退路も柱もいっぱい用意しておこう
最近は「どんな分野も満遍なく取り組むのではなく、自分が好きなことや得意なことのうちのひとつを全力で極めろ」「専門分野を作れ」みたいなことをまあまあ言われることがある
私はこの考えに否定的な意見を持っている
そりゃあひとつのことにずっと集中して取り組めて、その才能がきちんと(それだけで食べていけるくらいには)開花すればいいけど、そんな人ばかりではない
少なくとも私はすごく飽き性で、大学の講義も集中力が1時間ぐらいしか持たないし、何か得意な分野があるわけでもない
どんな分野でも私よりできる人は大量に存在する
でも勉強は文理問わずそれなりに好きだし、ピアノを弾くのも文章を書くのも絵を描くのも好きで、苦手意識もない
そんな「まあまあできる分野はいくつかあるけど、めちゃくちゃできる分野がない」みたいな人間は、極めることをひとつに絞らなくてもいいのではと感じる
今、自分が一生懸命取り組んでいることが様々あった場合、そのうちのひとつの才能が開花しないとき、まあ落ち込むけど絶望するレベルではないのではないか
「まあ、私には他の分野もあるし」と軽く捉えられるはずだ
それが、真剣に取り組んでいることがひとつだったときはどうだろう
そのひとつのことに自分が向いていないと思ったとき、人は絶望するにではないだろうか
「私はこれしかできないのに、これすらできない私って存在意義あるのかな」と
また、取り組んでいることが複数あれば自分の成長を気長に待てる
複数のうちひとつぐらいは調子良く伸びるから、他の分野でスランプにあっても「あの分野では今成長できているし」と思えるからだ
ところが、今取り組んでいることがひとつだったら…その分野でスランプを起こしたときに発狂するなどということになりかねない
さらに、ひとつのことを極めても、“その分野”のプロはそれなりにいることもあり、競争率が高くなりがちだ
しかし、複数のことに取り組めば、知識の組み合わせによって新しい発想ができたり、独自の考え方を確立できたりすることもある
きっと無意識のうちに脳が勝手に知識を結びつけているため、具体的に「この知識とあの知識が組み合わさってこの発想ができた!」などと説明できることは稀だろうが、色々取り組んだことは確かに何かの助けになっている
これは人間関係にも当てはまる
誰かひとりだけと仲良くする、ひとりだけを好きでいるというのは危険な状態だ
あ、もちろん恋愛的に好きな人は多分ひとりにしといたほうがいいが、恋したときでもその相手以外に居場所を作るのが大切である
理由はすごく簡単で、ひとりだけが好きなら、その人との関係性が悪くなったときに絶望する羽目になるからだ
人間は、趣味や仕事以上に「努力しただけ報われる」「尽くした分だけ幸せになれる」みたいな法則がない
そもそもひとりだけを重要視していれば、その相手から「重い……」と言われて終わることも多い
一気に色んな人と関わっていれば、相当やらかさない限りは誰かしら仲良くしてくれるし、誰かしら自分を大切にしてくれる
その「誰か仲良くしてくれる」「誰かが大切にしてくれる」という自信によって心に余裕が生まれ、より魅力的な人になれる
特に私みたいなメンヘラ寂しがり激重ファンタスティック人間ほど、色んな人と関わることで孤独を感じる時間を減らして、色んなところに愛情を注いでひとりあたりが受け取る愛情を少しでも軽くするといい
たしかに、ひとつのことに集中したほうが短期間で成長できるかもしれない
好きな人をひとりにしたほうが相手の理想像に早く近づけるのかもしれない
でも、それだと精神が持たない人も多いのではないだろうか
そんなときは、逃げるための退路も、自分を支える柱もいっぱい持っちゃえばいいのだ
退路がひとつ塞がっても、柱がひとつ折れても、普通に生きていけるように
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