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【小説】メルクリウスの喚声 第五話

   Ⅴ トート・ヘルメス

 駅を出ると冷たい風が吹いていた。慌てて安物のブルゾンの襟を掻きあわせるも、無防備な顔面を冷気がめった刺しに刺してきて、痛みさえ感じる。太陽の一つでも出ていたらマシなのだが――そう思いながら空を見上げたが、どんよりとした雲が一面を覆っていた。どこに光が隠れているのかもわからない。クラゲのようなオフィス街に入ると、建ち並ぶビルのせいであたりは一層暗くなった。視野狭窄に陥った気分だ。
 Z出版社に到着し、受付嬢に名を告げた。二十分も待たされて、やっと高塩が階下に下りてきた。竜也の姿を認めても、会釈すらしない。
「どうされましたか」
 道端に転がる石ころでも見るような無表情な目で、素っ気なく用件を訊ねた。
「〈レイズ〉の原稿を書き直してきました」
 竜也は携えていた原稿の束を差し出した。
「作中の主要キャラを一人、死なせることにしたんです。これはインパクトがデカいですよ。否応なしに、話が動きます。さすがのバイオレンス志向の小町さんも、この展開は予想できなかったはずです。思い返してみてもゾクゾクしますよ。文句のつけようがない――」
「何をいってるんですか」
「……え?」
 高塩は差し出された原稿には目もくれずに、面倒臭そうに頭を掻いた。
「何度いえば気が済むんです?〈レイズ〉は小町さん単独の名義で、引き続き連載を続行させます」
 竜也は据わった目で高塩の口許を見つめていた。
「何度いっても〆切りは守らないし……小町さんの考えるストーリーのほうが、実際のところ数倍面白いんですよ。これ以上、原稿を持ってこられても迷惑です」
「約束が違う! 最初に十話分書いたときは、これでOKだって――」
「もういいですか、忙しいんですよ」
「ま、待ってください。単行本は、出るんですよね? その印税は……?」
「勘弁してくださいよ」
 高塩はあきれ返って鼻で笑うと、背中を向けて、階上に姿を消した。
 呆然とした。竜也をつまみ出すためにガードマンが近づいてきたところで我に返り、重い足取りでZ出版社を出た。細い雨が降っている。
 半年前、Z出版の他四社から執筆依頼を受けた。いまではいずれの出版社とも縁は切れてしまった。最後の砦だったZ出版からも、引導を渡されたところだ。
 帰りの夜行バスの中で、行き場のなくなった〈レイズ〉の原稿を見つめた。
(おれは、何を拠りどころにしていけばいいんだ……)
 車内の照明が落とされた。

 竜也の足はアパートに向かわずに、メルクリウス教団施設に向いていた。まだ午前だというのに空は暗い。東京と同じく、兵庫も雨模様だった。
 駅前では上品な身なりの人々が傘を差し、教団行きのバスを待っている。小汚い安物の服で身を包んだ竜也は、彼らの中にまじってバスを待つことができなかった。雨の中、川沿いを歩いた。
 やがて海がひらけた。厳かで誇らしげに建っている巨大な宮殿は、堅牢なオーラを発していて、竜也が近づくことを拒んでいるようにも見えた。
「メルクリウスは、皆に平等なんだろ……なぜ、おれだけを見放すんだ」
 竜也は歯を喰いしばった。
「それとも、まだ金が必要なのかよ……」
 手許には、なんとか交通費がまかなえる程度の小銭しかない。竜也は宮殿に立ち入る資格がなかった。いや、金をつぎこんで宮殿に入れたとしても、首藤がこちらを振り向いてくれることはないのだ。
「ふざけんじゃねえ」
 ポケットから手垢で汚れた『両性具有』の寓意画を取り出した。四つの目玉が悲しそうな表情で竜也を見ていた。その目から涙が流れ出して、カードを持つ手を濡らした。竜也も泣きたい気分だった。
