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エスニック国道354号線

アジア専門のライター室橋裕和さんが外国人が集住している国道354号線沿いの街を旅しながら、異国メシを堪能しつつ在日外国人のコミュニティを深堀りしていくルポ。

最近は技能実習制度の問題など、外国人労働者にスポットが当たることも多くなったけれど345号線沿いの外国人の集住はもっと古い歴史があることを本書で知った。

例えばパキスタン人の中古車ビジネスが発展している小山では1970年代からパキスタン人の集住が始まっている。最初にビジネスを始めた一人がいて、その伝手を頼って仲間が増えていき、そこにコミュニティができていく。そんな外国人が集住している街が北関東の345号線沿いにいくつもあるという。

ビジネスを起こす人もいる一方、多くの外国人は工場や農場、介護など日本人が従事しなくなった肉体労働に従事している。非正規雇用が多いので、年を取って働けなくなったときの年金はない。それでも逞しく日本に根を張る彼らの逞しくエネルギッシュな姿が生き生きと伝えられている。

色んな産業がアジアからの技能実習生が支えて成り立っていることは人口減少の今こそ認識されるようになってきたが、その歴史は思いのほか古いんだなあ、と勉強になった。もう2世の時代なのだ。日本では彼ら外国人労働者が生産業を下支えしてきた。

本書を読み進めていくと国が都合の良い労働力として外国人を使い捨ててきたのありさまがよくわかる。労働力が必要とされているときには不法就労にも目をつぶり、都合が変わると取り締まりをきつくするなどして雇用の調整弁としてきたのだ。

それでもどっこい懸命に働き、仲間と助け合い太い根を張る彼らの姿にとても勇気づけられた。そしてそれを懸命に助ける日本人の存在も本書には登場しており、「この温かさ、寛容さもまた日本人」という筆者の視点も温かく、希望が持てる。

たくさんの問題を抱えながらも日本に溶け込んでいった外国人労働者の歴史。北関東にこんなにディープな世界が広がっているとは。。旅先で登場する異国メシも本当に美味しそうで、北関東に食べに行きたくなった。

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