小児整形外科医の、あたまのかたちの治療に対する自分なりの考え方

あたまのかたちについての質問に、この記事では以下のことが解説されています。

- 治療が必要かどうか- ヘルメットが必要かどうか- 治療の期限- あたまのかたちと病気との関係性「あたまのかたちが悪いと病気になる」という考えはあるものの、実際にはあたまのかたちは見た目だけの問題であり、他の要因も含まれて発症する可能性があるため、あたまのかたちの治療だけで必ずしも予防できるわけではない。また、変形が起こる理由を知り、早期に予防することが大切であり、首が据わってから治療をはじめると期待通りの結果が出ると考えられる。治療にはヘルメットを使うことがあるが、ただし程度によって自然に治ることもあるため、適宜対応が必要である。

AI要約


どうもみなさまこんにちは。
つくば公園前ファミリークリニックのHospital directorをしております、中川です。

当院では2022年5月の開院以来『あたまのかたち外来』というものを行っています。あかちゃんのあたまの形だけに特化した保険外診療メニューです。
特殊なヘルメットをかぶることで、あかちゃんの頭が正常なかたちに戻るのを助けることができます。

こちらの外来には毎週5-6人程度の受診があり、常に新患さんが訪れているといった状態です。(全ての人がヘルメット治療へと進むわけではありません)

診療内容としては、主に向き癖が原因と考えられる赤ちゃんのあたまの形のゆがみに対しての相談と治療です。

中には向き癖と併存して、斜頚股関節脱臼の子が混じっていたり、頭蓋縫合早期癒合症という手術の必要な状態の子もいます。そういった子を早期に発見し治療するのが小児整形外科医の役割でもあるため、あたまのかたちの治療を積極的に受け入れています

今回の記事では、外来中によく聞かれる質問に対して実際に行っている回答を紹介するかたちで、あたまのかたちについての自分なりの見解をみなさんに知っていただきたいと思います。

質問①:あたまのかたちは治さないといけないのか

まずここです。そもそも治療(ここではヘルメットの治療)が必要なのか。治療を提供していてこれはどうかという意見もいただきますが、自分は必ずしも必要ないと思っています。

ほとんどが見た目だけの問題であり、これまで来院されている軽症のあかちゃんのご両親を見る限り心配のしすぎです。心配になるほど他人はそんなところを見ていません。

ネット上では、あたまのかたちが引き起こす様々な身体異常について書かれていますが、それらの異常とあたまのかたちについては因果関係がハッキリしていないことばかりです。つまり、あたまのかたちを治したとしても、その異常が防げるかは不透明なのです。

大切なのは予防です。変形が起こる理由を知り、早期に治る環境を整えることです。

質問②:あたまのかたちはヘルメットをしなくても治るのか

治ります。
ただし、程度によります。

こどもの骨には成長軟骨が残っています。その状態であれば、自家矯正という機能が働きます。これは本来の骨の形に戻る作用のコトです。軟骨周囲の筋の動きが正常であれば、その筋の張力によって骨の形や角度が正常な状態に戻されるコトがあります。あたまでも同じような力が働き骨が動きます。(頭蓋内の外向きの圧力という話もあります)

その際、逆向きの力がかかると自家矯正が効かなくなります。
あたまの場合は、へこんでいる部分を下にして寝ない。これが大切です。

よって、早くうつ伏せに慣れること。首が据わって縦抱きや寄りかかって座る姿勢が取れることが重要です。こうすることで、だいたい3ヵ月以降で自然に改善されていくことが知られています。

そのため昔は「変形は放置していて大丈夫。そのうち良くなる」といった指導だけされていたそうです。しかしこれは、あかちゃんをおんぶして育児していた時代の話です。

いまは時代が違います。ほとんどの育児があかちゃんが仰向けで寝た状態で行われています。これではあたまが常に地面に着いているわけですから良くなることはありません。

正しい知識をつけるだけで、こうも違ってきます。

質問③:あたまのかたちの治療はいつまでに行うのか

あかちゃんのあたまには「大泉門」という穴が開いています。この穴が閉じるのが1歳半〜2歳ごろと言われており、この穴が閉じてしまうと簡単にはあたまのかたちが変わらないと予想されます。

そこから逆算して治療に必要な期間を半年とすると、1歳になる前に始めなければ、期待通りの結果にはならないと考えられます。欲を言えば、7ヵ月以降で成長スピードが鈍化してしまうことが多いため、それ以前で始められるのがベストです。

当院の基準では、首が据わってからが開始のタイミングで、希望があれば1歳前まではヘルメット治療を受け付けています。治療をしないで後悔するよりも、治療を行うことで得られる気持ちを大切にしたいと思っています。

質問④:あたまのかたちが悪いと病気になるのか

あまり関係ないと思っています。

様々な疾患との関連性が指摘されています。
よく聞かれるものとして、発達障害咬合障害頭痛や肩こりなどです。

ただし、これらはあたまのかたち以外にも様々な要因を含んで発症するものと考えられ、あたまのかたちのみを治療してその予防ができるかはわかっていません。つまり他の要素が大きすぎるので、気にするならそっちということ。

整形外科医の目線から考えると、頭痛や肩こりについてはあたまのかたちの変形を誘発している向き癖が大人になるまで改善されないとなると、その運動の仕方が最大の原因であると考えます。

あたまのかたちが悪くても、正しく体を動かすことが、その後の成長の中できちんと身についてしまえば問題無いのではと思っています。


以上を踏まえた上で、、、ご家族に、、、

「治療した方が良いですか?」

と聞かれれば、

『治療しましょう』と答えます。


「治療しなくても良いですか?」

と聞かれれば、

『しなくても大丈夫』と答えます。


見た目を治すのにお金をかけられるかどうかだと思います。
ただし、その費用対効果は絶大です。それくらい良くなります。

治療を受けられずに後悔する人がいなくなるように。
治療を受けられれば後悔しない結果を出します。

あらかじめよく考えて受診しましょう。


小児整形外科専門ドクター
中川将吾

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