マーケティングの数字②ユーザーを増やすために見る数字

前回、売上アップの為には結局「購入者」をふやすべきだ、という話をしました。では、購入者を増やすためにどんな数字を把握すればよいか、という事を書いていこうと思います。

僕が一番良く使うのは「5セグ」です。これは、全人口もしくは潜在顧客を含めた全人口を下記のように分けます。

①そもそもブランドやサービスを知らない人(未認知)
②知っているが、買ったことがない人(認知未購入)
③買ったことがあるが、今は買っていない人(経験あり離反)
④買ったことがあり、頻度は低いが買っている人(ライトユーザー)
⑤買ったことがあり、高頻度で買っている人(ヘビーユーザー)


もちろんこれは一例なので、商品やサービスのタイプによって変えて構いません。サブスクであれば⑤が定期ユーザーになるでしょうし、ゲームアプリ等なら③が「DLはしたが、プレイしていない人」になるでしょう。いずれの場合も、「なるべく広くターゲットを置いたうえで」「顧客の質の違いを明確にしたセグメントで分ける」ことが大事です。

僕は同心円の図で作ることが多いですが、人数ベースで作ると規模感がハッキリ分かります。数字にすると途端に「チャンスがあるのはどこか」「注力すべきはどこか」が議論しやすくなります。往々の場合、⑤はわずかな人数で、①②が多くなるものです。例えばネットスーパーの場合、調査ベースでは①②で全人口の70%を占めているはずです。(実際にはネットスーパーがカバーしていない人口がいるので、もう少し割合は少なくなると思います)。企業側というか当事者側は、どうしても「自分のカテゴリ範囲」で物事を捉えるクセがついてしまいます。つまり、④とか⑤のお客様の数だけ見てしまうという事ですね。そんなときにこの5セグは非常に有効です。

もう一つこの分け方をすると整理しやすいことがあります。マーケティング活動は様々なものがありますが、①⇒②(知らない人へ知ってもらう)活動なのか、②⇒④(未購入の人へ購入のトライアルしてもらう)活動なのか、④⇒⑤(ライトユーザーからヘビーユーザーになってもらう)活動なのかで、それぞれやるべきことや伝えるべきことがかなり異なります。別の記事でも書きましたが、個人的な経験として④⑤のお客様の声を聞いて商品を改定(この場合は個包装化でした)したところ、①②の人には全く刺さらなかったことがあります。ポイントプログラムなどのCRM施策も同様で、ユーザーをヘビーユーザーにすることがあっても、CRM施策があるから新規購入をする場合は少ないはずです。ターゲットを5セグに分けることで、それぞれの活動目的を整理するだけでなく、どんな訴求がよかったのか?の効果検証も上手く設計すればできることになります。

これは僕自身、ある企業で経験したことです。その企業は事業を始めたばかりで「あれもやらないと」「これも準備しないと」という事で、複数の指標を同時に追っていました。ある時はリピート率を追い、ある時はメールのレス率を追い、ある時はサイトのPV数や滞在時間を追っていました。もちろんそれ自体は悪いことではありませんが、リソースは限られているのでマーケティング活動としてどこに一番注力をすべきか、の会話をするときに現時点での5セグの分かっている数字を呈示しました。その結果、今注力すべきは新規ユーザーの獲得が獲得、ということで社内でも合意が得られ、それに向かってプロジェクトが進むことになります。ちなみにこの時のクライアントの反応は「やっぱりそうだよね」というものでした。みんなが「なんとくそうだなあ」と思っているコトを数字化できると、その後の行動は明確になるものです。また別の企業では、実は③(かつて買っていたが今は買っていないユーザー)の数がすごく多い、ということを発見したこともあります。この時も分母を日本全世帯にしたことでチャンスがあることを明示できました。

ちなみに、数字の話とは若干ずれますが、「顧客理解」の際によく陥ってしまうのが④⑤(今のお客様)だけに着目して、そこだけを見ることです。今のお客様からユーザーを増やすとき、本当に理解すべきは、①②(まだ買っていない)お客様との理解や、①②のお客様と④⑤のお客様にどういう差があるか、です。また、費用対効果で考えると確かに④⑤向けの施策は費用対効果が高いことが多いですが、それではスケールしません。④⑤のお客様は基本的に離脱していくものなので、①②をユーザー化する施策を行わないとユーザー数はシュリンクしていきます。(ただしこれはユーザー数ベースの話で、利益ベースで見ると新規ユーザーの獲得コストを使わなくなるため単年では利益は上がります。とはいえこれを続けるとベースのユーザー数が減るため、利益自体もいずれ減り始めます)基本的には新規ユーザーの獲得はマーケティング活用には必須の要素かなと思っています。

なお、一定期間でのユーザー数を全人口で割ったものを「浸透率」といい、5セグを考える際のひとつの指標となります。僕自身はあまり使ったことがないですが、おそらく一定数の企業では指標にしているはずなのでこの記事でも記載させて頂きました。

参考文献:
西口一希著「たった一人の分析から事業は成長する 顧客起点マーケティング」翔永社






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