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精子提供という選択肢、家族にとって大切なことは?イベントレポート

不妊治療で第三者の精子や卵子を使って出産した場合の親子の法的関係を定める民法特例法案が、2020年11月16日参議院に提出されました。この法案は、現在開催中の臨時国会で可決される見通しです。
ファミワンでは、法案が臨時国会に提出されるに先立って「精子提供の選択とその後の家族」をテーマに妊活ライブを緊急開催しました。(2020年10月27日)

スピーカーは、精子提供を選択されたカップルや生まれたお子さんの支援に長年携わる城西国際大学の清水清美先生と、臨床心理士・公認心理師の戸田さやかさん。この妊活ライブでは、精子提供の現状や、当事者家族の思い、子どもに事実を伝えること(テリング)についてなどお話を聞きました。

◆精子提供の現状

精子提供を受ける方法は、医療機関・精子バンク・個人間提供の3つ。それぞれの方法にも特徴があるのだとか。

医療機関で精子提供を受けられる施設は全国に12施設(日本産科婦人科学会に登録)。しかし、精子提供者の不足から、実際に治療を受けられる施設はもっと少ないのだそうです。
医療機関では、

・精子提供を受けられるのは、精子提供に同意した婚姻している夫婦に限る
・精子提供者は匿名で、一人の精子提供者から生まれる子どもは10名以内にする
・治療開始前から夫婦にカウンセリングの機会を可能な限り提供することが推奨される
・生まれた子どもには、幼少期からAIDで生まれた事実を伝えること(テリング)が推奨される

など日本産科婦人科学会が定めた会告に基づいて、精子提供による不妊治療を行っているのだそうです。

精子バンクを利用する場合・個人間精子提供を受ける場合の特徴についても聞きました。

精子バンク

・婚姻していないカップルや同性婚、選択的シングルマザーも利用できる
・精子提供者を匿名か、非匿名か選択することができる
・国内の精子バンクがなく、精子提供者は多国籍

個人間

・婚姻していないカップルや同性婚、選択的シングルマザーも利用できる
・提供者が開示している個人情報や精液検査・感染症検査の結果が真実なのか、わからない

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◆精子提供を受けるかどうか決めるとき

Q.精子提供を受けるかどうか、夫婦でどのように話し合えばよいですか?
清水先生

精子がないという事実は、男性にとっては男性性を否定されるような、大変にショッキングな体験です。女性側も夫が傷付いているのがわかるので、夫婦で話し合うのがとても難しくなります。何気ない会話はできても、これから先の人生や治療を受けるかどうかの話題は夫婦の中でタブーになってしまうとか、話し合おうと思ってもどちらかが不機嫌になってしまい話し合いにならない、ということもあります。夫婦だけで話すのはとても大変なことだと思いますが、ここを話し合わないと次のステップに進むことができません。
そこで利用して頂きたいのが、わたしたち「すまいる親の会」です。

※すまいる親の会:精子提供で家族になることを検討している方、親になった方および家族になった方の情報交換を行っているグループ

すまいる親の会でお伝えしているのは、
・まずは男性不妊であることを受け止めていくということ。
・今すぐにはなかなか考えられないかもしれませんが、一つの選択肢として精子提供という方法もあるということ。
・まずは夫婦で情報を共有していただくこと。

です。

戸田さん

私も無精子症とわかったカップルのカウンセリングで感じるのは、二人だけで話し合うのがとても難しいということです。どう話せばよいかわからない時点で、ぜひ「すまいる親の会」や不妊治療を専門にしている心理士を頼ってほしいなと思っています。そういった専門家を利用することで、お二人で話し合う機会を持つことができますから。

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◆子どもに事実を伝えること(テリング)

Q.生まれてきた子どもに事実を伝えると、子どもが傷付くのではありませんか?
子どもに事実を伝えるのは、家族の事実を子どもと一緒に共有することなのだと清水先生は言います。

清水先生

お子さんが幼いころから精子提供で生まれたこと、父親に精子がなかったことを伝えられると、ネガティブに捉えることはなく事実として理解します。これまで「すまいる親の会」で関わってきたご家族で、幼いころから「これが私たちの家族のかたちなんだよ。提供者さんがいてあなたが生まれたんだよ」と伝えられたお子さんが、精子提供で生まれた事実に傷付くということはありませんでした。
ただし、大きくなってから事実を伝えられた方が、「今までどうしてそんなに大切なことを伝えてくれなかったんだ」「医療者はどうしてこんな治療をしたんだ」と傷付いたり、納得できない思いを抱えることはあります。

Q.ドナーがどんな人かわからないのに、子どもに事実を伝えるのは難しいのではありませんか?
清水先生

子どもの出自を知る権利というのは、
①精子提供で生まれた事実を子どもが知れる
②提供者の情報を子どもが知れる

の2つが両輪となって実現します。しかし日本の医療機関で行われる精子提供は、提供者が匿名です。そのため、提供者の情報をお子さんに伝えられません。
「中途半端に伝えても子どもは納得できないのではないか」「ドナーがどんな人か聞かれても答えられないと、子どもが傷付くのではないか」と心配される当事者の方もいらっしゃいます。
しかし、事実を伝えないことが子どものアイデンティティの危機になると明らかになっています。「わからないから言わない」ではなく、親子の中で嘘なく事実を伝えること、わからない情報もあることも含めて伝えること、子どもがどんな思いでドナーの情報を知りたいと考えているか知ろうとすること・理解することが大切です。


◆他にも、こんなギモンにお答えいただきました!

Q.生まれた子どもがドナーに会ってみたいと希望すれば、会うことはできるのですか?
Q.子どもが積極的にドナーに会いたがることは多いのですか?
Q.精子提供で生まれたことを、子ども自身はどのように感じるのでしょうか?
Q.両親や周りの人にも、精子提供で授かったことを話した方が良いのでしょうか?
Q.メディアやSNSでの精子提供の取り上げられ方について、専門家としてどのように考えますか?
Q.精子提供を検討するときや、子どもが生まれた後、相談できるところはありますか?

普段はなかなか聞けない、精子提供を受けるご家族やお子さんのお話を詳しく教えていただいた妊活ライブでした!

この記事でご紹介できなかった内容は、妊活ライブ会員ページから動画でご覧いただけます。視聴には、妊活ライブ会員登録が必要です。興味を持たれた方は、ぜひ動画をご覧になってみてくださいね。



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