web小説の書き方講座⑦

Lesson⑦:執筆してみよう。人称の違い

これ相当難しい話ですね。正解はないので、各々好きなようにするのがベストだと思います

とはいえ、小説を書いたことない人には人称と言っても分からないと思いますし、ここが分からないから、小説が書けないと言う人も多いでしょう

なので、それぞれメリットデメリットを挙げていこうと思います。その上で、自分はこっちの方がやりやすそうだから、こっちで書くと言うのを決めればいいと思います

まず、小説で使う人称には主に一人称と三人称があります。一応、二人称というのもありますが、かなり珍しいですし、まあ難しいのでここでは省略します。どうしても気になるって方はご自身でお調べください

一人称と三人称の違いを簡単に説明すると、登場人物の視点になって、その人の視点から物語を語っていくのが一人称です。逆に俯瞰した視点から物語を進めていくのが三人称です

もっと細かい基準はあるのでしょうが、この認識で大丈夫です

まず、それぞれの書き方を拙作より抜き出して例を見ましょう。それから、それぞれのメリットデメリットを挙げていこうと思います。なおここであげるメリットデメリットは私の考えも入ってますのでご注意を。まずは一人称から

一人称の例

 樹くん? それって男の子の名前……。つ、つまり、おっ、男の子の家に行く?! 私はショックのあまりその後に言っていた言葉が全く聞こえなかった。

「――――っていう事なの」

 奏お姉ちゃんは満面の笑みを浮かべる。目がとても喜んでいる。こんな目をした奏お姉ちゃんは見たことがない。

「あ、うん……。わかったわ。じゃあね…………」

 私は力無く、重い足取りで奏お姉ちゃんの部屋を後にした。そこから何をしたのか記憶がなく、気づいたらパジャマを着てベッドの上に横たわっていた。
ツインくる!第1話③より引用



この小説の主人公は美優羽(みゆう)というのですが、一人称ではこの美優羽の視点から、物語が描かれています。まるで、美優羽の独り言のように感じると思います。それが正しい感覚です

言ってしまえば、登場人物の独り言になります。それが、一人称の特徴です。では一人称のメリットを挙げましょう

一人称のメリット
・細かな心情描写が書ける
・キャラが喋るので、世界に入り込みやすい
・それによって、主人公などに感情移入しやすい

この3つが挙げられます。自分の視点なので、自分が思ったこと、自分の感情の動きを書くことができます。これが一人称の大きな武器であります

また、その小説のキャラが喋るので、その世界の雰囲気を味わうことができ、世界観に入り来いやすくなることもメリットに挙げられるでしょう

そして、それらのお陰でキャラに感情移入がとてもしやすいです。主人公などのキャラを推していく場合、非常に有効な書き方となります。ライトノベルなんかはこの書き方が多いような気がします

次にデメリットを挙げていきます

一人称のデメリット
・その人物の視点で起きたことしか書けない
・他の人物の心情描写ができない
・視点の変更が難しい
・視点にした人物の出来る範囲での表現しかできない

以上の4つが挙げられます。これでわかるように、その人物の視点以外のことが全然書けません。なので、さっきの例文で言うと、美優羽が視点なので、奏お姉ちゃんが喜んでいる様子は書けますが、どう思っているかは書けません。本当は何か別のことで喜んでいるのかもしれません。しかし、それは美優羽の視点では分かり得ないことなのです。だから、書けないのです。ちなみにこのオチは私の作品「ツインくるっ!」でご確認ください

また、視点以外のことが書けないと言うように、視点の人物が見ていない、見えないものは書けません。書けないものの具体例は、自分の姿ですね。これは鏡なんかを見ない限り、自分の姿なんて普通見えませんよね。そんな感じで、自分の見たこと、見ている以外は書けません

これを解決する方法として、視点変更があります。要するに、視点になってる人物を変えて書くのですね。そうすれば、最初の視点の人物以外のことも書けるようになります。先程の小説の一部を例に挙げれば、奏お姉ちゃんに視点を変更すれば、奏お姉ちゃんの気持ちや見えているものが書けるわけです

しかし、これには注意があります。それはタイミングと使い方です。区切りのいいところで視点変更をしないと、誰の視点かわからなくなります。先程の小説で言えば、最初は美優羽の視点だったのに、突然奏お姉ちゃんの視点になれば当然読者は混乱します

視点変更をする時は区切りのいいところでしないといけません。また、使いすぎも良くないです。使いすぎると誰が主役なのかがボヤけてしまいますし、没入感を削いでしまいます。更には読者の混乱を招いてしまいます。なので、結構視点変更が難しいのですね。これもデメリットです

それから意外と忘れられがちなのですが、視点にした人物の出来る範囲での表現しかできません。どう言うことか。例えばですが、16歳の特に文学に精通しているわけでもない、極々一般的な少年がいたとしましょう。その少年が突然こんなことを言い出したらどう思いますか?

