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日本に1軒しかない「グリーンローソン」を訪問。「常温弁当売らない店」の1年目の現状は

東京都のJR大塚駅からほど近くにある「グリーンローソン」をご存知でしょうか。2022年11月にオープンした、「サステナブル」をテーマにした実験的な店舗。まだ全国で1店しかない業態で、コンビニ界の”レアポケモン”的な存在です。

オープンからまもなく1周年ということで、野次馬根性を働かせて訪問してみました。

この「グリーンローソン」、めちゃくちゃ斬新な取り組みが色々なされているわけですが、オープン時のプレスリリースを見ると、「目玉」に挙げられているのが、

①アバター活用で誰もが活躍できる人にやさしい店舗
②「冷凍」と「オーダーを受けてから作る店内調理」で弁当廃棄ゼロを目指した地球にやさしい店舗
③DX活用による省人化と温かいコミュニケーションの創出
④CO2排出量やプラ削減で地球にやさしい店舗

の4つでした。実際に体験してみたところどうだったかというと……

アバターとセルフレジの活用

これは上記の「目玉施策」のうち①と③の試みです。

「グリーンローソン」に入店してまず気づいたのは、3つあるレジがすべて無人で、そのうち一つにはローソンの制服を着た女性のアバターが表示されたモニターが置かれていたこと。

わざわざ並んでアバターのレジが空くのを待ってお会計してみましたが、アバターの「中の人」の女性がリモート音声で対応してくれて、お金の払い方や、この店舗ではプラスチックのレジ袋を扱っていなくて、在庫がある時だけリユースの紙袋が利用できることなど、丁寧に教えてくれました。無人レジ自体は他のコンビニでも珍しくなくなりましたが、「アバター」に接客されたのは初めてでした。

この取り組み、障害を持っていたり、育児中だったりと、さまざまな事情で店舗で働くことが出来ない人でも就業できる「全員参加型社会」の実現を目指すものだとか。同時に、セルフレジを増やすことで「DXによる省人化」も実現。少子高齢化が進む日本が直面する人手不足にも対応できる、というわけです。

ちなみに私が訪れたのは平日の正午ごろでしたが、実際にはリアルの店員さんも2人いらっしゃって、顧客の問い合わせに対応するなどしていました。

ぶっちゃけ、セルフレジに慣れていればアバター接客まで必要かな…とも思いましたが、リリースにもあった「温かいコミュニケーションの創出」というのもまあ、あった方がいいんでしょうね。実際、アバター店員さんとのやりとりにはホッコリさせられました。

「弁当廃棄ゼロ」の実際は

上記のリリースの②の仕組みで、実は訪問前の下調べでもっとも注目していたのがこの項目です。

この試み、コンビニの定番主力商品とも言える常温のお弁当を販売せず、冷凍弁当と、スマホ経由で注文を受けてから店内の厨房でつくる「できたてモバイルオーダー」のみを販売する、というもの。これによって弁当の廃棄がゼロになるわけで、よくぞここまで……思うほど超野心的だと感じていました。

実際、店舗では普段見かけない「コンビニおにぎりの冷凍版」が売られていたりと、冷凍弁当・冷凍食品のラインアップが通常店舗よりはるかに充実しています。

ついでに、これは④の取り組みとなりますが、食品の冷蔵ショーケースにすべてガラスの扉をつけることで冷気漏れを防いで省エネを実現していたり、プラスチックのカトラリーやレジ袋を全廃して竹製のフォークやフォークを有料(1本25円)で販売していたりと、店内の随所にエコな工夫がこらされています。食品ロス削減のために余った食品を寄付する「フードドライブ」のボックスには、顧客が入れたのであろうお米の袋が入っていました。

なるほどねぇ……と感心しながら店内を回っていると、ん?

あれ、常温のお弁当も普通に売ってますね。そこで過去の報道をよく見ると、

〈当初は冷凍のまま販売するが、23年2月からは店舗で解凍し、すぐ食べられる状態でも販売する予定。弁当以外の常温のおにぎりや冷蔵パスタなどは通常通り販売する〉(2022年11月28日付日経新聞)

とのこと。どうも元は冷凍の弁当を解凍して売っている、ということのようですね。オープン時の報道などで「常温弁当を売らない店」というキャッチフレーズが先行していた印象があるせいか、ちょっと拍子抜け感があります。結果的に通常店舗とあまり変わらないかたちで常温弁当を陳列したら、それなりに食品ロスも発生してしまう気もします。

考えてみればこの店舗、同じビルに企業のオフィスが複数入居していて、お昼時には会社員とおぼしき人々がけっこうな数、入店しています。当然、冷凍弁当とモバイルオーダーだけでは彼らの胃袋は満たせないわけで、このような方式になるのもやむなしなのかも。

ちなみに、自分はスマホからのモバイルオーダーを試してみましたが、「とろとろたまごのソーセージマフィン」と「グラハムロール ローストチキン&チーズ」の2品を注文してから完成品を受け取るまで、約12分。待ち人数ゼロでこのタイムですから、ご飯どきにオーダーが集中してしまうと、さばくのはかなり大変とお見受けします。

顧客の需要に応えるという点、あるいは現実的にビジネスを継続するという点を考えると、やっぱりある程度は解凍した常温弁当を用意するのが合理的なんでしょうか。とはいえ、今のやり方で通常のローソンと比べてどれくらい食品廃棄が減ったのか、そのあたりの途中結果が知りたいなあ、と素朴に思いました。


モバイルオーダーで注文した「グラハムロール ローストチキン&チーズ」。紙袋は顧客が持ち寄ったリユースのものの在庫があれば無料で提供していただけるようでした。今回いただけたのはサンマルクコーヒーの袋ですね。

今後は100店舗に?? 横展開を頑張ってほしい

はからずもちょっと辛口の視点になってしまいましたが、そもそもは実験的な施策を集めた店舗なんですし、現実に合わせてサービスを変えながら柔軟に対応していくことは何ら問題ないと思います。むしろ、いま出来ることと出来ないことを見極めたうえで、まだ1店舗しかない「グリーンローソン」をどんどん横展開していくこと、あるいは、この店で得た知見を元に、同じ施策を通常のローソンやナチュラルローソンにも実装していくこと。そっちの方向が加速していったらいいなあ、と思います。1機しかないガンダムの性能アップにこだわるより、早く量産型ジムを投入してほしい、みたいな感じ。

これもオープン当時の報道によればですが、ローソンは2025年度をめどに「グリーンローソン」を100店舗に増やす方針を掲げているそうです。日本でのコンビニの身近さや数の多さを考えると、「グリーンローソン」的な試みが広がっていくかどうかは、日本の脱炭素にとって非常に重要なポイントだと思います。これからも、応援する気持ちでウォッチしていきたいです。

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