そう、こういう哀しみってのは人に深みを与えてくれるものじゃないのかな。だから惨めだなんて思うことは一切ないんだよ。皮膚を覆う薄い膜を突き抜け、液状の哀しみが心に浸透する。いつもなら膜の表面をなぞるだけ、でも今日は心にきて辛かった。きっとこの辛さは、自分だけのものではなくて、ありきたりな辛さだと知ってる。そういうことがわかってしまうのも辛かった。一切が過ぎ去っていきます。と思い、空っぽだったんだよ、もう今すぐ眠りたいんだよ、明日が来るのは明後日でいいんだよ。支離が滅裂になるんだよ。でも明日になればまた切り替えて生きていけるのは知ってる、切り替えは早いほうだから。でも、こういう哀しみを感じとれるっていうのは、いうまでもなく、美しいことだったんだと今日の月は教えてくれた。奇麗な満月だったんだ。

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