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あたしとスマホと彼と

スマホの機種変更が怖い

スマホは大体2年から3年で故障するように作られてるらしい。それくらいで買い換えてもらわないと経済が回らないから。
という話を聞いたのは携帯を持つようになった高校生の頃。随分前だ。これは半分本当で、半分嘘だと思う。2年以上使う人もいるし、どんどん買い換える人だっている。使い方によっても使用年数はだいぶ変わるだろう。

そしてあたしはいわゆる一般的なスパンで買い換えてきた。故障してきたら買い換える。結構スマホには依存気味だけれど、スマホでゲーム等はしないし、最低限の機能で満足するタイプである。
それでも(それだから?)定期的に訪れる、「機種変ミッション」。あたしはこれが大の苦手だ。

「賢く買おう」というプレッシャー

スマホの種類はどんどん増える。会社も増える。あたしはそれに着いていけない。格安スマホ?SIMフリー?2回線持ち?ナニソレ?
携帯ショップに務める友人に機種変更について相談したら、友人は目をきらきらさせて、「どんな機能が欲しいの?」「何に重きを置いてるの?」「何を求めてるの?」と聞いてきた。
あたしは「何も求めていない」のである。生活の必需品であるスマホを、ただ今のまま必需品として使い続けたいだけなのだ。
こんな気持ちはあたしだけなのかなと思っていたけれど、最近マルチェがすごくこれに共感してくれて、独りじゃないのかと味方を得た気持ちになった。

「こうしたらお得」「今買ったら賢い」というプレッシャーが、この世の中には多すぎる。
何故自分の払える範囲でただ買い物をしてやりくりをしているのに、「損してる」「センスがない」と言われてしまうのだろうか?そこに嫌悪感を強く抱いている。
これが資本主義なんだと言われたら理解は出来る。でも理解するだけで、受け入れることは出来ない。資本主義の下でないがしろにされる「人らしさ」を大切にしたいと思っている。

「機種変ミッション」の時、あたしは分かりやすく無気力になる。安ければなんでもいいと思う。
2年前の機種変ミッションの時、あたしは彼とプチ喧嘩をした。世間話の中で機種変について話した時、彼は「毎月のことを考えてこうしたら?」「こんな機種にしてもいいんじゃない?」と提案してくれた。でもあたしは無気力である。んー、なんでもいいし、と返していたら「ちゃんと考えて買おうよ」と言われ、あたしはむくれてしまったのだ。

ちなみにあたしと彼は、基本的にお金の価値観は近い。高級と感じるもののお金のラインが同じだ。同級生だから当然とも言えるかもしれないが。普段はお金の話で喧嘩なんてしない。
でも彼はあたしに比べて、お金を「考えて」使うタイプである。ポイントにも無頓着なあたしを見て嫌味を言われて喧嘩したこともある。これは彼のバックボーンから溢れた言葉だった。これも3年ほど前の話で、既にお互い歩み寄っているけれど、何となくお互い「歩み寄れるけど違う」と感じている微妙な価値観の違いのひとつだ。

今回も訪れた「機種変ミッション」。
さてどうするか。
あたしはこだわりはないといいつつ、iPhoneにはしないと決めていた。理由は単純で、ずっとAndroidを使っていてデータ移行が完全には出来ないと知っているから。データなんていつかは無くなるのかもしれないけど、残せるなら残す努力をしたい。あと、今まで求めていなかった「カメラ」の機能を少し高いものにしたくなった。あたしは写真を撮る習慣がなく、一緒にいる人が撮ってくれることに甘んじていた。最近、メンタルの保ち方として毎日1枚写真を撮るという習慣を作るといいという話を聞いたことと、写真を綺麗にスマホで撮れたら散歩が楽しくなるかもしれないという気持ちが生まれた。街中に咲くお花たちが好きで、花図鑑も持っているのに、使っていたスマホはすこぶる画質が悪かったし、なによりシャッターを押してから1秒くらい経ってカシャッとなるので、瞬間をなかなか撮れなかった。
そして、生活は大事である。毎月の料金が下げられるのならそれに越したことはない。周りの友人と話していても、スマホで遊ばないあたしにしては、料金が高いことは理解していた。ということは、契約内容も見直さないといけない。

