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スイカ割り

 小学生の頃、子ども会で川遊びに行った。サワガニを捕まえたり、水鉄砲で遊んだり、流しそうめんをやったり、とにかく楽しかった。

 その後、スイカ割りをすることになった。スイカは他の遊びをしている間に川で冷やしていた。
 
 じゃんけんの結果、自分がトップバッターで挑戦することになった。スイカ割りをするのは初めてだったから、とてもワクワクしていた。タオルで目隠しをされて、ぐるぐる回った後、いざスイカを割ろうと前を向いた。すると、タオルの隙間から周りが見えることに気づいた。

 焦りながらも、とりあえず見えていないふりをして適当に失敗しようと思い、歩き出した。しかしすぐに、自分が失敗した後のことを考えた。次の人もきっと同じ目隠しをつけるだろう。そうしたらその人に、本当は周りが見えていたことがバレてしまう。自分がわざと失敗したことがバレてしまうのだ。

 迷いながらも少しずつ進んでいく。周りが見えていると思ってもいない掛け声たちに誘導されながら。次第にスイカが近づいてくる。早く決めなくては。

 悩みに悩んだ結果、いっそ思いっきりスイカを割ることにした。周りが見えているのは自分のせいではないし、わざと外すことの方が悪い気がしたからだ。
 
 スイカめがけて思いっきりバットを振り下ろした。ど真ん中を狙ったつもりだったが、目が回っていて少し右に逸れてしまった。少し中途半端ではあったけど、スイカを割ることができた。意味のなかった目隠しを外し、罪悪感を抱きながら喜んでいるふりをした。

 結局スイカ割りはそれなりに盛り上がった。だからきっと、あそこで見えていないフリをしたのは間違っていなかったんだろう。その時食べたスイカの味はよく覚えていない。

(おまけ)サワガニ

 捕まえたサワガニは持って帰って家で飼うことにした。小さい水槽に入れることにした。もう忘れてしまったけど、名前も付けて可愛がっていた。元々メダカとザリガニを飼っていたから餌にも困らなかった。

 サワガニを飼い始めて数日経ったある日、学校から帰ってくると、サワガニがいない。サワガニの水槽ごと無くなっていた。慌てて親に聞きに行くと、ザリガニと同じ水槽に入れたらしい。ネットでザリガニとサワガニを同じ水槽で飼う方法を見つけたそうだ。

 少し安心して、サワガニの様子を見に行ったが、サワガニの姿が見当たらない。ザリガニの水槽のどこにもいない。メダカの水槽にもいない。慌てて親を呼びに行った。

 2人で水槽を隅々まで探したが、やはりサワガニはいない。サワガニの痕跡も見つからなかった。結局、ザリガニに食べられたんだろうと言うことで落ち着いた。まだ飼い始めて2、3日のことだった。

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