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神社で厄払い(ギャー、社中に知れ渡った・・)

やあ、元気かい?
オレの換毛期も終わりつつあり、冬にかけて太くて長い毛が背中からお腹にかけて生え始めてる。(キツネからタヌキに変身だ)

アルジ(還暦)はずっと脱毛期だが、いろんなシャンプーやトニック類を試しては、その進行に抗っているようだ。気の毒に。

俺とオレの家族。まあ、アルジは大学辞めてベンチャーの社長になり、子供達も留学やら大学院での研究やらでなんとか小康状態を保っている。

「禍福(かふく)は縄(なわ)をなう如(ごと)し」

柴犬に伝わる格言の1つだ。良運も・悪運も同じ量だけあって、生きている間はそれが交互・表裏一体で現れるということ。アルジも実験に失敗したり研究費が却下されると「ま、次にラッキーがめぐってくるさ」と楽観的だ。反対に、道端で落ちている500円玉でも見つけようものなら、いつか500円分損するのではないかとヒヤヒヤする。まあ、小心者だな。

最近、ちょくちょく心配なことが・・

・最初に、オレはヘビさんにガブリとやられて病院に担ぎ込まれた
・次に、ママさんはお母さんの看病でウチを留守中。
・長女は、留学先でアルジがプレゼントして手荒に使っても壊れなかったノートPCが立ち上がらなくなった。新しいの買いたいのだが円安もあって30-40万円もする。
・長男は、・・研究論文順調なのかなあ・・。バイクばっかり乗ってるけど来年大学院卒業できるのかなあ。

近所の神社で厄払いにいってきた

 と、いうことで。小心者のアルジは、早朝にオレをつれて近くの神社でお祓いを受けることにした。門前仲町の富岡八幡宮という東京でも最も歴史がある神社の1つだ。
 
 朝7時、境内を清掃している巫女(みこ)さんにお願いしたら、オレも一緒に社務所でテキパキと受付けてくれた。そして白い用紙をアルジに渡し「神様がどなたの願いを聞いたら良いか迷うこともありますので、お名前やお所、年齢、お住まい、それからお願い事をはっきりかいてくださいねー(事務的微笑)。」

 アルジは真面目なものだから、社務所の隅っこでA3用紙に1時間ぐらいかけてビッシリとボールペンで記入し、「人数x2千円かなあ・・」などとつぶやきながらお納めした。(オレはその間100回ぐらい大欠伸したぜ)

ええーっ、聞いてないよ

 9時になったので、アルジだけ社殿に昇り、お祓いを受けることになった。(俺は近くの木に縛り付けられて、お留守番だ。)
 アルジは、てっきり一人きりだと思ったのだが、その後に会社関係なのだろうか20人近くの人々がアルジの後ろに座って順番を待っていた。そして、太鼓とシャランシャランの音とともに装束姿の神主様が現れ、ご神体に一礼すると、アルジに白い紙短冊のついた榊をサーっ一振りすると、大声でお祈りを始めた。(胸元のマイクで、社殿中に拡声されたので、屋外にいたオレの耳までとどいたぜ)

 神主様「かしこみー、かしこみー、申し上げー」(うんうんそう始まるナ)
 神主様「〇〇2丁目に住むところのー、XXXXことー。」(あーれ、個人情報!)
 神主様「飼い犬タキー、齢6歳にしてー、ヘビにかまれしー、その回復をー・・・」(これは誤算だったな、俺が最初かあ・・)
 神主様「ふらんす国、ぱり市に住むところのー〇〇、齢●●が高熱にふせりー、こんぴゅーたー壊れしこと、異国の災いをー。また良き知人に恵まれず」(あれ、そうなんだ・)

 (以下、略。これが15分続いた・・)

アルジ、顔を真っ赤にして下向いて、冷や汗ポタポタ

 神主様は、朝一番にお祓いに来たアルジに精一杯のお祈りをしてくれたんだろうな。でも、後ろにスーツ姿で並ぶ男女20人にはしっかり願い事が聞かれてしまい、最後のアルジのダイエット祈願のところで、吹き出す人もいたらしい。

なぜかスッキリ

 御祈祷が終わり、社殿を出てオレを木から解いたアルジ。いつもは下ばっかり見ているけど、座って固まった腰を伸ばして青空を仰いで深呼吸した。オレもつられて前足をぐーっと伸ばして秋らしく細く伸びた雲を眺めながら、後ろ足で砂利を蹴った。
 
 この同じ空の下、アルジやアルジの家族はそれぞれの場所で笑ったり泣いたりしている。そうか、ヒトもワンコも平等に笑ったり泣いたりしてるんだな。なるべく笑い顔が多いといいな、流す涙は少ないほうがいいな。

行きかう人、オレをみると笑顔になる

 道端でオレを見ると、みんな笑顔になってくれる。なんかくすぐったいけど、オレが役に立てるんだったら、いつでもアナタに寄り添って悲しみを和らげ、笑顔を増やしてあげる。
 オレは知っている。アナタも同じ力をもってること。アナタは人やワンコを幸せにできるし、その知識や技があれば、もっと世の中を豊かに楽しくできるはずだよ。だから今のうちにたくさん勉強してね。

 オウチにかえってきたらさ、大声で「オカエリナサイ」叫んで、後ろ足だけでクルクル踊ってあげるから。

「オカエリナサイ!」


 

 

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