「何、ブツブツいってるの?」
 突然話しかけられて、腰を抜かすほど驚いた。慌ててカードをポケットに仕舞う。
「そんなにビックリしなくてもいいじゃない……ていうか、ズブ濡れよ」
 水玉模様の傘を差した女が立っていた。冬だというのにミニスカートを穿いていて、肉づきのいい太腿が曝されている。
「……あんたか」
 女は眉をひそめて、
「名前、忘れたの?」
「カナだろ。また男漁りに行くのか」
 カナは唇を尖らせて、竜也を睨んだ。
「お兄さんだって、人のこと、いえないじゃない」
「……そんなに暇じゃないんだよ」
 カナに背を向けた。すると、カナが先廻りして、竜也の目の前に立ち塞がった。
「なんだよ」
「さっきの独り言、聞いちゃったのよ」カナは竜也を傘の中に入れた。「お金のことなら、心配しなくていいよ」

 客室に入ると、壁に飾られたペリカンの寓意画が目に飛びこんできた。ペリカンは堂々と胸を突き出して、翼を広げている。そのフォルムは理科の授業で使う丸底のフラスコを連想させた。
 カナは寓意画には一切興味を示さず、ベッドの縁に腰掛けた。
「直接ここに来たのは、はじめてだな――」
 竜也もカナの隣に坐った。
「ここって客室のこと?」
「いつもは訓諭があって、瞑想があって……それから、何がなんだかわからんまま、気がついたら、部屋に連れこまれてるって感じだからな」
「だってお兄さん、いつも〝洗脳〟されちゃってるし」
「洗脳?」
「薄々、感づいてるんじゃないの? お兄さん、他の信者さんとはちょっと雰囲気が違うもん」
「――――」
 見つめ合っているうちに、どちらからともなく接吻した。カナの衣服を脱がした。ひさびさに拝む彼女の裸体は、丸みを帯びた曲線を描いている。寓意画のペリカンのようにエロティックだった。軀のあちこちに刻まれた傷は、前に見たときよりも数が増えているような気がした。
 二人は激しく交わった。
 カナは目を閉じて、ビクビクと痙攣しながら、肉体の悦びを咬みしめていた。
 竜也はカナの隣に寝そべった。
「――洗脳って、どういう意味だよ」
「教団は催眠効果のある特殊音を使って、みんなを集団催眠にかけてるみたいよ」
 カナは瞬きをせず、天井を見つめていた。
「リラックス効果を高めるイージーリスニングっていうのがあるじゃない。あの効果をマックスまで高めたら、人って虚脱状態までいっちゃうみたいよ。自主性もなくなって、なんでもかんでも人のいいなりになっちゃうんだって」
 竜也はあの電子音を思い出していた。記憶をぶつ切りにされる直前、いつも耳はあの電子音を聞いていたように思う。
「それに、あの呪文なんだけど――」
 首藤が唱える、謎の言語のことを指していた。
「トート・ヘルメスっていう、錬金術の神様が残した言葉みたいよ」
「錬金術の神……」
「特殊音と一緒にあの呪文を聞いちゃうと、ひとたまりもないのよ。頭が銀河まで飛んでいっちゃって、宇宙と宇宙を繋げるためのセックスをしなければならない……っていう義務感が生まれるの」
「仮にそうだとしても……なんで、君はそんなに冷静でいられるんだ? 洗脳にかかっているのか、かかっていないのか?」
 カナは軀を起こした。鞄からポケットナイフを取り出す。
「軀に傷をつけてるの。洗脳にはかからないようにね」カナはくすっと笑った。「乱交パーティのときはしょうがないけど、部屋に来るときは、シラフでタイプの男の人を選びたいもの――」
 完全なる肉体を追求するメルクリウスにとって、生傷は大敵だということだろうか――。竜也は頭が痛くなってきた。目を閉じて、こめかみを指で揉んだ。
「教団が避妊しないセックスを義務づけてる理由、知ってる?」
 竜也は目を閉じたまま、眉をしかめて、
