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バスの運転手不足と片貝花火

新潟で毎年9/9・10に行われていた片貝花火が、2024年から毎年9月第2土曜日とその前日の金曜日に変更されることが決まりました。

なんでバスと花火の話なのか、興味を持った方は読み進めて頂ければ幸いです。

路線バスをはじめ、公共交通機関の運転手不足が表面化しています。
特に地方では以前から、若い方が運転手になることはあまりありません。
そこへやってきたのがいわゆるコロナ禍です。
高速バスの運休や観光バスの稼働停止も相次ぎ、運転手不足の危機は解消したかに見えました。

コロナ禍と言えば、イベントの中止も相次ぎました。
新潟で毎年9/9・10に行われていた片貝花火も中止が続き、2022年に3年ぶりに開催となりました。
このとき、1つの変化が発生します。
3年前まで花火後に長岡方面へ運転されていた臨時列車が運転されないことになりました。

話は30年前にさかのぼります。
片貝地区にはかつて国鉄の路線があり、花火会場のすぐ近くに駅がありました。
これがあれば花火の日に役立ったわけですが、国鉄改革の中で赤字線ということで廃止となりました。
そしてJRという民間の会社が誕生します。
民間ですから儲からないことをやるわけにはいきません。
花火会場から徒歩で4、50分もかかる駅から臨時列車を出して儲かるのか、結論は運転の中止でした。

こうして負荷はバス会社の越後交通に集中します。

片貝花火では駐車場へのシャトルバスと長岡方面への臨時バスを長年越後交通が担当してきました。
深夜まで花火輸送をした後でも、翌朝には路線バスを走らせなければいけません。
運転手の休息時間も義務ですから、花火輸送の後に早朝のシフトに入れるわけにはいかず、それなりの人数が必要になってきます。

ところが2022年はたまたま、9/9が金曜日、9/10が土曜日でした。
翌朝は路線バスの本数が少ない土日だったのです。
越後交通は何くわぬ顔で花火輸送をこなしましたが、それはたまたまだったのです。
花火関係者も観客も、そこそこ公共交通機関に詳しいはずの自分も、誰もそのことには気がつかなかったのです。

問題は1年先送りされました。

そして迎えた2023年、9/9は土曜日、9/10は日曜日です。
翌朝には平日の通勤通学輸送が待っています。
越後交通はギブアップします。
日曜日には駐車場へのシャトルバスを走らせることはできません。
土曜日も含めて長岡方面の臨時バスを走らせることはできません。

誰もが気がつかないまま、運転手不足の傷は進行していたのです。
翌日が日曜日の9/9でさえも、シャトルバスを走らせるのが精一杯で臨時バスを走らせる余裕は無くなっていたのです。

まさか断られるとは思っていなかった関係者は、徒歩で行ける範囲の企業に頼み込み駐車場を用意しました。
しかし今年は良くても来年の9/9・10は月火ですから、平日に操業している企業の協力を得られるかは不透明です。

即効性のある手段は1つしかありません。
花火の開催日を金土で固定すること。
これにより翌日は必ず土日になり、路線バスは比較的本数が少ない日なので運行への影響が抑えられるのです。

片貝花火は深夜まで打ち上げがあり、メインの四尺玉は22時打ち上げです。
バス輸送が集中するのはその後ですから、翌朝までの休息時間が取れないという特殊事情はあります。
それでもこの件は、遅かれ早かれ全国に波及すると考えています。
運転手不足という問題に、社会が真剣に取り組まないのであれば。

コロナ禍という人類の危機が発生しました。
ところがこのことによって別の問題の対策を考える猶予時間が与えられていたのです。
その時間をどう有効に使うのか、社会が試されていたのです。
今さら時は戻せませんから次にどうするかを考えるしかありません。

余暇を削ると人の心がすさんでいくことは、コロナ禍により人類は学習しました。
花火を無くす選択肢はありません。
そもそも花火を無くしたところで傷は進行しますから時間稼ぎにしかなりません。

平日朝がボトルネックで、大きなものは通学輸送ですから、例えば高校の所在地の配置は今のままでいいのかというような長期的な視点も必要になってきます。

片貝花火は金土で固定されました。
長岡方面へのバスは越後交通とは別の貸切バス会社に委託して継続されました。
次の策を打たなければ必ず問題は再燃します。
見えないところで傷は進行しているのです。

金土になった理由は地元の人たちが休日に運営に関わりやすくするためと報道されました。
土日ではなく金土である理由にまだ気がついていません。
気がついていなくても傷は進行しているのです。

新潟県の中の小千谷市の中の片貝地区という小さなコミュニティでの花火。
そこには日本全国の問題が凝縮されているのです。

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