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2024年から始めた『サイバーパンク2077』クリア後感想

「サイバーパンク2077、やるなら今らしい」そんな世間の噂を聞いて、発売から2.3年たったこのゲームにようやく年明けから着手した。夫は発売当時からどハマりしていて、その強烈な薦めもあってプレイし始めたものの、開始10時間くらいまでは一人称洋ゲーfpsに不慣れなこともあり、「作り込みは凄いけど操作の説明少ないしイマイチ乗り切れんな」くらいのテンションで細々やっていた。しかし、イベントをいくつかこなすうちに「あれ、ナイトシティめっちゃ居心地良くね?」と感じるようになり、気づいたらDLCまで約90時間ガッツリ楽しんクリアしてしまった。めちゃめちゃ充実したゲーム体験ができたので、感想を残しておきたい。(大きなネタバレはないつもりです。)

《プレイしやすさの話》
感想に入る前に、このゲーム自体のプレイしやすさについて書いておきたい。発売当初バグも話題になっていたけれど、2024年1月〜2月時点で最初から最後までプレイした感想としては、致命的なバグには出会わなかった。それどころか基本的にプレイ中目立つようなバグはほぼ出会なかったので、アプデでバグ周りはほぼ改善されているように感じたし、もし何かあっても基本的に直前のオートセーブでロードし直せる。ただ、唯一自分は終盤のイベントシーンでなぜかキャラが一名下着になるバグに当たってしまって、演出的にちょっと残念だったので、追加のアプデがもし来るならそうした部分は改善されたら嬉しい。それを加味しても素晴らしい作品だったので、個人的には大方のアプデが完了しDLCも揃った今(正確には昨年秋からだけど)の段階でプレイするのは凄くおすすめ。
ハードは処理速度など考えるとPS4では多分キツイのでPS5かPCがおすすめかと。
去年後半のパッチでスキルツリーなどが見直されて全体的に遊びやすくなっており、メニュー画面から世界観の色々なワードの解説が読めたり、ほぼいつでもラジオが聞けるようになったりして、遊びやすさは他のAAAゲームと比べてもかなりスムーズで充実していたと思う。
チュートリアルは薄めなので、武器強化の素材確保の仕方やサイバーウェアの強化の仕方、ビルドごとの戦い方など、サイパン初心者用のごく簡単な手引き的なものをYouTubeなどで見てプレイした方が進めやすいかもしれない。
では以下から本作の感想です。

生きた街ナイトシティ 


今作の1番の魅力は、とにかくナイトシティが生きた街だということだと思う。
具体的には、そこに住むキャラクター達が、ストーリーやプレイヤー(V)のためにいるわけでなく、彼ら自身が日常を過ごしている街に自分も暮らしていて、その生活がたまたま交わっている、という感じが凄くする。ジャッキー、ヴィクター、ジュディ、パナムといったストーリー上重要な人物達はみな魅力的で、各々の職業や生活を持っており、ふと街中を歩いている時に、今彼らが何してるかな、と気になって電話すると話すことができるし、会いたい時に会いに行けるし、恋人になればデートもできる。彼ら彼女ら自身のナイトシティ住民との人間関係も複層的で、それらが本人との会話や他の人物とのやり取りで垣間見える。
例えば街のタロット占いしミスティとVの相棒ジャッキーは付き合っているが、序盤は意外な組み合わせに感じられるし、それに関するストーリーライン上のイベントがあるわけではない。けれど2人やママウェルズ(ジャッキーの母)との日頃の会話の端々で2人の関係が伝わってくるし、自分は本作のあるエンディングを見終えたあと、この2人の関係に特段言及がなかったにも関わらず、2人のことに思わず思いを馳せてしまった。そういう、作り手から直接的に提示される物語でない部分にプレイヤー自身が勝手に思いを馳せたくなってしまう味わい深い余白がこの街には溢れていて、それがゲーム体験としてとても素敵だな、と感じた。
その他にも、主要人物以外の数多いるNPCにも、その辺ですれ違うモブ住民に至るまでみんな名前がついており、スキャンすると名前や所属が見えることにも驚いた。このゲーム、広さもさることながら高層ビルやアパートも多く高低差が凄まじいので、その分住民も膨大な人数がいるにもかかわらず、この作り込みは凄過ぎる。
人間以外にも、とても全部使いきれない種類の数がある車やバイク、地域ごとの店や医者、それぞれルーツをもったギャングチーム、資本主義バリバリの企業たち、テレビ番組、ラジオがあって、この街にはストーリー上触れられない部分の情報量があまりにも多い。
冒頭で書かせてもらった自分の感じたナイトシティの居心地の良さの要因は、多分この「ストーリー上必要な情報量以外の部分を含めてプレイヤーが勝手に自由にこの街を生きられること」にあって、それが人間関係や組織のようなソフト面から建物や車のようなハード面まで多岐に渡っているから、もう一つの現実として各々が好きな部分を中心に身を預けて没入できるのだと思う。自分は現実の仕事に疲れた時に、あー今日ナイトシティにちょっと帰ろっかな、みたいな感覚すら得ているので、稀有なゲーム体験をしたなと感じている。
思わず設定資料集も買って熟読してしまったが、この資料集も超充実なのでサイパンを楽しみ尽くす上ではぜひ読むべき書籍と感じた。ナイトシティは治安がめちゃくちゃ悪いのも特徴だが、例えばその治安の悪さの背景となるギャングチームそれぞれのルーツやサイバーサイコ、ナイトシティの歴史といった設定がより理解できるよう解説されていて凄く面白かった。ぜひDLC込みのバージョンも出してもらえたらとてもありがたい。

