宮崎 産直巡り(003) ― 特産物・史話を求めて ―

佐土原町の産直 城の駅(いろは館)編(2024年1月14日〈日〉快晴)

【基本情報】
・経営者:団体(グループ)
・住 所:宮崎県宮崎市佐土原町上田島1387-1
     (経路図は巻末に表示)
・電 話:0985‐74‐4649
・定休日:年中無休(1/1、2、3を除く)
・営業時間:0900~1800
・特記事項: 道の駅たるみず(鹿児島)、道の駅「協和」(秋田県大仙市)
                       と提携
・創 業:約10年前


 この日、佐土原産の城山(じょうざん)みかんを求めて久しぶりに“城の
駅”に向かった。城の駅は“畑ぼら”と同じ町内にあり、西約1キロ位置し、ま
さに街の中心地にある。
 「城の駅」とは「道の駅」構想に倣ったネーミングであり、全国的にも珍
しく違和感はないように思える。
    1970年代初頭、国土交通省が当時の低迷する地方経済を活性化させるため
に、農産物の直売所や休憩スペースなどの整備を提案した。その後、1980年
代に入り「道の駅」構想が具体化され、1984年に全国初の「道の駅」が新潟
県に開設された。
 「道の駅」施策は、いまや全国的に展開され、交通インフラと観光地の要
素を結びつけ、地域の特産品や文化を紹介することで地域経済に貢献してい
るのは周知のとおり。この概念は日本独自のものであり、地域活性化や地域
間の結びつきを促進する点で、諸外国には類例がない施策といわれている。
 佐土原の城の駅は、旧佐土原城の大手門があった(現在の歴史資料館「鶴
松館」)前の場所に建っている。佐土原藩時代には藩の重鎮たちの住居があ
った場所である。
    施設自体は宮崎市のものであり、佐土原地区交流センター(2013年落成)
の施設の一部との位置づけで、その施設の運営を民間に委託(公募)してい
るのです。
 厳密には一般的な産直とは異なるかも知れませんが、地域活性化という点
では同じ括りで見てもおかしくはないものと思います。

城の駅(いろは館)

 城の駅は佐土原小学校から、その西側を通る道路(旧米良街道)を宮崎方
面に向かって南約200mにある。
 下の看板が目印である。入ってすぐに駐車場(約50台ほど)が設けられている。また道路を挟んで反対側が「鶴松館」である。

入口の看板
(佐土原地区交流センター/城の駅)

鶴松館とは
 鶴松館(かくしょうかん)は、佐土原町が宮崎市に併合(平成18年)され
る以前(平成元年~)に実施された旧佐土原城址の調査結果を踏まえ、歴史
的な観点から資料館等を整備すべきであるとして、1993(平成5)年に完成
されたものです。
 「鶴松」の由来は、もともと山城であった佐土原城が、町の西側に連なる
標高70メートル級の丘陵地にあり、そこを「鶴松山」と称していたことにあ
ります。第2代藩主島津忠興は、山城の維持管理の難しさと経済性を考慮し
て現在の鶴松館がある場所に平城(ひらじろ)として移したとされていま
す。
 鶴松館では、年間を通し旧佐土原藩関係のイベントが開催されています
(ただし、基本的に開館は土・日曜のみ)。鶴松館正門(入口)に向かって
左脇に旧山城への登り口があり、約30分くらいで山城の跡まで登ることがで
きる(詳しくはいろは館で案内)。

鶴松館の入口(なだらかな坂道)

産直等の施設
 ここの購買部施設は他の産直と違って特殊である。それもそのはずで前述
のとおり、宮崎市の所轄する「交流センター」に付帯する施設であるから
だ。
 この建屋の奥には図書室、体育館そして研修室及び学習室があり、地域住
民の福利厚生に大いに活躍しているようだ。
 産直“畑ぼら”で見た通り、地域の農業生産活動は盛んで、この城の駅でも
各種農産物が陳列されている。ただし、施設の容量の加減から現在の経営者
が自ら選択した生産者の物が揃えられているのが特徴である。

野菜コーナー

 更に特殊なのが、旧佐土原藩の初代藩主の出身地である鹿児島県の垂水市
の道の駅「たるみず」や戊辰の役(1868年)の際に当時の秋田藩に佐土原藩
が援軍したとの縁で、平成の世に再び縁故を深め「大仙市の特産物コーナ
ー」が設けられていることである。もちろん品、量数は限られるがときどき
実施されるそれぞれの特別販売も楽しみなイベントである。
 垂水市の特産である養殖魚かんぱち関連のもの、大仙市主催の日本海側仕
込みの日本酒やいぶりがっこ等の特産品は宮崎ではなかなか入手できないも
のである。