支持してくださった方を裏切る形となり、忸怩(しくじ)たる思いでございます。

違和感がありませんか? 普通こんなこと言わないよなと思いますよね。そうです。一人称は、視点にした人物ができる表現をしないと違和感を覚えてしまうのです。その人物がしない表現や言葉遣いをしてしまうと、浮いてしまうのです

これは情景描写や人物描写でも同じです。同じような16歳の少年が、詩的に叙情的に表現してしまうと違和感が出てきてしまうのです

なので、一人称で書く場合はその人物のしうる表現までに抑えて書く必要があります。これは意外と忘れられがちです。つい難しい言葉や表現を使いたくなるのですが、視点の人物に合わない場合はグッと抑える必要があります

以上が主な一人称でのメリットとデメリットになります

次に三人称の例と、メリットデメリットを書いていきましょう

三人称の例

 よく晴れた暖かい秋の夕暮れ。陽はかなり傾き始め、空は紅葉色に染まっている。そんな中黒髪の少女、高浪芳佳(たかなみよしか)は、公園の隅にあるベンチに座りながら、一人寂しく街の書店で買ってきた本を、つまらなそうに読んでいた。

「話題の作品だったから買ったけど、イマイチ面白くない。これなら前に読んだあっちの方が面白かった。買って損した」

 不満そうな表情を浮かべながら、右手でぱたんと本を閉じる。そして、読書用のメガネをケースに直してから、ゆっくりと立ち上がり、グッと背伸びをする。それは本という魔物から解放されたようにも見えた。その後少しぼーっとしてから家に帰ろうとしたときだった。
気ままに短編集 恋敵(ライバル)友情より引用

こんな感じでしょうか。これは誰の視点というものがないですね。強いて言えば、第三者から見た視点でしょうか。

こんな感じで、三人称は俯瞰的に物語を進めていく形になります

三人称のメリットとしては次のことが挙げられます

三人称のメリット
・起きたこと全てが書ける
・多人数で話を進めるのに便利
・視点が一定なので、読者を混乱させにくい
・難しい表現や言い回しを気にせず使える

大体この4つですね。まず、俯瞰して見ているので起きこと全てが書けます。なので、主人公のいない所の話なんてのも存分に書けます。これは一人称にない強みです

それから、俯瞰して見ている分多人数を書くのにも優れています。一人称視点だと、誰が誰なのかごちゃごちゃしちゃいますが、その心配がありません

また、視点が常に一定なので、場所が変わったり登場人物が変わったりすることによる読者の混乱を防ぐことができます

最後に、一人称では人物の都合上できなかった、難しい表現とか言い回しを、何も躊躇せずバンバン使えるのですね。難しい表現とかを使いたがる人はこちらの方が向いていると言えますね。まあ、一人称でもそういうのが似合う人物にしてしまえばできるのですが……

こんな感じですから、一般文芸などでは三人称の小説が多いような感じを受けます

話は置いておいて、こう言ったメリットを挙げることができます。一方で当然デメリットもあります。それらを見ていきましょう

三人称のデメリット
・心理描写を書きにくい
・キャラとの距離感ができてしまう
・それによって没入感が削がれやすくなってしまう

以上の3つですね。これらが欠点になります

心理描写に関しては、出来ないこともないです。三人称一元視点や神視点にしてしまえば、出来ないことはないです。ですが、難しいです。一人称とごっちゃになってしまうから、あまりオススメできないです。なのでここではデメリットとして挙げておきます

それから、三人称は俯瞰した視点で見る分、どうしても距離感ができてしまいます。そのせいで、ライブ感や没入感が削がれてしまうという結果に繋がってしまいます。

というようなデメリットが以上として挙げられます。

これで一人称と三人称の話は終わりです。どれがいいかなんてのは一概には言えません。それぞれ向き不向きがありますので、自分のやりたいこと、書きたいことに合わせればいいのではないでしょうか?

次回は描写について書いていきます

それでは次回へ

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