「……避妊をすれば純粋な性行為じゃなくなる。生殖行為の中にしか、真のメルクリウスは生まれないから――」
「みんなにどんどんセックスさせて、赤ちゃんを産ませるためなのよ」
「……赤ちゃん?」
「その産まれたばかりの赤ちゃんを、教団が片っ端から引き取ってるみたいだよ。有無をいわさずに――」
「なんのために?」
「通ってるうちに、見えてくるわ」
 カナは竜也に抱きついてベッドの上で組み伏した。体力を回復したらしい。
「おれはもう、ここには来られないかもしれない」
 カナの話を鵜呑みにしたわけではないが、話を聞いているうちに、原稿のアイデアが閃いてしまったのだ。一瞬にして構想は膨らんでいく。だが、そんな原稿を書いてしまったら、いよいよ首藤を完全に裏切ることになってしまう――。
「来ないほうがいいと思う」
 カナは微笑んだ。それ以上の行為には及ばなかった。

 建てつけの悪いドアを開くと、エプロン姿の容子が出迎えた。
「まあ、びしょ濡れよ」
 タオルを持ってきてくれた。竜也は容子の顔も見ずにタオルを取り上げて、髪や衣服についた水滴を拭った。
 肉を焼く臭いが漂っているのが気になった。食べる前から胸焼けを起こしそうになる。
「原作は、どうだったの……?」
「クビだった」
 竜也はスニーカーを脱ぎ散らした。
「そう……」
 どんな慰めの言葉をかけていいものか迷っている容子の前を通りすぎた。冬になったというのに掛けられる布団のない炬燵台の前に坐った。寒さで手足の指先がかじかんだ。節約のためにエアコンは使っていない。
「もうすぐ晩ごはんできるからね」
「今日は何?」
「焼き肉よ」
 嘔吐感が込みあげてくる。
 雨に濡れてふやけてしまった〈レイズ〉の没原稿を、炬燵台の上に投げ出した。没――というか、目も通されなかった虚しい紙の束だ。誰にも読まれないのなら、この紙は白紙も同然だ。醒めた目でそれらを読み返す。事実、白紙に等しい原稿だと思った。これが自分のあるべき姿なのか――と思いもした。そのように悟ってしまえば楽だったが、諦めるには早い気がした。
 真新しい一枚を取り出し、皺を伸ばす。ペンを持って書きはじめた。教団、催眠術、呪文、セックス……頭の中で渦を巻いている言葉を羅列していく。そしてプロットを起こした。すでにストーリーの土台は頭の中でできあがっている。
 炬燵台の上に食器を並べに来た容子は困惑して、
「まだ食べないの……?」
「メシは要らない」
 竜也は原稿用紙から顔を上げずにいった。容子がため息をつくのが聞こえた。
 もしメルクリウスのご加護が本物なら、このアイデアもメルクリウスの賜物に違いない――無理にそう思いこむことにした。そして一切の雑念を断ち、ペンを走らせ続けた。

 原稿が完成したのは十二月のはじめだった。窓を開けると凍えるような空気が部屋の中に滑りこんできた。それでも竜也は気持ちが昂揚して体温が上がっていたので、まとわりついてくる冷気を清々しく感じた。桟に腰かけて空を見上げる。ここ一週間、拝んでいなかった太陽と再会した。しかし、太陽が問いかけてくる。おまえはこれでいいのか――と。顔を背けて、窓を閉めた。
 部屋の静寂に気を留めたとき、容子がいないことに気がついた。大学に行っているのだろう。同時に首藤の顔も思い出して、また気持ちが塞いできた。
 書き終えたばかりの原稿を読み返した。タイトルは〈消えたマントラ〉――新興宗教に属するフリーセックス愛好者の失踪事件を調査する探偵物語だ。ギャンブル物以外の漫画原作をはじめて書いたが、デキに不満はない。強いていうならば不満は、細部を書きこんだことで読み切りの長さにおさまっていない可能性があること。そして、教団名を伏字にしているとはいえ、メルクリウス教団を題材に取っていること――。
