宮崎 産直巡り(002) ― 特産物・史話を求めて ー

佐土原町の産直“畑ぼら”編(2023年11月25日〈土〉 快晴)

【基本情報】
・経営者:個人(グループ)
・住 所:宮崎県宮崎市佐土原町上田島249-ロ
・電 話:0985-74-3144
・定休日:1/1~1/6
・営業時間:0800~1730
・創業:約20年前
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 この日、佐土原町の生産直売 “畑ぼら(はたけぼら)” に向かった。
 産直“畑ぼら”は、宮崎市中心からは国道10号線を北上し、広瀬地区の宮本というところで左折、県道326号線沿いに西に向かう、約2.5キロ、人家がまばらになった先、田んぼの中にバラック建屋が目に入ってくる。新富町方面からは県道44号線(宮崎高鍋線)を使うと便利である。
 畑ぼらは、新富町の産直“ルーピン”から直距離約5キロにある。この距離から推察するに、産直出品される生産者のかぶりが想像できる地理関係にあることがわかる。

畑ぼらの全景

 佐土原は江戸時代以前からずっと城下町であった。江戸時代は鹿児島薩摩藩の支藩として佐土原島津家が10代にわたって統治した。その前の飫肥伊東家の統治が約200年、都合約450年間、飫肥、薩摩、熊本、細島へ向けての街道が交わる要衝にあって、当然ながら商業も栄えていた。
 特に幕末期には町の商人たちも上方の文化を楽しむ風がもたらされ、街中にある浄土宗誓念寺には、裏千家の特別な出張お点前がなされたという貴重な記録も残されている。

“畑ぼら”の由来
“はたけぼら”とは、この地方の方言で「畑のもの全部(採れたて)」ということらしく、まさに産地直売ということであり、四季折々の野菜も豊富で新鮮感は半端ない。

鰻のかば焼きの販売
 九州山地を源とし新富町と佐土原とを分けるのが一ッ瀬(ひとっせ)川である。川幅は広く滔々と流れ、ついには太平洋に注ぎ込んでいる。昔から梅雨や台風の時期には氾濫を繰り返し地域の人々には難儀を強いてきたが、悪いことばかりではなく色々の水産・海産物を育み恵んできてくれた。
 川口地区には小規模ながら漁港も整備され、季節にはあじ、さば、さわら、かます、さっぱ等が揚がり、冬には青海苔も採れる。
 また、川口には明治の初め、佐土原から広瀬へのお城の移転のために急遽掘られた水路(運河)があり、昭和30年代ごろからその水路の再利用策として養鰻業が興ってきたという。養鰻業は豊富な水がなければ成り立たない。新富町と佐土原町ではこの河川を活用した産業が営まれていると言ってよい。

値段(大きさによる):1800~2300円

 さて今日、鰻は全国的に高価な食料品となっています。産地である宮崎、鹿児島でも以前のように気軽に食べられる時代ではなくなってしまいました。ただ、畑ぼらでは若干、産地としてのアドバンテージを感じさられる値段で入手できるのが有難い。

鯨ようかんの由来
 また、佐土原藩絡みでいうと、第4代藩主島津忠高公(当時26歳)に嫡男ができたものの、息子の成長を見届けることなく亡くなり、お世継ぎ騒動が起き、藩庁は危うい状況になったという。しかしながら嫡男の生母松寿院は気丈さを発揮するとともに、宗藩(薩摩)の援助介入もあり、息子を立派に成長させ、第5代を継ぎ、後に名君と称されるに至った。
 その過程で松寿院は、「息子が大海のくじらのようにたくましく育って欲しい」として、町の菓子屋にくじらに因んだ米粉菓子をつくらせたといいます。それが元禄時代から今に伝わる「鯨ようかん」です。
 初期の形とはずいぶん変わったといいますが、今日佐土原といえば「鯨ようかん」といわれるように、後世の我々からすれば由縁に少々難あり、という感じですがともかく今後とも伝えて行って欲しい代表的な郷土菓子です。 
もちろん茶請けに最適で、小生の好きな米粉菓子のひとつとなっている。
 佐土原にはこれを製造販売する数軒の店舗があります。ユニークな形と大きさは統一されており形状にほとんど差はありません。しかし少し塩味の効いた店のものもあります。
(いずれ、「宮崎の米菓子めぐり」を企画(品評)の予定です。)