はー。嫌だ。
そんなことを考えながら、壊れかけのスマホをいじる日々が1ヶ月くらい過ぎた。
ある日、「残業終わったよ」と彼にLINEすると、彼もちょうど終わったとのこと。あたしたちは夜ごはんを食べることにした。時間は21時過ぎていたので、チェーンの居酒屋に入った。仕事の愚痴や、最近見たお笑いの話、次会う予定の話などなどしながら、話は機種変ミッションに移った。あたしはお酒の力もあるのか、素直に話せる気がして「こういうのさ、すごく頭痛くなるの。お得に使うとか、損しないようにとか、苦手なの。あたしただ自分の使える範囲で買い物したいだけなの。もちろん、生活を考えるとちゃんと考えて買うということから逃げられないのも分かる。あなたはそういうのがあたしより得意だから補ってくれてすごく感謝してるけど、でも頭痛くなる気持ちを少しわかってくれたらもっと嬉しい」と伝えた。すると彼は「え?めちゃくちゃ気持ちわかるよ、一緒だよ」と言った。
あれ?ああ、でもそうだよな、お得「だけ」求める人だったらこんなに一緒にいないよな。根本の価値観は近いのよね、と心の中でつぶやく。そして彼はこう続けた。
「お得だけ考えたくないのは俺も同じ。てかお互い無駄なもの好きじゃん(あたし達はガチャガチャ巡りが趣味である)。でも双葉を見てると、自分のために便利を求めてもいいのにと思う。双葉自身のために、お得や便利を求めることは悪いことじゃないよ。」「自分のためにアップデートする気持ちがあってもいいと思うよ」
なるほど……。あたしはぐびっとビールを飲む。
まさにその通りだった。

そして、契約内容を見直すことと、今回は少しカメラの性能がいいものを買って、散歩中の写真を沢山撮って楽しもうという結論に至った。

機種変ミッションの結果

当日はドキドキしつつも、初めて家電量販店で(ポイントをつけるため)スマホを買った。他社製品を無理に勧められることもなく、決めることが出来た。いつもより少し高めのもの。奮発した。でも、カメラを楽しめることが嬉しかった。
そして、ahamoにすることにした!しかも、家で手続きすることにした!!!1人で出来ますかね……とへっぴり腰のあたしに、店員さんは「大丈夫ですよ」と笑ってくれた。

そして思っていたよりもあっけらかんと、機種変ミッションは完了し、そしてあっけらかんと、ahamoへの切り替えも家で出来た(ページを進めるごとに隣で「それで大丈夫」という役を彼にやって貰った)。

新しいスマホを手に入れて、あたしはお花の写真をよく撮るようになった。そんなあたしを彼はとても嬉しそうに見てくれている、気がする。

清澄庭園の紫陽花

一回り大きいスマホになったので、手が小さいあたしは写真を撮ってる時落としそうで怖いと話したら、彼はスマホショルダーを買ってくれた。もはや過保護かな? 

そんなこともあたしの1歩

みんなは出来ることがあたしには出来ないことがある。というかそんなことばっかりだ。
機種変ミッションだってまさにそう。
今回あたしは苦手なことに向き合った。頑張った。そして今のスマホにとても満足している。出来ないと決めつけていることに、自分のできる範囲で、自分の気持ちは大切にしながらやってみるのっていいなと思えた。

機種変ミッションの度に彼と喧嘩するのかなと思っていたけれど、そんなことも無さそうだ。これもあたしの1歩である。



「悪いのは僕の方だった ごめん」
よく考えて出した答え伝えるために
携帯の電源を入れる代わりに
僕は履き古した靴の紐を結ぶ

大好きな人だから
なんでも伝えていいわけじゃない
大好きな人をつまらないことで
煩わせたり悩ませたりしてまで 
楽になりたくない

Birds Stop Twittering Tonight(槇原敬之)

今は携帯って言葉が死語になりつつあるけれど、、携帯が歌詞に出てくる歌は沢山あるし(RADWIMPSの「携帯電話」とかも好き)、あたしはこの歌に大学生の頃からずっと支えられてきた。

今回スマホのことを考えながらも、スマホはツールでしかないことを忘れたくないと思ったし、いつだって人は自分本位になるから、立ち止まれる自分でいたい。


そんな、あたしとスマホと、彼の話でした。

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