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人工知能と人間の平和的共存

IT経営者さえ予想を上回るほどのAIの急速ぶり

ここ数年で人工知能(AI)分野の開発が急速に進んでいるのはニュースなので知られているところだが、米マイクロソフト社などが出資するOpenAI社が開発した「ChatGPT」の文章生成AI機能が大きな話題を呼んでいる。
米マイクロソフト社のサティア・ナデラCEOは、1月18日にスイスのダボスで開かれた「世界経済フォーラム(WEF)」の年次総会 (ダボス会議)で「AIは大きな可能性を秘めており驚くべきものがある。ChatGPTの機能は10年前には想像も出来なかったが、それもAIという巨大な津波のほんの序章に過ぎない」と発言し、今後、我々がいまだかつてないAIの進化を経験することを予見している。同社の共同創業者であるビル・ゲイツ氏も投稿サイトRedditの中で、AI は2000 年のインターネット普及に匹敵するほどの革命をもたらすと昨今のAIの革新的進化には目を見張るとの手記を発表した。
米ロチェスター工科大のシー教授によると、多くの分野において人がAIに仕事を奪われ、業界によっては今後数年で多くの仕事がAIに代替される可能性があるとの見解を示し、AIが人間の仕事を浸食してしまうような恐怖心さえ植えつけられる有り様である。
イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領は1日、テルアビブで開かれたサイバーセキュリティ会議の開会式でのビデオメッセージで、演説の一部がChatGPTにより作られたことを告白し専門家らを驚かせた。同大統領は「ハードウェアとソフトウェアがヒューマンウェアを置き換えることは決してないし、DNAがコンピューターの文字コードに変換されることもない」と語
った上、AI がすぐに人間に取って代わることはないと強調し、主力事業であるテクノロジーを応援する姿勢を示した。

ヒューマンウェアとは
ハードウェアとソフトウェアに対しコンピューターを操る人の意識や能力・資質のこと。

デジタル社会とストレス

マルチタスクという言葉をご存じだろうか?元々はコンピューター用語で複数の作業を同時に実行するオペレーションシステム機能のことである。我々は、現代社会において日常や仕事のあらゆる場面において複数のスキルを同時に行うマルチタスクが必要とされている。世界で新型コロナウイルス感染症の流行が起こった際には、多くの人が自宅でのテレワークを余儀なくされ、それと同時に泣き叫ぶ子供をあやした経験があるだろう。
産業心理学者のトーマス・リゴットによると、人間の脳はまるで巨大で複雑なコンピューターのように見えても、複数の複雑なタスクを同時に実行するようには設計されていないという。マルチタスクを無理やり実行することでストレスが発生し、場合によっては脳の一部に重大な損傷を与える可能性もあるという。ドイツと米国で実施された検証では、携帯電話を使用しながら車の運転をすると注意力が40% 低下し、また、ドイツの 5 つの大学で実施された調査では、教授の講義を聞きながら同時に携帯電話を使用した学生の学習能力は約30%も低下したという。これは、人間というのはデジタル世界のせいでマルチタスクが出来るように錯覚しているだけで、決してAIのようなマルチタスク能力を持ち合わせていない証拠であるという。

人間とAIの共存

では、人間は残念ながらAIに仕事を取られるのを指を加えてただ見守るしかないのだろうか?どうにかこうにか仕事を奪われずに済んでも、職場ではAIより仕事が出来ることを示すため、マルチタスクを駆使しストレスを抱えてもがき苦しむのか。はたまたAIが職場の中心を牛耳って人間は隅に追いやられてしまうのか。
英メディアのBBCは、英国北部のコベントリーにある米アマゾン社の倉庫で働く従業員が賃金値上げを求めストを行った際2人の従業員が取材に答え、従業員の労働パフォーマンスはコンピューターで常に管理され、勤務中に持ち場を数分間離れただけで上司から質問を受けるため「ロボットの方が我々人間より待遇がいい」と答えている。
近い将来、人間とAIの平和的共存を求め、我々は真剣に将来の職場のあり方を模索しなければならない日が来るかもしれない。持っていないマルチタスク能力をAIに補ってもらう代わりに、AI従業員に対しては事前に根回しをしたり誰が年上で年下といった概念もないし、職場階級もないからパワハラも存在しない。LGBTなどのマイノリティーに気を使わなくてもよいし、有給休暇も必要ないから我々は休みがいつでも取得できる。24時間働くことも可能だから労働生産性は抜群だ。我々は、もしかしたらAI従業員と良い職場仲間になれるかもしれない。そんな日はすぐそこまで来ている。
参考: DW=Can humans multi-task? 





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