 罪悪感で胸の中がいっぱいになっていた竜也は、おそるおそる『両性具有』の寓意画を取り出した。
(おれの気持ちもわかってくれよ――)
 二つの顔は眉を釣り上げて、怒りに満ちた表情を浮かべていた。竜也を睨みつけ、意識を無限の彼方へ突き飛ばそうとしてくる。恐怖を感じて、寓意画をポケットに突っこんだ。
 携帯を取り出して、Z出版をコールした。
「第三制作部の高塩さんはいらっしゃいますか」
「失礼ですが、どちら様でしょう?」
 電話係の女の声が訊き返した。
「結城竜也です。いつも漫画原作を見てもらっていて――」
「少々お待ちください」
 五分近くもメヌエットを聴かされて、電話口に出てきたのは、また同じ電話係だった。
「高塩なんですけども……ただいま打ち合わせに出ておりまして……」
 嘘だと思った。
「いつ戻られるんですか?」
「……わかりかねます」
「高塩さんに伝言をお願いします。原稿を送らせていただきます――と」
 直接東京に行って、原稿を持ち込むほどの気にはなれなかった。竜也の経験上、郵送した原稿は読まれずに放置されることが多い。いまの竜也は高塩から煙たがられているのだから、尚更だ。しかし、ダメでもともと――それならそれでかまわないと思った。
 原稿を郵送した日の翌朝、携帯が鳴った。電話帳に未登録の番号からの着信だった。
「どうもー、お世話になってます! シュラバ編集部の友金ですけども!」
 甲高く、剽軽な声が聞こえてきた。
「シュラバ……?」
 芸能、スポーツ、政治、裏社会、宗教――実在する、あらゆる人物や団体を題材に取った漫画が載せられているエンターテインメント誌の名前である。竜也もミーハー根性で何度か立ち読みをしたことがある。
「〈消えたマントラ〉ですよね。あれ、よかったですよ!」
 わけがわからず、竜也は返す言葉がなかった。
「あっ、すみません。高塩からお預かりして読ませてもらったんですよ」
「……どういうことですか?」
「サンライズじゃ無理だったんですよ」友金はあっけらかんといった。「確かに表向きは探偵物として書かれてありますけど、ドキュメンタリーみたいな感じですからねぇ」
 シュラバとサンライズが同じZ出版から発刊されていることをはじめて知った。
「取材とか、結構されたんですか?」
「ええ……まあ」
「じつはいま、漫画家の大槻ヒロシ先生が原作を選定されてまして、もしよろしければ、結城さんの作品も先生に見せたいな、と思ってるんですけど」
 大槻ヒロシといえば、銀座の高級雀荘で一緒に卓を囲んだ大御所漫画家の一人だ。「今度おれにも原作を書いてくれよ」といってくれたことが、いまでも忘れられない。
「是非、お願いします」
 乗りかかった船だ。原稿を引き下げても、首藤を裏切ったことは変わらない。いくところまでいってやろう――。大槻ヒロシならば、竜也の原作を選ぶはずだ。ほとんど確信に近かった。
「いやァ、それはよかった! じゃあ早速、大槻先生に原稿見せてみますね。一週間くらいでお返事が来ると思うんで」
 竜也は了解して、電話を切ろうとした。
「ところで気になったんですけど――」友金はあらたまった口調でいった。「話の中に教団が出てきますよね? あれ、ちゃんと実名がわかるように書いてもらってもいいですか?」
「……えっ」
「教団名が完全に伏字で書かれてますけど、あくまで載るのは実話誌なんで、あのままじゃ使えないんです。一文字くらい伏字にしたり、もじったりするくらいなら、いいんですけどね。実在する宗教団体の名前が、それとなくわかるようであれば――」
 竜也は絶句した。
「ダメですか? 雑誌のルールなんですよ」
「……でも、新興宗教ですよ。実名を出したところで、わかる人がいるかどうか――」