特徴あるー鯨ようかんの包装

施設のレイアウト
 陳列売り場は概略下図のとおりである。バックヤードを含めて約300平方前後はあるようです。

施設のレイアウト概要

 建屋の外側に方に駐車場が設置されており、混むことが予想されるときには交通誘導の要員が配置され、安全指導をしている。
 建屋への出入り口は3か所あり、アクセスは容易である。

生産物等の陳列コーナー
 新鮮野菜コーナーが建屋外回りに設けられており、顧客にとって目に入りやすく手に取り易いように工夫されている。そのコーナーの近くには花卉コーナーもある。やはり古い町であり、近くにはお寺、墓所が多く墓参り客にとっての利便性は高かそうだ。

野菜コーナーの状況
花卉コーナーの状況

伝統野菜の「佐土原ナス」

地物の佐土原ナス

 当地の特産物の一つとして「佐土原ナス」がある。このナスの特徴は、ふっくらとして、濃い紫色をしており、とにかく皮が柔らかいということ。塩もみで食べると他のナスと比べて食感が良い。料理に一番合っているのが、「焼きナス」だろう。その果肉は柔らかくトロンとして、何ともいえぬ甘味が後を引く。
 この佐土原ナスの起源についていろいろあるようだが、遠く戦国時代に遡り、朝鮮の役のときに当時の領主であった島津豊久公が半島から種を持ち帰ったという話がある。
 当地の土と気候に合ったのか、昭和40年代ころまで、普通にこの地方で耕作されていたが、改良種の収量性に優れた黒紫色ナスの攻勢に押され、耕作者も減り、忘れられたナスとなっていた。
 ところが2000年ごろ、古くから佐土原町に店を構えるの梶田種苗さんがずっと保管していた4粒の種子を、宮崎県総合農業試験場に持ちこみ、発芽に成功。その後、少しずつ商品化をしたところ、注文が殺到するようになったという。
 そこで2005 年に研究会を発足させ耕作者を募り、ハウス栽培と露地ものの生産の向上を図り現在に至っている。
 いわゆる地物、伝統野菜というもので、「佐土原ナス研究会」もあり、今後更に耕作者を増やし生産量の増加を図ろうとしている。

My feedback(所感、評価、手応え)
 なお、独断と偏見で評価をさせていただき、グラフ化しました。
項目は①品揃え・品質②清鮮度(衛生)③販売価格④サービス・対応⑤コーナー区分⑥特産品⑦立地・利便性⑧お得企画の8項目です。(あくまでも今時点での筆者の評価です。)
 産直市場に行く人たちの一番のねらいは、新鮮で衛生的な野菜、くだものが安く手に入るかどうかだろうと思います。そして価格がリーズナブルかどうか、産地にしては価格が高いとすれば「評価は4~3」、そして店員さんの対応具合であったり、お得なものが入手できるかどうかでしょう。
 この産直は、養鰻業を営んでいた方が、約20年前に小規模ながらこの地区で開設されたという。地域の農家・生産者の勧誘活動を地道にやられ今日の基盤を築いてこられたということ、それだけに各生産者とのコミュニケーションが十分にとれているようである。
 先述の産直“ルーピン”と同様、少なくとも月に1~2回は訪れたい産直である。
  下図は5点満点の総合評価:あくまでも独断で、公式なものではありません(念のため)。

各項目5点満点で評価

相方のコメント
1      何といっても、畑ぼらが良いのは価格、特に野菜の価格が他の産直より
 安いこと、主婦にとって物価高の折、本当にありがたい!!
 ≪ごもっとも、おいの小遣いも物価高の分、アップをお願いします!≫
2 「佐土原ナス」はここが一番! また他の季節の野菜も安く手に入るの
 で月に何回か来たくなる。
 ≪そうだよね。佐土原ナスは、我が家の必需品! 焼きナス、ナスの塩も
  み、最近はからし漬けに凝っているもんネ。≫
3 2月頃から夏にかけての一ッ瀬川産の海苔や地どれの海の魚が待ち遠し
 い、レジ横に陳列される地元産の鰻のかば焼きは、町のスーパーの8割く
 らいで手に入るので、鰻に目のない方には最高ですね。
 ≪鰻好きにゃ最高! すぐに売り切れるので朝一番に来ないといけないの
  がきついっちゃね!≫

今回は以上です。次回は佐土原町の「城の駅 いろは館」を訪問予定です。

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