閑話休題「仕事と人生と終の棲家」
私が以前働かせていただいたサービス付き高齢者住宅での話しです。
そこはもう「超」が付くほどのお金持ちばかりが入居している高級サ高住だったのですが、そこの入居者に一代で大きな会社を育て上げた経営者の女性がいらっしゃいました。
テレビやラジオで多くCMを流している、関西ではかなり有名な会社です。
この経営者の女性、Kさんというのですが、生涯独身を貫かれ仕事に人生を捧げてきた方でした。
施設に面会に来られる方も、他の方のように家族が面会に来るのでは無く、スーツ姿の社員とおぼしき方々がKさんの元を訪れては何やら神妙な顔で話し込んでいる姿を何度か目撃したことがあります。
実はこのKさん、食事に関する注文が非常に多い方で、特に卵料理に関しては気に入らないものをお出しするとすぐに厨房に作り直させるといった方でした。
この施設の居室には、ちゃんとしたキッチンもありましたので、料理が出来る方は居室で自炊する方もいらっしゃいましたが、このKさんは必ずレストランに食べに来る方でした。
私も厨房の調理師として何度もKさんの食事を担当したのですが、何度かダメ出しをされた事があります。
私は入居者の方とも割とお話しする機会がありましたので、Kさんとも何度かお話ししたのですが、とにかく眼光の鋭い方で顔は笑っていても目だけは笑っていないといった方でした。
こういうタイプの方は、恐らく人を信用できない人なんだろうなと思います。
会社を大きくしていく過程で、何度も人に裏切られたり騙されたりした過去があるに違いないと、勝手に解釈しているのですが多分間違っていないと思います。
80歳前後といった年齢でしたが、その歳になっても全身から緊張感の様なものが漂ってくる方で、正直言ってあまりお近づきになりたくない雰囲気の方でした。
一方、同じお金持ちでもいつもニコニコ笑顔を絶やさない柔和な雰囲気の方も勿論いらっしゃって、そうした方の周りには自然と人が集まりますし、笑い声も聞こえてきます。
ある男性の元経営者の方は、その様に言われなければ普通に「そこらのおっさん(大阪弁)」としか見えない気さくなおじいさんでしたが、この方も大きな会社を育て上げた名経営者と呼ばれる方でした。
この「そこらのおっさん」の方も、Kさんと同じ様に騙されたり裏切られたりしたことがあったに違いないのですが、元々の性格がそうさせるのか、とにかく柔らかい雰囲気で自然と周りに人が集まってくるタイプの方でした。
私もあと20年程でKさんや「そこらのおっさん」と同じくらいの年齢になるのですが、その時にどちらのタイプになっているだろうかとふと考えてしまいました。
なんだかとりとめの無い話しになってしまいました。今日はこのへんで。
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