イギリス政治の今~議院内閣制の機能不全~
2024年7月のイギリス議会選挙において、労働党が大勝し14年ぶりの政権交代が実現した。
しかし、この結果は、与党・保守党の失政による国民からの信頼失墜による"消極的選択"と言われており、国民から労働党へ期待が寄せられているわけではない。
かつて、「民主主義のモデル」と称賛され、日本国内でも理想とされてきたイギリス政治だったが、現在では民主主義の機能不全を代表する例として取り上げられることもある。
一体、イギリス政治に何が起こってしまったのだろうか?
議院内閣制の前提の崩壊~民意の漂流~
議院内閣制の前提には「有権者の利益や考え方の集約」「有権者からの政治エリートへの信頼」「効果的な政策」という要素が不可欠であるとされている。
しかし、イギリスでは、戦後、資本主義・個人主義の発達に伴い、民意が多様化し、保守党・労働党のみで民意を集約することができなくなってしまった。
実際に90年代以降、民意の基盤を失った二大政党は、最大公約数を取りに行くためにどんどん中道化していき、政策に違いがなくなっていった。
漂流の果てのEU離脱
そして、民意に翻弄された政治はポピュリズムに陥る。
20世紀に早急に移民流入や新自由主義を進めたツケが回り、21世紀に入ると、市民の生活危機やコミュニティの希薄化、リーマンショックによる金融産業の大打撃による経済危機に相次いで見舞われる。
不安な市民たちは、移民排斥・自治権奪還のためのEU離脱という分かりやすい解決策に走り、信頼を失った二大政党は、その混乱を収拾できないままEU離脱まで至ってしまった。
日本は何を学べるか
政治が民意を反映出来なくなってきていることは、日本でも共通している現象だ。
バラマキ政策やメディアハックなどポピュリズム的な現象は日本政治でも目立ってきている。
しかし、この流れでは、イギリスと同じようにポピュリズムに陥り、政治の空洞化がより一層進む。
今こそ、長期的な視野に立った社会像とそのための具体的な政策実行を担える政治を確立することが不可欠であるが、その方途は遠い。
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