【短編小説】 I was all you needed. “僕が君の全てだった。”
「写真みたいに綺麗だね」
遠くの夕焼けの景色を見ながら、真子がそう呟いた。
いつもそうだった。彼女とはなかなかそりが合わなかった。
僕が真子と出会ったのは9月の中頃で、別れは思い出せない。その頃はまだ夏の嫌な暑さが残っていた。僕が小学生の頃は果たして9月でこんなにも残暑さが滞留していただろうかとその時に回顧していた気がする。そのくらいの季節だ。
「真子、夕焼けが見えるよ。」
昼からあったであろうまだ消えない入道雲と、赤やけ色に染まる空。彼女とその景色を共有したかった。
「ほん