「だったら余計、大丈夫じゃないですか」友金は畳みかけた。「最近どうも雑誌の内容が全体的にマンネリ化してて困っていたところだったんです。この話はインパクトでかいですよ。是非ともお願いしたいところなんですが」
「……少し、考えてもいいですか」
「いいですよ。まァいろいろいっちゃいましたけど、大槻先生のお返事次第なので、もし選ばれなかったときはごめんなさい。では、また連絡しますので」
 竜也は携帯を抛り出して、床に寝転んだ。天井の木目を視線でなぞりながら、物思いに耽った。
「困ったな」
 首藤に未練がないといえば嘘になる。しかし、目の前には大きな仕事のチャンスが転がっている。連載になるかどうかはまだ不明だが、タッグを組むのはこれまでのような新人漫画家ではない。大槻ヒロシという大作家だ。注目を浴びないわけがない。
 そもそも、仕事で成功するためにメルクリウスを頼ってきたのに、この状況はなんだろうと思った。矛盾している。矛盾を解消するのがメルクリウスの役目ではなかったか……。
 目が醒めると、夕方だった。
 容子が大学から帰ってきていて、慌ただしく着替えをしている。
「起こしちゃった?」容子は着替えをやめずにいった。「いまからバイトなの」
「バイト? なんの――」
「えっ、コンビニの夜勤だけど……」
「今日から?」
「先月からやってるよ。竜也さん、忙しかったから気づかなかったかもしれないけど……」
 容子は仰向けに寝ている竜也の顔を覗きこんで、頬を手で撫でた。
「竜也さん……凄くやつれてるわ。しばらく休んだほうがいいよ」
 容子の顔を見つめ返す。ひさびさに彼女の顔をまともに見たような気がした。竜也以上に酷い顔だった。ふっくらと桃色の肌をしていた頬はこけており、目の下には深い隈ができている。
「昨日書き終わって、送ったんだよ。結果はまだだけど――」
「お疲れさま。どんな話を書いたの?」
「……いけね、コピーを取るのを忘れたな」竜也はしらじらしくいった。「いままでとは毛色が違う話だよ」
「手応えがありそうね」
「手応えなんて関係ないよ。評価を下すのは編集者だからな」
「竜也さん、最近はちょっと調子が悪かっただけ。きっと復活できるわ」
 竜也を励ますように、容子は笑みを浮かべた。
「ごめんね、晩ご飯つくれなくて……冷凍食品買ってあるから、適当に選んで食べてくれる?」
「かまわないけど――」
「行ってくるね」
 誰もいなくなった部屋で、竜也は床にへたりこんだ。
 掛け持ちのアルバイトをはじめたということは、大学の給料だけでは生活が成り立たなくなってきているのだろう。
 竜也のせいだった。原稿料は家計の足しにされることなく、手に入った瞬間に教団へのお布施へと消えた。容子の給料にも幾度となく手をつけた。それでも容子は何もいわず、金の使い道も訊かなかった。そして、なんら文句をいうこともなく、二人の生活のために仕事量を増やしている。いや、小言の一つくらいは、さすがの容子でも口にしたことはあったかもしれない。だが、竜也の耳には届いていない。竜也は、彼女を気遣ってやれなかった自分に気がついた。
「今度、何か容子が喜ぶことをしてやろう……」
 それだけではない。容子のため、仕事を得るためにも、正式にメルクリウス教から足を洗おうと決意した。
『両性具有』の寓意画を取り出す。男の顔と女の顔は、竜也から目を逸らそうとしない。意識をかき混ぜられて、気持ちを揺さぶられる。
 首藤が思い出された。竜也は頭を振り、ひと思いに寓意画のカードを引き裂いた。結合していた両性はふたたび分離し、カードの効力は失われた。

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