秋田産の日本酒

 ご当地の総菜やお菓子類のコーナーも充実している。佐土原の特産である
鯨ようかんも(畑ぼらとは違う店舗製が)揃えられている。また、弁当やそ
の他のスイーツ等も並んでいる。

ご当地の菓子、総菜コーナー

くじらのぼり

天井に泳ぐくじらのぼり

 佐土原の特産品の「鯨ようかん」誕生の由縁は前号(002)で述べた通り
ですが、それならばと、平成8年ころ、町の商工会青年部が5月の鯉のぼり
も鯨の形になるのではないかとの発案で創作したのがこの「鯨のぼり」、小
型から上図の大型まで販売されている。
 長さ1.5, 2.5, 5.0mの3種類があり、また色も赤、黒等あり、値段は6千円
~4万円とのことである。五月の風に舞う鯨のぼりは “鯉”とは一味違うもの
がある。全国区化することを是非とも推したい。

いろは館のいわれ

いろは口説の額縁

「いろは口説」とは、今から300年ほど前に、佐土原町大光寺の42代住職と
なった高僧、古月禅師によって作られた、いわば“人生訓”歌集です。
 短い歌の中に人生訓が巧みに込められています。
イ 幼(いとけな)きをば愛して通せ
ロ 老を敬い無礼をするな
ハ 腹が立っても過言はいうな
(以下・・・モ・セ・スまで続きますが、長いのでここでは省略)
 ちなみに、宗藩の薩摩藩にもいろは歌があり、「日新公いろは歌」とい
い、島津家中興の祖で、島津義弘の祖父でもある島津 忠良(ただよし)(号
は日新斉・じっしんさい)が作り、薩摩武士の精神教育のもとにされたとい
います。
 いずれにしても、受託されている現在の経営者の思いが込められた展示物
といえるでしょう。

島津豊久公の顔出し看板

玄関前の顔出し看板

 この「顔出し看板」は、現在の経営者の発案で佐土原高校の協力のもと、
同校「商業デザイン科」の生徒たちとのコラボで実現されたもので、遠くか
らの来客に人気だとのこと。
 こういったことが、この“産直”の得意な分野かもしれない。宮崎市にとっ
て、歴史を全面に出せる願ってもないアピールポイントとなっている。

My feedback(所感、評価、手応え)
 なお、独断と偏見で評価をさせていただき、グラフ化しました。
 項目は①品揃え・品質②清鮮度(衛生)③販売価格④サービス・対応⑤コ
ーナー区分⑥特産品⑦立地・利便性⑧お得企画の8項目です。(あくまでも
今時点での筆者の評価です。)
 産直市場に行く人たちの一番のねらいは、新鮮で衛生的な野菜、くだもの
が安く手に入るかどうかだろうと思います。そして価格がリーズナブルかど
うか、産地にしては価格が高いとすれば「評価は4~3」、そして店員さん
の対応具合であったり、お得なものが入手できるかどうかでしょう。
 この産直は、約10年前に宮崎市管轄の地区交流センターの付帯施設として開設されました。勿論、鶴松館という歴史的な目玉があってのことです。正に「歴史の町佐土原」を具現化してのことです。その中で、近隣の市民も気軽に立ち寄れる施設になっているものと思います。ただそういった思いに水をさすような「鶴松館の開館日の縮小策(基本:土、日曜日のみ)」は、宮崎市の事情があるとはいえ、全国の「城郭ファン」の存在を考慮するなら
ば、何とか以前のような通年開放策を検討してもらいたいものです。「歴史
の町」というアピールポイントが壊死状態にあるように思います。
 下図は5点満点の総合評価:あくまでも独断で、公式なものではありません。

各項目5点満点評価

相方のコメント
1 ここが良いのは品数多く陳列されているわけではないが、厳選された野
 菜や果物が新鮮で納得できる価格であること。
 ≪夏にはここで大玉スイカを買ちょったネ。元学校の先生だった人が、農
 業を始め、生産出品したのだとか。でも去年の夏は暑かったので、あのス
 イカにお目にかかれなかったネ、今年は期待したいネ!≫
2 水あめ(米、イモ)を、販売しているのはここだけ。佃煮には必須で重
 宝しています。
 ≪そのイモあめを割りばしで大きく巻き掬い、頬張るのが一番の楽しみじ
 ゃんネ!≫
3 鹿児島県垂水市産のカンパチの切り身と秋田産の「いぶりがっこ」がこ
 こで入手できるのは有難い。
 ≪寒い所の日本酒は最高だよね。秋田の酒は本当に美味かった、また買い 
 に行こネ!≫

施設のレイアウト
陳列売り場は概略下図のとおりである。奥まったところにイートイン・コーナーがあり、購入した総菜等を飲食できる。

いろは館内の陳列コーナー

【経路図】

城の駅周辺の施設等

 今回は以上です。
 次回は東諸県郡国富町の「わちどんが村 式部の里」を訪問予定です。

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