマ(塊)にならないように篩(ふるい)がけをしてあげたり、均等に混ざる複数の成分があれば、機械を使って均等に混ざるようにします。

編:篩がけはケーキ作りの時にやっているイメージそのものですね。専用の機械で混ぜるというのも面白いです。

平田:はい、研究所の実験室で粉を篩っている様子はまさにケーキ作りそのものですよ!

実験室で粉を篩にかける様子

錠剤化をサポートする「加工助剤」

平田:これら基本的な準備に加えて加工助剤と呼ばれる、錠剤として成形する助けをしてくれる原料を使用し、粉の性質を錠剤にしやすくものへと加工します。加工助剤は様々なものがありますが、例としてディープチャージコラーゲンの原材料表示を見てみましょう。

編:コラーゲンやビタミンCといった成分だけではなく、セルロースなど見慣れない名前がたくさん書かれていますね。この成分以外のものが加工助剤ということですか?

平田:そうです。ステアリン酸カルシウムは錠剤が杵にくっつくのを防止してくれたり、セルロースは錠剤を固まりやすくする代表的な加工助剤です。これらを配合することで、成分を錠剤化しやすくし、大量生産を可能にしてくれるんです。

編:こういった加工助剤は、たくさん入れれば入れるほど、錠剤化・大量生産化へのハードルが下がるということでしょうか?

平田:確かに加工助剤を増やし、サプリメント成分濃度を下げれば、錠剤化の難易度は下がります。でもそうすると、錠剤中のサプリメント成分は薄まって、結果錠剤は大きくなったり、粒数が増えてしまうことになります。大量生産はできたとしても、これって毎日続けるサプリメントにとっては好ましくないですよね?

編:はい、サプリメントは毎日のことなので、粒数が多い、粒が大きいのは飲みにくくてしんどいです。

技術でサプリメントを小型化

平田:冒頭でもあった通り、成分を飲みやすい形にデザインすることが製剤技術者の役目。そのためにサプリメントの粒数をできるだけ少なく・小さくするために、大量生産を可能にしつつも、できるだけ高濃度で成分を配合できるように技術を駆使しているんです。

編:「できるだけ高濃度」にする、ということは「加工助剤」をできるだけ少量に抑える、ということですね。どんな技術を使ってこれを達成しているんですか?

平田:加工助剤の量を抑えるための方法はいくつかありますが、代表的なのはコーティング技術ですね。確かに固まりにくい成分に加工助剤の粉を混ぜれば、錠剤にしやすくはなります。しかし、ただ混ぜるだけだとそれなりの量の加工助剤が必要になり、成分は薄まっていきます。
 そこでより効率的に加工助剤を機能させるために、加工助剤を水に溶かしてスプレー&乾燥することで、成分を加工助剤でコーティングしてあげるんです。これにより、ただ混ぜるよりも遥かに少量で効果を発揮するようになり、結果として加工助剤の使用量を減らすことができるのです。こうした技術を採用することで、より成分の濃い、小さな錠剤にすることができます。

コーティング技術によって加工助剤の使用量を抑える例

編:確かに!ただ混ぜるより成分一粒一粒をコートしてあげたら効率が良さそうですね。こういった技術で高濃度化することで、粒を小さくしていっているんですね。

平田:はい、これはほんの一例で、様々な技術で錠剤の少数化・小粒化しています。そして実は商品の企画の時点で、大まかな錠剤の大きさや粒数は指定されているので、指定はクリアもちろん提出期限もです!

編:そうですよね、新製品なので発売日が決まっていますから、もちろん期限がある。期日までにクリアしなければならない、難しさと共にプレッシャーも伴う業務なんですね。

平田:サプリメント成分を、指定の形・大きさ以下に収め、大量生産できるものを期限内に提出すること。これが冒頭に述べた、製剤開発の一筋縄ではいかない非常に難しい一面です。常に新しい技術情報を取り入れながら、より小さく飲みやすくに挑んでいます。

編:商品を見るだけでは伺い知れない尽力があるんですね!そうしてようやく錠剤が完成する…日々飲んでいる錠剤に、愛着が湧いてくるようです!

Vol.3 まとめ

・サプリメント成分100%では大量生産できる錠剤にはならない。
・加工助剤、加工技術を駆使して、大量生産可能かつ、飲みやすい少数化・小粒化されたサプリメントを設計している。

次回予告
技術を駆使して完成した錠剤、でもまだ越えなければならないハードルがあるようです。安心安全品質のサプリメントがお客様の手に届くまで、ぜひ一緒に見届けてください!

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