この選択肢を選べば全てがうまくいく、なんてものはない大人なストーリー

サイバーパンクの魅力を二つ挙げるなら一つは間違いなくナイトシティの充実度だが、もう一つはストーリーだと思う。この作品、とにかくストーリーが大人びている。平穏に長く生きるか短い人生を派手に生きるか、をテーマにした本作は、超絶資本主義都市であるナイトシティの残酷さも強く描いており、要所要所でVに難しい選択を突きつけてくる。分岐要素も多いが、これが正解というものはなく、どれを選んでも本作の一つの側面を味わえるものとなっていると思うし、自分がこの選択を自由意志で選んだ、という感覚そのものも、濁りなく本作を味わう上で重要なので、初見時はなるべく攻略は見ずに進めた方がいいと感じた。
また、本編を味わう上で特にポイントになるのはジョニーを好きになれるか、という点だと思う。私は序盤は正直、すぐ突っかかってくるし思考回路がよくわからないしテロリストだし、凡人ジャパニーズには理解し難い要素が多くて全然好きになれなかった。でも、ローグとのイベントくらいから、ジョニーが単細胞テロリストではなく、複雑な感情に捉われたなかで信念を持って反体制を選んだ人物だと気づき、徐々にVの人生の先輩、相棒的な存在としてその言葉に耳を貸すようになった。仮初めの自由では、彼が軍人だった時代のことや、それを踏まえて権力や権力に対する忠誠心への根本的な疑いをもっていることがストーリーに繋がっていて、彼の掘り下げや本編の補強としても凄くしっくりとした。
ストーリー全般に関していえば、特にDLCのストーリーは、スパイスリラーをテーマに、誰を信じるか、情と実利どちらを優先するか、といった選択を迫られる場面が多く、どの人物も完全には信じきれない絶妙なバランスで展開されており、物凄く面白かった。正直このDLCが好きすぎてサイパンにどハマりしたので、DLCの感想も別で書きたい。

日本語ローカライズ

このゲームで絶対外せない凄いポイントととして最後に書きたいのが、日本語ローカライズについて。
まず声。私は女性Vでずっとプレイしているのだけど、とにかく女性版V声優の清水理沙さんの声と演技がマッチし過ぎていて良い。サイパンの世界はどちらかといえば派手だが、その中で粛々と傭兵業をしていくVという人物の良い意味での冷静感と優しさが滲み出ていて、自然と好きになれる素晴らしい声だなと思った。Vは、プレイヤーのセリフの選択肢がかなり多いにも関わらず、キャラクターとしてかなり明確な人物像がある主人公。街のチンピラをあしらう時の呆れつつもちょっと歩み寄ってあげるようなトーン、威圧感ある相手と対等に会話しないといけない時の畏れと微かな自信、といった絶妙なニュアンスで、Vの人柄を出しつつそれをプレイヤーの好きな解釈に振れるように表現してくれていて、凄かった。選択肢をドライな方向に振ってもお人よしな方向に振っても違和感なくVという人物が成り立つのは、声の力によるところも大きいと感じた。
そして何より丁寧にローカライズされた日本語テキスト達が、そのVの人間性をはじめとしてナイトシティの文化圏を日本人にも馴染みやすいものとして昇華してくれている。街で流れるニュースや通りすがりの人々の会話、その辺に落ちているメモ、pc画面の文字まであらゆる部分が丁寧に日本語化されていて、とにかく物量が凄まじい。周辺物が読めることで世界観の理解はグッと広がるし、街の情報量を日本語でダイレクトに受け取れる分、話に没入しやすくなるので、日本語ローカライズが徹底されていることが本当にありがたく感じた。B級下ネタから高層エリートのビジネストークまで作中の言葉の振れ幅が広いので、ローカライズスタッフさんのバイタリティと知見が深くないとなかなか全てを違和感なく日本語化できないと思うし、プレイしていて全くその点の違和感を感じなかったのはシンプルに凄すぎると思った。その中でも、やっぱりキャラクターに関するローカライズ周りが味わい深くて、一応ちらっと英語音声・字幕でもやってみたところ、日本版はそれに比べると(英語力が乏しいのであくまで印象だけで書いており間違っているかもなのだけど)一人称、二人称のチョイスや話し口調を通じて、Vのお人よしな部分、マイルドな部分を少し強めに出す形にして日本人全般に馴染みやすく補完しているのかもしれないと感じた(これは違ったら本当に申し訳ない。勝手な印象です。)
後で調べたら、ローカライズ大傑作『Life is Strange』と同じ方(西尾勇輝さん)が日本語ローカライズを担当されていて、納得しかなかった。

以上雑駁だけど感想の記録でした。読んでくださった方がもしいたら、長文にお付き合いいただきありがとうございました!

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